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叶えたい起業のこと

「この住まいでよかったのだろうか。」
無事に完成した建物を前にして心の中で抱いた思いでした。

アトリエ系設計事務所で働いていたとき、
ご紹介で依頼をいただいた多世帯同居のための住まい。

その方の住まいへの要望のひとつが
「できるだけ多くの収納を作ってほしい」でした。
私自身も自宅を設計する時に叶えた要望の一つですし、
よくあるご要望です。

ですが、
この方のおうちに打ち合わせで伺ったとき驚いたことは、
ご依頼主の方の住まいが、ごみ屋敷に近い状態だったことでした。

平凡な私からみたら、
それはそれは充分な資産家で、ステイタスのあるご家族。
次から次へとデパートでお買い物される品々は、
とても綺麗とは言えない部屋の中に、積まれ埋もれていました。

残念ながら私が参加する機会がないまま、
打ち合わせは着々と進み、
お客さまの強いご要望と向き合いながら、
設計プランが決まっていきました。
この住まいの設計で、私が尽力できたことは、
いかに収納量が多く取れ、使いやすい造作家具を設計できたか、
といったところでした。


完成した住まいは、気に入って頂けたのだろうか。
この提案で本当に良かったのだろうか。


設計をすることの意味を、この出来事から考えるようになるような、
わたしにとって印象的な出来事でした。
わたし中では、これが正解ではなかったという思いが強い。
では、設計者として何ができたのか。
湧いた疑問は、忙しい毎日に搔き消されていました。


最近になり、
私がこれからの人生を考えたとき、
自分のできることで誰かの役に立つことができるとしたら、
ここなのかもしれない。
(「ここ」が、まだボヤっと言葉が漠然としているのですが。)

お客さまが求めるものをみつけ、住まいというカタチにする。
住まいは人生を作っていく土台。
それは、お客様の中にすでにあると私は信じている。
お客様の中にある答えを見つけるために、
一緒に問い続けることが私には出来る。

まだまだ起業準備中。
私が起業したいと考える中で、不安に思う一端が、カタチにすることでもあったりする。
果たして、私はお客様の本当に求めるものをカタチにできるだろうか。
わたしにそれだけの才能があるだろうかと。
それでも、不安の先に見える景色を見てみたい。


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