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その星は肉眼では見えない

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2021年12月の記事一覧

「掌」

友達が末期癌になり、短期間の間にげっそりと痩せた。見舞いに駆けつけたが、かける言葉が見つからずただただ手を握ることしかできなかった。言葉にならない思いを掌に流し込むような気持ちで、友達の手を握り締めた。すると、友達は微笑みながら涙を流してこう言った。あなたの気持ちが、今、伝わってきたような気がする。病気になってから、たくさんの優しい言葉や励ましの言葉をかけてもらってきたけれど、私に触ってくれた人は

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「言葉」

四つの大学病院で検査を受けたが、どこの病院でも「余命半年です」と言われた癌患者の女性がいる。最後の頼みの綱として、自然療法を基本軸とした医師に診てもらった。ドクターは、問診した後「大丈夫。あなたは治りますよ」と言った。この言葉を聞いた時、女性は喜びに泣いた。そして「よろしくお願いします」と治療をお願いした。ドクターは言った。癌になる原因は大きく二つ。体温の低下と、血液の汚れです。病気は体からのサイ

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「多様性」

坂爪さんのブログを読んで笑ったり悔しがったり驚いたり感情を動かされています。いつも自分の感情、考えを坂爪さんが言語化してくれている事に悔しさ(?)を感じているので、今回は私も自分の経験と気づきを言語化して見ようと思いこのメールを送りました。

私は以前知的障害や精神障害がある(と言われている)人達が支援を受けながら一軒家などで共同生活する「ケアホーム」のスタッフをしていました。そこでの主な仕事は、

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「ロックンロールとキリスト教」

三浦綾子の小説に影響を受けた私は、キリスト教の教えに興味を持つようになった。20歳を過ぎた頃、東京でイラン人の牧師と出会った。その人はイランでストリートチルドレンとして生活し、弟たちの面倒を見るために窃盗や強盗を続けた。喧嘩が強くなければ生きていけないため、腕を磨き続けた。それが功を奏して、レスリングの世界大会に出場するようになった。だが、母国で戦争が起こり、軍人として戦地に赴いた。戦場は悲惨だっ

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「手当て」

娘がブラック企業で働いていて、家でしくしくと泣くことが増えたんです。頑張れって言い過ぎることもどうかと思って、この前、娘の背中に一時間くらい手を当ててみたんです。手当てって言葉もありますが、長い時間娘の背中に手を当てていたら、彼女の辛さや苦しさが伝わってきて、話しているだけではわからない感覚を感じることができて、なんだかすごいよかったんです。ずっと手を当てていたら、最後の方、ふわっと自分の手が軽く

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