図書館の話

 ときどき図書館へ行く。本屋が好きなぐらいだから、当然図書館も楽しい。一度行けば、2,3時間は本を見ていられる。しかも、図書館は無料だ。いくら本を抱えてカウンターに持っていっても、1円も払う必要はない。なんと素晴らしい施設なんだ。

 しかし、そうは問屋が卸さない。近くの図書館は1回の貸し出しは10冊まで。そう、いつも図書館へ行くと、この10冊をどの本にするかという選択との戦いだ(まあ、それは本屋でも、毎回どの本を買うべきか悩むという点では一緒なんだけど)。あれもこれもと本を選んでいるうちに、だいたい15冊ぐらいになる。じゃあ、この本は棚に返そう、と思って、返却に行く途中で見かけた本にまた興味が湧いてしまう。正直言って、無限ループの作業だ。

 そんなことをやっていると、あっという間に2,3時間だ。で、なんとか10冊に絞り込んだ本を持って帰る。概ね満足な時間を過ごせるわけだが、今度は、それを読むための時間との戦いだ。返却期限は2週間。10冊を2週間で読むには、1日1.5冊ぐらいは読まなくてはならない。いつもは2,3日で1冊読むところが、図書館へ行った後は、しばらく本気モードで読書に勤しまなければならない。しかも、普段から積みがちな、買ってきた本は後回しになる。せっかく買った本も読まずに、なんでわざわざ図書館で借りて読む本を増やしているのか。毎度毎度のことながら、そんなしょうもないジレンマと戦っている。

 僕にとって、図書館へ行くという行為は、自然バトルのような意味合いを帯びてくる。気楽に行って、気楽に1冊借りてくるという、気楽な利用ができない自分が恨めしい。おっと、図書館から帰る前には、除籍図書の箱も覗いて、頂いていける本は頂いていこう。もうほとんど病気だと思う。

 ところで、図書館へ行くと、時間帯にもよるのだが、ほとんどはお年寄りの利用が多い。ちなみに、その次に多いのは中高生ぐらいの学生による勉強利用。僕ぐらいの中年男性はあまりいない。自分が暇なやつみたいだ。僕自身も、受験生のときには、図書館を勉強で利用していた。でも、僕は図書館で勉強はできなかった。目の前に本が山ほどあって、勉強できるはずがない。当時は、毎日図書館へ通って、1日2,3冊は読んでいた。『魔界水滸伝』とか『グイン・サーガ』とか『指輪物語』とか、重量級の小説が実にはかどったものである。まあ、その後受験には失敗して図書館で勉強するのはやめたのだけど。

 そんな、受験生時代はとうに過ぎている僕だが、いずれ今度はお年寄りの図書館利用者になっていく。今日も図書館に大勢訪れているお年寄りを眺めては、ああ、自分もきっとそうなるのだろうと思っている。果たして、そのときも自分は10冊の本とバトルのような読書をするようなことを続けているのだろうか。それとも、受験生時代に戻って、毎日2,3冊の本をこなす生活をしているのだろうか。我がことながら、今から心配なような楽しみなような、変な感じである。

 ああ、でも毎日2,3冊読める生活なら、京極夏彦作品をコンプリートしてもいいかもしれない。いや、学生時代に挫折している『ゴーメンガースト』三部作に再挑戦か。まだまだ先の話である。

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