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分類は、くまなく、かつ重複なく分ける

さて先週は、テーマと分類、ということでお話をさせていただきましたが、今週も、もう少し詳しく考えたいと思います。

ガイドブックの地図にある分類

ガイドブックを買うと、大体は地図がついています。
その地図には、縦には1,2,3…、横にはA,B,C…と記号が振り当てられており、行きたいお店を探すときには紹介ページに書いてある「3-B」などの指示に従って地図を見れば、簡単に探せるようになっています。

地図

この「3-B」が分類だと思ってください。
そのガイドブックが対象としている範囲を、くまなく、かつ重複なく分けるのです。
コールセンターにおける分類がこれほどシンプルにできれば理想的なのですが、まずはこの理想を共有しないことには始まりません。

(一方でガイドブックの本文は、テーマとその補足で成り立っています。
こちらは全てを網羅する必要はありませんし、不可能です。
強調したいポイントや思い描いて欲しいイメージが伝わるように構成・表現します。)

特定の区域を更に詳しく分ける場合には、それを明記します。
その場合には、記号も変えます。(III-bとか)

ベン図を覚えていますか?

学校で「集合」について習った方も多いのではないかと思います。
集合の式を思い出す必要はありませんが、その基本概念を思い出すと分類を考えるのに役立ちます。

例として、シンプルに、事柄Aと、事柄Bのみを案内する部署があったとしましょう。
その部署で、入ってきた問い合わせを分類するとしましょう。
問い合わせを分類する目的は、どのような案内をしたか、を知るためです。

カテゴリは以下の4つになるはずです。
①事柄Aを案内
②事柄Bを案内
③事柄AとBを案内
④事柄AもBも案内しなかった

ベン図はこうなります。

ベン図

①(ピンク部分)は、Aのみ案内した集合
②(ブルー部分)は、Bのみ案内した集合
③(紫部分)はAとBの両方を案内した集合
④(白い部分)AもBも案内しなかった集合

これで、業務全てが網羅できます。
一般にこのような分類は、1年ほど集計を続け、その結果を踏まえて次年度の業務改善に活かすために用いられます。
「拾えない問い合わせが出てきたから、年度の途中だけどやっぱりカテゴリを変えよう」とすれば、どんどんその集計の意味はなくなっていきます。

ここで忘れられやすいのが、③と④なのです。
上の例は簡略化しているので、③と④がなかったらかえって変かもしれませんが、実際には、何千もの問い合わせ履歴から内容をピックアップし10も20も項目が出てきます。何千も履歴を見て重なる部分が一回も無かったんだから無いだろう、全部問い合わせは網羅したはずだから、これ以外に問い合わせは無いはずだ、などと考えて、③や④を作っておくのを忘れてしまうということが起りがちです。

だってAとBしか案内しない業務なんでしょう?AもBも案内しなかった問い合わせなんてあるわけないじゃない!

と決めてかかるのはお勧めできません。

ソクラテスをお呼び立てするまでもありませんが、「自分はこの仕事を分かっている」と思わず、「無知の知」をもって仕事には謙虚に取り組みましょう。

③や④が常に必要なわけではない

FAQやテンプレートを作成するなら、③は各自にやってもらえば構いません。④は質問が来たら随時追加していけばよいので、最初からすべてを網羅している必要はありません。

しかし、分類をしたいのであれば、そうはいきません。
③の部分を考えておかなかったがために、「A、B、その他」の3つしかカテゴリがなくて、AとBの両方を案内したときにAで取る人やBで取る人やその他で取る人がいれば、そのデータはもう、何を表しているのか分からなくなります。(「A、B」の2つしかなくても同じです。念のため。)せっかく履歴をひっくり返して分類を作った時間も、みんなで問い合わせを受けた後に分類を選ぶひと手間も、全てが無駄になります。

滅多にない問い合わせや、あり得ない問い合わせのために、FAQやテンプレートを作成する手間を掛ける必要はありませんが、分類を作るときには、3年間一度もなかった問い合わせであっても、問い合わせが入る可能性がゼロでないのであれば、予め分類を作っておく必要があります。
地図の例を再度用いれば、本文で一切触れていないからと言って、地図として載っている部分に記号を割り振らないというのはダメですよ、ということです。

元素周期表を作ったメンデレーエフは、元素の分類を考えた際、当時発見されていない元素の場所を空けておいたというのですから、すごいですね!

もう少し説明したいのですが、ちょっと長くなってしまったので、また来週にします。

それでは、また。

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世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。