WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE.~ハンネスさんは死ぬしかないけど壁の中には安心と安全が必要だ

この記事は、佐渡島庸平さんの「WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. 現代の孤独を持続可能な経済圏としてのコミュニティ」を読んでのアウトプットです。

要約

はじめに
今、人はネットでどんどんつながっているはずなのに、どんどん孤独が増している。どうすればnot aloneになれるか?

第1章 現代の孤独とコミュニティ
「安全・安心」と「自由」は基本的にトレードオフの関係にある。インターネットとコミュニティをうまく使ったら両方手に入れられるのではないか? インターネットをうまく使えば、自分の欲望を社会に合わせて満足したふりをしなくてもよくなるし、信頼できるコミュニティに入れば情報の多さに脅かされることなく信頼できる情報だけが入ってきて安心が得られる。

インターネット的な価値観は、人々のアイデンティティの元や幸せの定義などを大きく変えているので、インターネット的なものに色々なものをアップデートしていかないと、例えばappleすらも危ない。

「何を手に入れているか」よりも「何をやっているか」「なぜやっているか」が重要になったので、重要なのは問題解決から問題発見にシフトしたが教育システムはまだ過渡期にある。

コミュニティをインターネット的にアップデートして、幸せになろう。

第2章 持続可能な経済圏としてのコミュニティ
自分のことを深く理解してくれようとしてくれている人が一定いることが作家の幸せにつながる。「作家の売り上げの8割を、2割の熱心なファンが占める」という状況をつくろう。情報が欲しいという欲望より、関係性を築きたいという欲望の方が今は強いから、興味関心のない人から見たらよく分からないものを作るとヒットする。

第3章 安全・安心とは何か?
安全・安心を確保するのは、実はあらゆることの前提。コミュニティを成功させるには「熱狂」が必要だけどまずはそれ。すべての人が、自分なりの安全・安心を確保してから「挑戦」している。大事なのは順番。安全安心を確保してから信頼を構築して、熱狂・拡大のフェーズへ。

第4章 箕輪さんとの対談
・いいコミュニティの条件は、入り口のハードルが高く、出口が低いこと
・共犯者の数が作品の強さを決める
・熱狂とは、成長することか成長を見守ることで起きる
・長文でメールするな。
・情報はどんどんスルーしていく時代に。
・NewsPicksBookの著者の最終的なメッセージは大体似通っていて「あなたは何者か」「何がやりたいか」を問い、最後には「個として立て」と訴える。今の時代は人間丸出しで世の中に出ていくしかない。

考察

「明らかに解決すべき問題」というのは、確かに世の中から減ってきていると思う。それは、もう解決されてしまったから。(個人レベルでも、企業レベルでも。世界レベルでいうと飢餓・疫病・貧困はほとんど解決された)

その代わりに、「何が問題なのかが分からない」とか、「問題の存在が認識できない」という状況があると思う。(MDGsがSDGsになって、それを受容しようとする企業なんかはそうだ)

インターネット以前の価値観の人=課題解決型の頭しか持っていない人にとって現在というのは、「進撃の巨人」の最初に出てくる、巨人なんて襲ってこないと高をくくって怠けている兵士みたいなもので、作中には描かれていないけれどあの人たち(または、あの人たちの前任者たち)はきっと壁の中の秩序を守るためにそれなりにやることはやっていたんじゃないだろうか。でも、もう秩序が完成してしまったために、大してやることはなくなった。その代わり、新しい問題というのは確かにあるんだけど、頭を切り替えないとそれに対処するどころか、問題があることを認識することすらできない。

「情報はスルーするもの」「メールで長文は書かない」「電話はかけない」「アップデート主義(走りながら考える)ということは堀江さんとかも同じことを言っていて、これは具体的な行動論なんだけど、その背景にはそういった変化がある。

そして、コミュニティというのは、かつては当然のようにそこにあって所属するかしないかを決めるだけのものだった。だけどその世界では、安全・安心と自由がトレードオフだった。そのような変化を捉えることができれば、コミュニティをアップデートして安全・安心と自由を両方手に入れられるものにしようというのが著者の考え。そして宮台真司のいう「島宇宙」の中で経済を回すということが、それに直結するようだ。(家入さんの本はまだ読んでいないけどそういうことが書いてあるんじゃないだろうか)

さて、自分の会社の仕事に当てはめるとどのような転用ができるだろう。

・2割のお客さんから8割の収益を得られるような仕組みをつくる→お客さんをコミュニティ化していく→集まる場をつくったり、オンサインサロン的なものをつくる?
・チームの中に「安全・安心」をつくって、熱狂を生み出す→一人一人にとって、なにがそれにつながるのかを考える?

ところで、この本のタイトルは、頭山満の「一人でいても寂しくない男になれ」に似ていますね。明治政府が近代化・グローバル化の名目のもと腐敗していった一方で日本の価値観を守ろうと奮闘した「玄洋社」の活躍も、コミュニティづくりの成功によるところが大きいかと。

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