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【読書メモ】消滅世界

「消滅世界」村田沙耶香(河出文庫)

この本を読了して考えたこと。
まず「恋愛の延長線上に結婚はないのか」ということ。
恋愛と結婚は別、と話している人を今まで何度も見てきたが、改めてこの本を読んで考えさせられた。

結婚に求めることとして
①子供が欲しい
②経済的に助け合いたい
③仕事に集中したいので家事をやってほしい
この三つがストーリー上に書かれていた。
自分にとっての結婚とは“社会が理想として掲げているコミュニティに所属する”という世間へのアピールと思っていた。
ある種のステイタスだ。前回アップした「コンビニ人間」の話ではないが、世間が求める“普通”に応えるためのコミュニティ。
男女が夫婦となり、子供を産み育てる。
この営みを実行するために結婚をするのか?
そこまでして人間は社会から認められたいのか?
こういう書きっぷりからも分かるように、私自身は“結婚したい”という願望を持ったことは一度もないし、“結婚しなければ”という強迫観念に囚われたことも一度もない。
結婚なんてただの紙切れ一枚の契約事に過ぎないと思っているからだ。
結婚することによって「男=夫、女=妻」という役割が与えられる。
自分にとってこの役割は非常に負担に感じるところだ。
ただふたりの人間が愛情を分かち合い、尊敬の念を抱き合い、生活を共にしていく。
それで良いのでは?という考えが自分の「結婚」に対する意味付けだ。

(読後感から大幅に話がそれてしまった)気になったフレーズを幾つか。
①「恋愛なんて下半身の娯楽だって、聞いたことがあるよ。確かにそうだよな。やっぱり人生で一番大切なのは、家族だよ」
②恋と性欲は、たしかに、家の外でする排泄物のようなものだ。
③システムの中に自分たちが“きちんと”組み込まれていると思うとほっとする。
④自分にはとにかく「家族」という絶対的な味方が存在しているのだと、必死に自分に言い聞かせている

「恋愛」と「家族」を別物として捉えている。
結婚は恋愛の延長線上にはない。
恋愛は一種の娯楽。一番大切、根底にあるのは家族。
恋愛は消耗、消費していく…という考え方か。
恋愛=セックス、お互いがオーガニズムに達したときに放出。
ウン…確かに排泄行為だ。
家族、一番信頼できる人と暮らす。
家族というシステムの中に収まることによる安心感。
結婚して家族というコミュニティ属するという安心感。
恋愛では決して得られない安堵感…か。
家族は絶対的な決して自分を裏切らない味方。
なるほど…確かに恋愛の先には結婚は…ない、と思った。
放出する行為、恋愛では確固たる安心感が得られない。恋愛で得ることができるのは一瞬のオーガニズム、その後の虚無感ということか。
「子宮がある身体でよかった」とつぶやく主人公。
子宮がある、子供を産む。
家族というシステムの中で生きていくことができる。
恋を失っても、私には家族がいる、子供だって産む。
「私は子宮で世界と繋がっているのだ。」子宮こそ自分と世界をつなぐ唯一のモノ。
失恋しても子宮がある限り、私は世界と繋がっている、という安堵感。
「楽園」で男も子宮を持つことができるようになった。
人工授精で男性でも子供を産めるようになる。
子供を産む、という営みが女性だけの特権ではなくなった。
男性独りでも子供を産むことができる。
「男性でも妊娠するようになったら、家族制度はなくなると思いますか…?」と不安に襲われる主人公。
一人で一生暮らす、家族を構成することなく孤独ではないか…男女均一に人類のために子宮になった、命が繋がっているという強制的な正しさに抗えず従い続ける。
男女がセックスをして子供を作り家族を構成する事が異常、レガシーと認識されて、男性でも子宮を備えて人工授精で子供を産んで…が正常とされる楽園の世界。
恋愛、家族という定義について深く考えさせられる一冊だった。

2023/06/30 12:08

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