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石ころをひろった

去年の10月、友人ふたりと青森へ。
思い立った1週間後には新幹線に乗っていた。同じ目的を持っている者が集まると、こんなにもフットワークが軽くなるものなのか。

目的は、石ころ。
ただの、石ころ。

青森県立美術館の奈良美智には目も暮れず、新青森駅からレンタカーで『竜飛岬』の宿まで一直線に向かった。

宿で一息ついてから、車で日本海側を海岸沿いに下る。
Google マップが示した最短コースを、懐メロを大音量で流しながら進んでいった。まさかその最短ルートが、とんでもないワインディングロード(くねくねがすぎる道)だったとは、この時は知る余地もなかった。

悠々自適に進んでいった先に、急勾配(きゅうこうばい)、急カーブ、断崖絶壁が私たちを待ち受けていた。

ブレーキを踏む足とハンドルを握る手に力が入る。ほぼ Uターンに近いカーブをいくつもクリアするたびに晴天の大海原が姿を現し、断崖絶壁を横目に大はしゃぎ。この旅で、私の運転スキルは何百倍にもあがったのだった。

竜飛と小泊村を結ぶ、ワインディングロードをひたすら蛇行すること20km の地点に「青岩海岸」はあった。

降り立った瞬間に石ころの砂浜 …
「石浜」が広がっていた。

進めど進めど石ころ。ここは宝島か。

石ころに目がない女3人は一歩進んでは足元を見渡し、一歩進んではしゃがみ込み、なかなか先に進めない。挙げ句の果てには3人ばらばらに思い思いの石ころを探し求めていた。

終始無言。
異様な光景である。

この海岸では錦石や瑪瑙等、太平洋側では見られない種類の石ころがゴロゴロと落ちていた。どれも味のある石ころだったのでできれば拾えるだけ持って帰りたかったが、リュックの要領には限界があったので断念。

お宝浜
でかすぎて泣く泣く置いて帰った最高石

宿に帰るや否や、おいしいマグロと酒を呑み、風呂に入り石ころを愛でた。

拾ってきた石ころを並べ、分類し、よりすぐりの石ころについてプレゼンし、石ころと塩辛をつまみに日本酒を飲んだ。なんてニッチな趣味。二十代女子3人が青森まで来てやることだとは誰も思わないだろう。

とにかくひたすら運転した後の酒はうまい。最高。

石と日本酒

翌日は、ひとりがスマホを青岩海岸に落としてしまい朝一で探しに行ったりなどいろいろあったが、新幹線の時間もあったので、青森県内で市のシンボールマークにりんごを勝ち取った弘前市を経由し、3時間でアップルパイを5個平らげ帰路に着いた。
ちなみに友人のスマホケースは石柄で見つけるのが非常に困難と思われたが、奇跡的に5分で見つかった。

ただ石を拾いに行くことがこんなにも楽しいなんて、と今振り返ってもしみじみと感じる。

石ころをひろう旅、今後も恒例化したい。

おしまい。


こちらの記事は、2021年に東京・末広町のPARK GALLERY様で行った個展「石ころをひろった」に際し、PARK GALLERY様のNOTEにて連載させていただいたエッセイです。(2023.5 少し手直し)
【PARK GALLERY】
https://park-tokyo.com/
https://note.com/park_diary

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