相乗効果と相補効果

はじめに

相乗効果も相補効果も多角化戦略によって生じる戦略的効果であるという点では共通している。この紛らわしい2つを整理しておこう。

相乗効果

相乗効果はシナジー効果とも呼ばれるが、その定義は

同一企業が複数の事業活動を行うことによって、異なる企業が別個に行うよりも大きな成果が得られること

である。

例えば、鉄道と駅チカの百貨店を別々の企業が手がける場合と、鉄道会社が百貨店を手がける場合を考えてみよう。

駅の中でもターミナル駅は乗降客が多く、小売業にとっては格好の立地条件である。ただし、ターミナル駅の開発計画は、鉄道会社主導で行われるので、立地の確保については電鉄系百貨店が有利になるため一般の小売業が進出するのは難しいことが多い。

鉄道会社が駅チカに百貨店を設けることで、交通の便の良さから集客が期待できるし、鉄道自体の需要を喚起することもできる。独立した企業が別々に運営を行うよりも、より大きなメリットが期待できる。

これが、複数事業の組み合わせによる相乗効果の例である。

相補効果

複数の製品市場での事業が、互いに足りない部分を補うことで、市場における需要変動や資源節約に対応できるために、企業全体として大きな効果が得られたり、効率が向上したりすること

例えば、スキーリゾート地のホテルが季節による需要変動に対応するために、テニスコートやレジャー施設などを建設することが挙げられる。

これは、需要変動に対応することによって年中の売上が平準化するだけでなく、ホテルの施設や従業員といった資源の節約にもなる。

これらはホテルの経営に大きな効果を与えるため、相補効果であると言える。

相乗効果と相補効果の違い

相乗効果と相補効果の最大の違いは、「相互作用が直接的か、間接的か」である。

相乗効果の場合、複数事業間に直接的な相互作用があるため、特定事業同士の組み合わせでないとシナジーは発生しない。鉄道事業が駅チカに百貨店を建設するからこそ、「利用者増」という直接的な相互作用が働くのだ。

一方、相補効果が発揮される事業の間には直接的な相互作用はない。スキーリゾート地のホテルがレジャー施設を建設したところで、冬場の利用者に直接影響を与えることはないのだ。この場合、ホテルは「夏場の利用者増」という目的のためなら、「レジャー施設」にこだわる必要はない。プールやBBQ会場、ビアガーデンでも構わない。事業の組み合わせの相手は問わないという点が相補効果において特徴的である。



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