NO30.「あるくみるさがす」奄美大島は“美食の島”だった (2024年3月)
古希を祝う年齢になり、足腰など筋力の衰えを感じ始め、体重も減ったせいか冬の寒さがより身にしみ、体力が少しずつ落ちてきたことを感じるようになった。
もう買いたいと思う物もあまりなく、きれいな女性を見てドキドキすることも機会も少なくなった。
いろいろな欲望が少しずつ遠ざかりつつある今、決して衰えないものがひとつある。
それは「食欲」
食べる量はさすがにかなり減った。外食で食べきれず残してしまうことも増えているが、不思議とお腹の好き具合だけは昔とあまり変わらない気がする。
おそらく同感の人も多いのではと思うが、年をとってもそこそこ健康であれば衰えない欲望が食欲なのだと思う。
これは、シニアの旅行では食べることが若い時以上に大きな楽しみになることを意味し、旅行マーケティング上大事なポイントだ。
先週、クラブツーリズムの奄美大島2泊3日のツアーに参加した。いつか行きたいと思っていた島への念願の旅だった。
2回の夕食が旅行に含まれておらず自由になっているのは、販売価格を少しでも下げて見せたいからと読んだが勘違いだったようだ。
2泊した名瀬市中心部には、「屋仁川(やにがわ)通り」と呼ばれる繁華街があり、それを中心に飲食やナイトライフ、ショッピングを楽しめる200店が集中している。
奄美の郷土料理、海の幸、名物の黒糖焼酎などを楽しめる沢山の飲食店があり、どこに入ったらよいか迷ってしまう。観光マップのレストランマークを数えると100店はありそうで、繁華街としては南九州では鹿児島に次ぐ規模というので驚きだ。
今回は、初日は地元郷土料理の居酒屋「誇羅司屋(ほこらしや)」、2日目はフランス料理の「プッセ」というお店で夕食をとったが、どちらも料理の質は期待以上に高く味も充分満足できるものであった。価格もリーズナブルだ。
ツアーに夕食が付いていないのは、沢山の選択から参加者が自分の好みで自由に選んで楽しんでもらうという主旨のようだった。
私は、著名経営コンサルタントの大前研一さんが近年の著作で、今後観光地としてより多くの訪問者を獲得するにはレストランの質の向上やシェフの育成や確保が非常に重要で、その模範例としてスペイン・バスク地方のサンセバスチャンを上げていたことを思い出す。
そこにはミシェランレストランが20店もあり、世界屈指の美食の街として多くの訪問客を魅了しているという。料理はシェフがいなければ始まらない。つまり腕のいいシェフがいるかどうか街の勝敗を決することになるかもしれないというアドバイスは今後の日本、特に地方観光地の発展に大いに参考になりそうだ、
奄美大島は、2021年に奄美諸島の徳之島、沖縄島北部及び西表島とともに世界自然遺産に認定された。奄美大島が選ばれたのは希少な生物の宝庫という理由で、その大自然がアピールポイントとなる島だ。が、それとは真逆のイメージの美食という魅力があることを今回行って初めて知った。観光促進でもっとこのことを強調していいのではないだろうか?
私は兼ねてより首都圏の巨大マーケットを抱える伊豆諸島の観光地としての魅力に惚れ、その再興の可能性にも期待し何度もリピートをしているが、この美食という切り口では、伊豆諸島のどの島も奄美大島の足元にも及ばないと言わざるを得ない。
海と山の幸に恵まれた日本の島々はもともと素晴らしい食材の宝庫だ。
今後「美食の島」になろうとする努力と競争が増え、さらに魅力が増していくことを望みたい。(了)
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