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今日は国際生物多様性の日 20230522解説

1992年5月22日に生物多様性条約が採択されたということで、5月22日が国際生物多様性の日になっています。条約採択から数えて2023年で31年。毎年、いろいろイベントが行われます。

近頃は、ネイチャーポジティブとかTNFDとか30by30とか、ビジネスと生物多様性に関する話題もホットになってきています。

生物多様性とは

生物多様性には、生態系、種、遺伝子の3つのレベルがあると整理されています。

生態系の多様性というのは、針葉樹林とか草地とか干潟とか、気候や地形などによってさまざまに異なる生物相がある、その多様性のこと。

種の多様性というのは、ゾウとかキリンとか、ひまわりとか桜とか、マグロとかイワシとか、等々というように、さまざまに異なる種がある、その多様性のこと。

遺伝子の多様性というのは、同じアフリカゾウといっても、どの地域のどのグループに属しているかによって、遺伝子レベルでは細かな差異がある、その多様性のこと。

生物多様性条約では、「種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む」としていて、順番に、遺伝子の多様性、種の多様性、生態系の多様性ということになります。

生物多様性条約は何のために

生物多様性条約の目的は、次の3つです。

1 生物の多様性の保全
2 生物多様性の構成要素の持続可能な利用
3 遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分

https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/treaty/about_treaty.html

はあ、そんなもんですかって感じですが、3のためには2が必要で、2のためには1が必要、と理解するとわかりやすいでしょう。
で、「遺伝資源の利用から生ずる利益」って何かといえば、バイオテクノロジーによる新しい医薬品や素材や技術の開発から得られる利益ってことで、1からみていくと環境条約にみえますが、3からみていくと経済条約にみえます。

熱帯雨林に生息するまだ誰も見たこともない昆虫や菌類が、とてつもない薬効成分をつくる酵素をもっているとしたら。

それを見つけて技術開発し商品化に成功した人・会社・国の手柄で、利益総どりという話なのか、いやいや、今日までその酵素を生み出す遺伝子を受け継いできた種をはぐくむ生態系を維持してきた産地国のおかげでしょ、応分の分配があってしかるべきでしょ、という話なのか。これが経済条約としての生物多様性条約のキモで、ABS(Access and Benefit-Sharing)と呼ばれています。

しかし、遺伝資源の取得の機会と利益といったって、もとの遺伝資源がなくなっては元も子もないよね、だから、種の多様性と、それを生み出す環境、すなわち生態系の多様性自体を守る必要があるよね、ということで環境条約になるわけです。

生き物たちがかわいそうだから守ってあげよう、という情緒的な話ではなく、わりと身もふたもないのです。そのことは、生態系と生物多様性の経済学というレポートに如実に表れています。乱暴に超要約すると、「生物多様性は、人間に生態系サービスを提供してくれるから、守る価値があるよ」です。実のところ、「生き物たちがかわいそう」とひとが思うのも、生態系の「文化的サービス」の一部だそうで、なんだかなぁ、と思った記憶があります。

気候変動問題との関連

最近になって、注目されてきているのが生物多様性と気候変動問題との関連性です。

そういえば、生物多様性条約が採択されたのは1992年5月22日だから、5月22日が国際生物多様性の日になったわけですが、それは、地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)の直前のことでした。実は同時期に採択されたのが気候変動枠組条約で、この2つは、当初から、地球環境問題の2大テーマだったのです。

そもそも、今の地球の気候は、何十億年にもわたって生物が作り上げてきたもので、生物なしの地球とは大きく異なります。たとえば、今の地球の大気は酸素濃度21%くらいですが、生物がいなければ、基本的にゼロでした(生物なしで46億年たった地球の大気環境がどうなっていたかはわかりませんが)。

もちろん、地球の気候に生物だけが影響を及ぼしているわけではなく、物理的条件の変動もあるわけです。

それに加えて、この1-2世紀、「人間様」の影響力が思いのほか大きくなってきました。それで最近では「人新世」という新たな地質年代も提唱されています。下記記事では、地球上に存在する生物量を、人間が作り出した人工物量が超えた、というトピックスが紹介されています。

とはいえ、その人工物の代表格であるコンクリートは、何でできているかと言えば、砂利や砂などの骨材と、セメントと、水を混ぜて固めたもの。セメントは、もとはといえば石灰石(CaCO3)を加熱してCO2を放出して得た酸化カルシウム(CaO)が主要原材料。では、その石灰石はどうしてできたかといえば、昔々(何億年前)のサンゴ骨格に由来する生物起源のものもあります。
鉄筋コンクリートの鉄筋、鉄は超新星爆発で生まれる元素ですが、それが鉄鉱石(縞状鉄鉱床)という形になったのは、さらに大昔(何十億年前)のシアノバクテリアが放出した酸素と海中の鉄分が結合して沈殿したから。

想像力が大事、ではありますが

・・・などと、想像を膨らませて、生物多様性を守るのは、「情けは人のためならず」と同じで、まわりまわって人間のためなんだね(身もふたもないけど)、と理解できれば、どうするかは後で考えるとして、どうにかしなければいけない、という気持ちになれるかもしれません。

もっとも、上場企業に関しては、想像力とか理解とか気持ちとか関係なく、さらに身もふたもなく、取り組まなければならない状況になってきています。評価基準とともに、それに対応したツールの開発も進んできています。

https://esgjournaljapan.com/world-news/28549

少し、癒しが必要な気もします。

解説者紹介

サステイナブル歴30+3年の「眼」

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  • 増補改訂作業に入りましたので、一時的に販売停止しています。

  • 1回目:キーワード解説集として読む。基本的に、1キーワード3論点でまとめてあります。問題は解かずに、解説を読んで内容を理解する。それから、「どこを問題にしたのかな?」と問題文の選択肢と、解説文を見比べる。そして、不正解肢はどれで、解説文のどこをどう変えたかを確認する。

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