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消える書店

 本屋へ行くのが好きだ。

 ネットで本を買うこともあるけど、実際に本を買うのは圧倒的に本屋が多い。一旦本屋に入ったら、1時間や2時間は本を眺めていられる。(だから奥さんとはあまり行かないようにしているんだけど)書架にずらりと並んだ中から一期一会の本を探すのが好きだし、その店独自の視点で力を入れて売り出している本に出会えるのも本屋の魅力だ。

 今日SNSを見ていたら、書店員の方が、がんばって店頭ポップを作った写真を上げていた。華やかな店頭ポップで初めて知る本もあって、こういう取り組みは本当に素晴らしいと思う。直接本を売るという仕事ではないけど、いろいろな本を、来店する人に知ってもらおうという試みは、見る方としても楽しくなるものだ。

 ところが、その写真に対する世間の反応は意外に冷たいものが出てくる。「やりすぎ」「落ち着いて本が探せない」「押しつけがましい」などなど。ちょっと、その書店員の方がかわいそうになるような反応が少なからず返ってきていた。
 え、ちょっと待って。このポップすごく楽しいじゃん。みんな、こういうの好きじゃないの?と、信じられない気持ちになる。しかし、一方で、これが書店を訪れる人たちの正直な気持ちなのかもしれない。

 そう、今や書店へ行って本を買うという行為は、「お目当ての本を」「素早く見つけて」「速やかに買って帰る」という極めて単一の目的に収束しているのだ。合理的である。買いもしない本を1時間も2時間も眺めて、人生の貴重な時間を潰す必要はない。欲しい本があったら、店員に聞くなり、検索機で探すなりして、速やかに購入すればよい。もっと言えば、わざわざ混雑する町中に出かけて、インフルエンザウィルスに怯えながら書店で消耗せずとも、ネットで検索してワンクリックで次の日には本が届くのだ。

 そんな当たり前のことを思いながら、ニュースを検索してみると、ジュンク堂書店京都店、名古屋店の2店舗は今年の2月で閉店するという。また、地元の書店も、昨年末から今年にかけて閉店している店舗が複数あり、書店の厳しさを実感する結果となってしまった。

 データとして話すならば、「国語に関する世論調査」というのを文化庁がまとめている。その、読書の習慣が減っていると言いたげな結果を引用して、ここに書こうとしたけど、そんなことするまでもなく「本」という媒体が我々の生活から消えつつあると言うことだ。いずれにしても、我々の限られた時間からは読書は消え、日々厳しくなる家計からは本代は削られていくことは確かだろう。

 よし、決めた。今後は少し意識して出かけた先の書店を見てみることにしよう。年間通して、いろいろなところへ出かけているけれど、なるべく多くの書店を見て回ろうという気になってきた。普段、お気に入りの書店があって、そこへはよく行くのだけど、それぞれの書店のがんばっている姿を見るのもいいのかもしれない、と急に思い立った。

 うん、今年の新たな目標ができたようである。


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