見出し画像

『ひめゆりの塔(1995)』を観ました。

”ひめゆりの塔”の映画化は今作で4作目のようです。
4作全部を見てみようと、まだ見ていなかった神山征二郎監督『ひめゆりの塔(1995)』を観てみました。「アイドルさんも有名女優さんも出てくるから、きっと綺麗に作られているんだろうな」とか思っていたので、後回しにしていた作品でした。
そして、今作を観終わってから私は「大変な勘違いをしていた、誰に謝ったらいいのかわからないが、本当に申し訳なかった(土下座)」と思ったのでした。泣きすぎて少し頭が痛くなってしまいました。素晴らしい作品だったのでした。

現実を見るとか見ないとかの問題でなく、戦争が出てくる映画を見るのはツラいのです。ツラいのでなかなか向き合えないのです。
そして、実話の作品というのはフィクションの映画なんか見るのとは桁違いに覚悟が必要になります。どうしても内容が心に刺さってしまうのです(私は15年間沖縄に住んだことがあります)。だから「ああ、ひめゆりの塔ね、知ってるし観たことあるから」と気になりつつ、あえて避けていました。

もちろん内容は、別名“ひめゆりの学園”と呼ばれていた2つの女学校の生徒が、沖縄戦に巻き込まれる壮絶な実話が元になっています。私は吉永小百合出演の『あゝひめゆりの塔(1968)』を観てますが、今作の『ひめゆりの塔(1995)』は全然別の作品のように感じました。

というのも、今までの3作品の原作は石野径一郎著の『ひめゆりの塔』でしたが、今作の原作は仲宗根政善著の『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』なのでした。
こうなると当然描き方も内容も違ってきます。なので、今までの”ひめゆりの塔”の映画を観た人におかれましても、今作をぜひ観ていただけたらと思います。タイトルが”ひめゆりの塔”なので、同じ内容のお話と勘違いをしている私のような人も、多くおられるんではないかと思います(タイトル変えてもよかったのではと思う)。

私が今作で一番ショックだったことがあります。米軍の攻撃で撃たれたり怪我をしたり、身体の部分を欠損するということは心の準備をして見ていました。しかし『ガスの攻撃を受けた』被害者というものを描かれているのを見たことがありませんでした。
緊迫した壕の中でキャッキャと笑う女生徒は明らかに壊れてしまっています。でも壊れてしまったことで、もういつ殺されるかも知れないという恐怖は感じなくなっているようです。そんな状態になったのが本人にとっていいわけではないのに、「恐怖から解放されたのであれば、よかったのかもしれない」などど思ってしまうのです。真っ暗な闇の中で、そこだけ周りに関係なく輝いている光のように感じてしまうのです。なんだか私は普通に見てられなくなってしまいました。

「まだ中学生と高校生が、なんで戦争に巻き込まれるのか?」この疑問が普通にあるとおもいます。なぜ戦争になる前に安全な場所に避難することができずに、最前線の日本兵といっしょに行動するようなことになってしまったのか。そういう部分もわかりやすく描かれているように感じました。
沖縄戦における日本兵の行いもちゃんと描かれていました。日本兵が行くところもない市民を「出ていけ!」と洞窟の中から追い出す。日本兵が水を汲んできた女生徒に「こんなマズい水が飲めるか、汲みなおしてこい!」と汲んできた水を蹴飛ばす。こういうシーンは内地生まれの私としては自分の先祖さんが、沖縄の人にヒドいことをしているように感じてしまい、見ていて目を背けたくなる場面です。
そういう部分を原作ではちゃんと描いているのでしょう。仲宗根政善著の『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』を読んでみたくなりました。

キャストがよかったです。沢口靖子、永島敏行、後藤久美子、中江有里、大路恵美、酒井美紀、髙嶋政宏、熊谷真実、平泉成、石橋蓮司(私が特にわかるものだけあげました)。
本当に観てよかったし、「なんで私は今まで見なかったのか」となんだか悔しいような気持ちになるほどでした。

この夏に映画『島守の塔』が公開になるということで、その前に沖縄戦の映画を観ておこうと思ったのがきっかけでした。

こういう映画作品が作られるということに、なにか邦画の世界に希望を感じるのですが、上映館がなぜか東京、栃木、兵庫、沖縄だけなのでした(私は高知県在住)。なんとか映画館で見たいです。ヒットして上映館が広がって欲しいです


この記事が参加している募集

#映画感想文

67,412件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?