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#029 年1回の企業が行う健康診断【法定検診】~前編~

1. はじめに

お疲れ様です!なべパパです。

先日、深夜労働手当について整理していきましたが、深夜業を含む業務を常態とする従業員に対して、健康診断を受けさせる必要があります。

事業主は従業員に1年に1回健康診断を受けさせなければいけませんが、深夜労働に従事する従業員には、半年に1回の健康診断を受けさせなければいけません。
(深夜業を含む業務は半年に1回健康診断を受けることが義務づけられている業務は「特定業務従事者」とされております。)

そこで今回は、"年1回の企業が行う健康診断【法定検診】"に関する情報について、2回に分けて整理していこうと思います。

この記事を読み終わった後には、

  • 健康診断の内容

  • 健康診断の費用負担等

  • 健康診断実施時の注意点

の概略についてわかるようになります。

それでは、行きましょう!


2. 労働安全衛生法における"健康診断"

まずは、関連法規について押さえておきましょう。

<労働安全衛生法>
(健康診断)
第六十六条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

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<労働安全衛生規則>
(雇入時の健康診断)
第四十三条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

(定期健康診断)
第四十四条 事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

(特定業務従事者の健康診断)
第四十五条 事業者は、第十三条第一項第三号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び六月以内ごとに一回、定期に、第四十四条第一項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。この場合において、同項第四号の項目については、一年以内ごとに一回、定期に、行えば足りるものとする。

(海外派遣労働者の健康診断)
第四十五条の二 事業者は、労働者を本邦外の地域に六月以上派遣しようとするときは、あらかじめ、当該労働者に対し、第四十四条第一項各号に掲げる項目及び厚生労働大臣が定める項目のうち医師が必要であると認める項目について、医師による健康診断を行わなければならない。

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3. "健康診断"のポイント

3.1 健康診断実施の義務

健康診断の実施は、労働安全衛生法で定められた事業主の義務です。
従業員もまた、企業の実施する健康診断を受ける義務があります。

3.2 健康診断の対象範囲

正社員の場合には、例外なく健康診断を受けさせる必要があります。
それ以外の場合、以下の要件により義務が発生します。

正社員
業務時間や業務内容、勤続年数にかかわらず全員が健康診断の対象です。

年に一回の定期健康診断のほかに、雇い入れの直前もしくは直後にも健康診断を受ける必要があります。

アルバイト・パート
常時雇用されている場合健康診断の受診対象です。
常時雇用されている場合とは、以下2つの条件を両方満たす状態です。

・契約期間が1年以上である
・週の労働時間が正社員の4分の3以上である

役員
役職によって健康診断の受診対象となるかが変わります。
役員待遇であっても、工場長や支店長等、労働者性の強い役職の場合は健康診断の対象です。
一方で、代表取締役や社長等の役員は企業とみなされるため、健康診断の対象からは外れます。

3.3 健康診断の種類

大きく一般健康診断と特殊健康診断のふたつに分けることができます。

一般健康診断
職種や業務内容、勤務時間に関係なく実施する健康診断です。一般健康診断には以下の5種類があります。

一般健康診断の種類
・雇い入れ時の健康診断
常時使用する労働者に対して、雇い入れ時
・定期健康診断
常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回
(次項の特定業務従事者を除く)
・特定業務従事者の健康診断
体に著しい振動を与える業務や有害物質を扱う業務等の特定業務従事者に対して、業務実施の都度
・海外派遣労働者の健康診断
6ヶ月以上海外へ派遣する労働者に対して、出国時と入国時それぞれ
・給食従業員の検便
飲食を提供する業務に従事する労働者に対して、配置換え時

特殊健康診断
人体に有害となる恐れのある業務に従事する従業員に対して実施される健康診断です。
該当する業務への雇い入れ時や配置替え時、6ヶ月以内ごとに1回の定期的な診断が必要です。

特殊健康診断の必要がある従業員
・屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者
・鉛業務に常時従事する労働者
・四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者
・特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る)
・高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者
・放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者
・除染等業務に常時従事する労働者
・石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍労働者

その他の健康診断
一般健康診断や特殊健康診断の他に、以下の健康診断があります。

じん肺健康診断
常時粉じん作業に従事する労働者、従事したことのある労働者

歯科医師による健康診断
塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りん等、歯またはその支持組織に有害な物のガスや粉じんを発散する場所での業務に常時従事する労働者

4. まとめ

・事業主は、従業員に対して1年に1回健康診断を受けさせる義務があります。さらに、深夜業を含む業務に従事する従業員には、半年に1回の健康診断が必要です。

・健康診断の実施は、労働安全衛生法で定められた事業主の義務であり、正社員、一定の条件を満たす非正規社員、及び労働者性の強い役員に対して行う必要があります。

・健康診断の種類は、一般健康診断と特殊健康診断の大別されます。一般健康診断は全ての従業員に対して行われ、特殊健康診断は人体に有害となる恐れのある業務に従事する従業員に対して実施されます。また、他にもじん肺健康診断や歯科医師による健康診断など特定の状況に対応する健康診断があります。

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