見出し画像

またも劇的なカムバック。レアル・マドリー対マンチェスター・シティ、第2レグの命運を分けた采配とプレーに迫る

こんにちは。

国内外の最先端のサッカーを扱う専門誌『footballista』に、CLラウンド16のパリ・サンジェルマン戦準々決勝のチェルシー戦準決勝のマンチェスター・シティ戦1stlegに引き続いて、2ndlegのレビューを寄稿しました。


また、2ndlegのレビュー公開に伴い、1stlegのレビューが無料公開されています。このnote記事を出す時点では無料期間もおそらく残り1日ほどとなってしまっているかと思いますが、併せてご一読いただけると嬉しいです。


マンチェスター・シティ戦の雑感

1stleg後にnoteで書いたざっくりレビュー&プレビューで指摘したように、特に注目していた点はレアル・マドリーのブロック守備vsマンチェスター・シティの崩しという局面と、レアル・マドリーのプレス回避vsマンチェスター・シティのハイプレスという局面。どちらも戦術的に大きな改善が見られ、前半はやや優勢に試合を進めることに成功した。

まずブロック守備だが、予想通りルカ・モドリッチにロドリ番というタスクを課す[4-2-3-1]の形を選択した。そしてこれまでの文脈からはあまり想定できなかった点として取り上げたのが、フェデリコ・バルベルデをいつものように右WG(ウィング)に置きながらも最終ラインに吸収させずに中盤ラインに残した点である。

4バックで守るということはマンチェスター・シティが最も得意とするそのギャップを突く攻撃を受けるリスクがあるわけだが、まずプレスラインの高さを普段より10mほど高く設定することで単純に相手をゴールから遠ざけ、また怪我から復帰したカゼミーロがベルナルドを、トニ・クロースをマンツーマン気味で見つつバルベルデを中心に素晴らしい距離感でファーストDFに出ていったことでベルナルドを起点とするマンチェスター・シティの侵入を食い止めた。

さらに素晴らしかったのは、相手のバックパスに対して連動してラインを上げ、SBの縦スライドを厭わないハイプレスを繰り出したところだ。ダビド・アラバ不在の中ナチョ・フェルナンデスのパフォーマンスの高さは見事で、パリ・サンジェルマン戦では左SBを、チェルシー戦では右CBを、そしてこの試合では左CBをこなすユーティリティ性に今回も助けられた。

また、レアル・マドリーは組織的な[4-4-2]のハイプレスに苦しみながらも、プレス回避はロングボールの落としどころとセカンドボールの回収に工夫が見られた。より競り合いに強いバルベルデに落とす、あるいはサイド高い位置に張るカルバハルに落とし、バルベルデが素早く回収するシーンを何度か作ることができていた

注目のヴィニシウス・ジュニオールvsカイル・ウォーカーはウォーカーがさすがの対応を見せ、後半にはペップ・グアルディオラのガブリエル・ジェズズとフィル・フォーデンの配置を入れ替えるという修正もあり、随所に見どころがあったように思う。レアル・マドリーはキックオフのサインプレーから始まった後半初めの15分でゴールを奪えなかったことが響き、選手交代でややバランスを崩したところを突かれて被弾。万事休すかと思われたが、途中出場ロドリゴ・ゴエスの再現性のある形から2ゴールを奪い劇的に追いつくと、同じく途中出場のエドゥアルド・カマヴィンガの大活躍もありカリム・ベンゼマが勝ち越しPK弾をゲット。2試合合計6-5という壮絶なスコアで、リバプールの待つ決勝への切符を掴み取った。footballistaの記事ではこれらをかなり詳細に説明しているので是非。


アトレティコ・マドリー戦の雑感

主力の多くを入れ替えて臨んだマドリッドダービーだったが、0-1で敗戦を喫した。試合を見返していないので細かい部分はがーすけさん(@galabbit)にお任せするが、主力不在の影響が随所に出ていたところを中心に簡単に振り返る。

まずアトレティコ・マドリーのハイプレスおよび越えられたときのプレスバック、ブロック構築の速さが素晴らしかった。このところはメンタル的な部分の影響も大きかったように思う。

レアル・マドリーは、フィニッシュの局面だけでなく、前進の際にもヴィニシウスのドリブルに大きく依存している。クリーンな状態でボールを渡してあげられなくても、彼は対面のDFと正対して左右に揺さぶりながら果敢に勝負を挑む。飛び込めない相手は、それだけでもラインを下げざるを得ず、相手のラインが下がるということはこちらの前進が成功しているということを意味する。こうして味方のプレーエリアを広げ、中盤やDFの選手たちが高い位置をとることができるというのがヴィニシウスのこなすタスクの1つでもある。

この試合のレアル・マドリーは、たとえハイプレスを剥がすことができてもミドルサードでセットし直すアトレティコ・マドリーを相手にボールを前進させられないシーンが目立った。普段は大外レーンで幅を取るヴィニシウスだが、今日幅を取る役割はルーカス・バスケスとナチョ。あくまで相手を広げるための立ち位置で、しかしやはり縦への怖さがないのでなかなか広がらない。最終的には中央を使って崩すことを意図し、ハーフスペースで近い距離感を保っていたロドリゴ、マルコ・アセンシオの2人を活かしたかったようだが、強引に縦パスを差し込もうとして引っ掛けてカウンターを食らうということを繰り返してしまっていた。この構成だと縦パスを入ったところからスピードアップしすぎてしまい、ボールロストしてもゲーゲンプレスをかけられない。要するにタメを作れる選手がいなかった。そのため前半はチーム全体として押し込むことはできなかった。

ヴィニシウスのタスクを上述したが、選手の強みをより活かせていたのはアトレティコ・マドリーの方で、中央ジョフレイ・コンドグビアの前方に4人を配置し、レアル・マドリーとは異なるロングボールと外回りの前進からヤニック・フェレイラ・カラスコのドリブルでレアル・マドリーを押し込むことに成功。相変わらずマルコス・ジョレンテのチャンネルランの火力は高かった。ただしフィニッシュの精度がなかなか上がらず、カラスコのPKで奪った1ゴール以外の数々の決定機を逃し、この日先発のアンドリー・ルニンも何度がビッグセーブを見せた。レアル・マドリーはボールを奪ってもベンゼマというポジティブトランジションにおける起点がいないのでなかなか押し返すことはできない。ルカ・ヨビッチは悪くなかったようにも見えたがヤン・オブラクに阻止された決定機は決め切りたかった。

後半にモドリッチとヴィニシウスを投入。相手も守り切るという雰囲気になり、ハーフスペースは右はモドリッチが、左はロドリゴが上手く使い始める。左大外のヴィニシウスにクリーンにボールを預けることで終盤は押し込んだが、その時にはヨビッチもカゼミーロも(ベンゼマも)ベンチにおり、クロスの期待感が薄かった。そして試合終了のホイッスル。

結果にこだわる試合ではなかったのは確かで、ここからCL決勝までの3試合はとにかく怪我人を出さず、かつプレーリズムを落とさない形でローテーションを回すことが大事になってくるはずだ。いきなりリバプールのインテンシティの高さに圧倒されるという展開は避けたいところだが、百戦錬磨のメンバーなのでその心配もないだろう。カルロ・アンチェロッティの下、14度目のCL戴冠を目指して残り3週間、既に戦いは始まっている。


最後までお読みいただきありがとうございました!

よろしければサポートをお願いします!いただいたサポートは戦術ボードアプリTACTICAListaへと充てさせていただきます。