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重陽の節句ーー王維の詩(2021年9月9日)

今日は九月九日、重陽の節句ですね。

昨年書いたブログ、王維の詩を今年もご紹介します。

中国語の拼音を大きくして、少し見やすい形にしました。

長寿と健康を祈りつつ、ご覧ください。

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今日は九月九日、重陽(ちょうよう)の節句と言われる日です。

古来、奇数は「陽」の数としておめでたいものと考えられ、その最高の数

「九」が二つ重なることは本当におめでたい日だったのですね。

現在の日本ではほとんど見られない風習なので、あまり馴染みがないのが残念ですが、詳しくはこちらをご参照ください。


中国では親族が揃って、小高い山に登り、「茱萸(ぐみ)」を頭に挿して厄払いをしたり、杯に菊の花を浮かべた「菊酒」を飲んだりしたとか。

もちろん、旧暦の九月九日を指しますので、10月半ば頃の季節感を想像してくださいね。今年(2021年)は10月14日に当たるようです。

今日はその「重陽の節句」にちなんだ詩をご紹介します。

唐代の詩人王維が、科挙の受験の為に一人故郷を離れて、都長安に遊学していた17歳の頃に書いた詩です。

 九月九日憶山東兄弟 Jiǔyuè jiǔ rì yì Shāndōng xiōngdì

        王維  Wáng Wéi

独在異郷為異客   Dú zài yìxiāng wéi yì kè 

毎逢佳節倍思親   Měiféng jiājié bèi sīqīn

遙知兄弟登高処   Yáo zhī xiōngdì dēnggāo chǔ

遍挿茱萸少一人   Biàn chā zhūyú shǎo yī rén

【書き下し文】  

  九月九日、山東の兄弟(けいてい)を憶(おも)う

独り異郷に在って異客(いかく)と為り

佳節に逢う毎に倍(ます)ます親(しん)を思う

遙かに知る兄弟高きに登る処

遍(あまね)く茱萸(しゅゆ)を挿して一人(いちにん)を少(か)かんことを

*「山東」は現在の河北・山東・河南一帯の地方を指す。

・詩の形式・・・七言絶句

・押韻・・・親・人 (七言詩だが、一句末は押韻せず)

【桂花私訳】

    重陽の節句に思う兄弟のこと

たったひとり見知らぬ土地で、よそ者として暮らす

節句の度に思い出す 家族のこと

遙か遠くからでもわかるよ 

お前たちが丘に登ってみんな頭に茱萸を挿し 

兄さん(私)だけがいないねと話しているのが


王維(699?~761?)山西省太原の人。

若くして卓越した才能を発揮し、都長安に出て、官吏登用試験(科挙)に挑みます。

一説によると、21歳の若さで科挙進士科に合格したとのこと。その後も順調に出世を果たしたエリート官僚でした。

この詩が書かれた17歳の頃は、家族と離れて一人、長安で受験勉強に励んでいたようです。

晩秋に向かう季節、孤独な異郷に身を置き、家族が揃うはずの節句の行事に自分だけが参加できない寂しさが何となく共感できるような気がしますね。

また、同じ年(717年)は、第八回遣唐使が入唐した年でもあり、メンバーには阿倍仲麻呂や吉備真備が含まれていました。

王維は、阿倍仲麻呂との交流もあり、753年に仲麻呂が帰国する際にはその送別の宴で詩を詠んでいます。

目に見えない糸がどこかで繋がっていたのでしょうか?

【参考書籍】

・『中国古典選26 唐詩選(二)』  高木正一著 朝日新聞社

・『中国の詩人⑤ 審美詩人王維』 伊藤正文著 集英社

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