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ITヘルプデスクが、これからのまちづくりステーションに

都農町ではデジタル・フレンドリー事業として、今年の4月から65歳以上だけの高齢者世帯と、15歳以下の子育て世帯を対象にタブレットを無償配布しています。

40%近い高齢化、若者流出が進む過疎化の町においては、高齢者一人ひとりがタブレットやスマホを使えるようになることが重要

タブレット配布で終わらせず孫のような若者世代による講習・サポート体制を整え、dサロンと称し、44自治会ごとに、年4回、巡回訪問中。

1. ITヘルプデスク「文明|BUNMEI」

都農町ではタブレット配布と同時期に、日常的に気軽に立ち寄れるITヘルプデスクを多世代交流サロン「文明|BUNMEI」に開設。

「文明|BUNMEI」の2Fには、都農町役場からデジタル推進を受託する一般財団法人つの未来まちづくり推進機構がオフィスを構え、1Fにカフェやオンライン料理教室など開催しているキッチンとともにITヘルプデスクがあります。

老若男女を問わず誰でもデジタル関連のことを相談したいときには予約不要、無償で相談できる体制を整えました。

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昨年、「文明|BUNMEI」のリノベーションを企画する際、イメージしていたのは都農町の「アップルストア」(笑)

都農町の中心市街地、商店街の一角にあるガラス貼りの店内で、若い世代と高齢者がデジタル機器を介して楽しそうに対話している、そんなシーンを理想にしていました。

まだ開設してまもないですが、1ヶ月あたり70-100人ぐらい、高齢者を中心に来場しています。

相談の内容は、タブレットの使い方に限らず、LINEのインストールの仕方や孫とのやりとりなどさまざま。

あやまってスマホのデータを消去してしまってあせってこられた方のデータを復元して、涙ながらにスタッフに感謝するなど、感動的なシーンも!

2. デジタル人材の確保が課題

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日本全体として、行政のDXや、住民のデジタル活用においてデジタル人材の確保が大きな課題になっています。

地方自治体において、外部人材をデジタル政策の補佐役に登用したのは1741自治体のうち、2.1%の37自治体にとどまります。

昨年10月の調査では、82.4%の自治体が「デジタル人材を見つけられない」と回答しています。

この一年、デジタル推進の実務をしてきた立場で、デジタル人材と一括りにはできないなと実感しています。

専門知識もさることながら、自治体内部に入るとしたら各部課との連携、調整や、議会を含め政策立案・推進していくマネジメント力のほうが求められるかなと。

また、高齢者をはじめ住民サポートをする場合は、より一層、専門知識よりもコミュニケーション力や人間性のほうが重要性は高いように思います。

3. デジタル活用支援推進事業

6月に、総務省にて『デジタル活用支援推進事業』が立ち上げられました。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000754322.pdf

内閣府の世論調査では、70歳以上の高齢者の約6割がスマホやタブレットを利用していないと回答。

昨年12月に閣議決定された「誰ひとり取り残さない、人に優しいデジタル化」という方針に基づき、下記のような施策が書かれています。

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今年度は、携帯ショップを中心に、全国1,800箇所でのデジタル講習会実施

問題は、都農町のように携帯ショップがない817市町村です。

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携帯ショップがない817市町村は、これから5年間で約半分の400市町村に講師を派遣する構想です。

支援員の人数ベースでは2,000人と計算。

5年後(令和8年度)のアウトカムとして、60歳以上がスマホやタブレットを使いこなす割合を、令和3年1月時点の46%から70%に引き上げます。

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今年度、携帯ショップがない市町村で講習会などを実施する下記団体(一般財団法人つの未来まちづくり推進機構も含むが採択されています。

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4. 高齢者が使いこなすための3つのポイント

都農町で4ヶ月ちょっと、高齢者を中心にサポートをしてきた実感ですが、80代、90代でも使いこなしている方は、苦もなく新しいことにもチャレンジされて、どんどん楽しく使われています。

一方で、無償貸与とはいえ、タブレット配布を辞退する方や、受け取ったものの、一度も使用していない方も一定数いらっしゃいます。

単に、使い方を教えていくだけでは限界があります

都農町の事例から推測すると、使いこなす高齢者を増やしていくために必要なポイントは3つ

現役世代と異なり、「利便性」や「効率性」は、時間に余裕がある高齢者にはあまり響きません。

ポイントその1:楽しさ

昨年から、個別に高齢者を訪問して、どうだったらタブレットを使いたいか、というときに多くいただいたコメントです。

写真や動画を撮ったり、みんなでカラオケ、脳トレなどゲームやスポーツ中継、あるいは将棋や俳句、花やお城など自分の趣味や好きなものを見るため、楽しいことがあるなら、タブレットを使ってみようかな、という動機づけです。

ポイントその2:交流手段

代表的なものは孫とのLINEや動画でのコミュニケーション。

特に緊急事態宣言などで外出できなくなってくると、交流が減ってくるため、タブレットやスマホを使えると、孤独を和らげてくれるということ。

ポイントその3:将来不安の緩和

まだ表面化していない課題が多いため、これから進めていくことですが。

リアルタイムでの防災・避難情報、免許返納後の買い物手段としてのECサイト、オンラインでの病院予約、オンデマンドでのバスの呼び出しなど、この先、5年、10年を考えると不安になることの緩和です。

いまのうちからタブレットやスマホに使い慣れておくと不安の緩和につながるものと思います。

5. ITヘルプデスクの役割

高齢者といっても人それぞれです。家族や友人、ご近所づきあいにも左右されますが、上からお役所的に一方的な講習をしても、使う気にならない人はいつまでも使うようにはなりません。

使いたくなる動機を聞き出して、人やシーンによって講習やサポートの仕方は使い分けていく必要があります。

ヘルプデスクは、誰もがいつでも、どんなことでも気軽に来ていいところ、というブランディングをしていかないと、限られた層しか来なくなります。

最近、都農町にお住まいの80代の方とお話しした際、ウォーキングが日課で、都農神社から道の駅に立ち寄り、図書館で涼んでから、コーヒーを飲みがてら文明|BUNMEIによるのが楽しみなんだよっておっしゃってました。

ヘルプデスクが目的、というよりもコーヒーやおしゃべりを目的に立ち寄っていただき、日常的にタブレットやスマホのことも話せる、そんなスタンスが望ましいのではないでしょうか。

今は、町内にヘルプデスクは1箇所ですが、以前にも提案した「公民館」を町と自治会が費用を出し合い、Wi-FI完備にして巡回でもサポート役がいるようにすることで、より近くにヘルプデスクができていくと良いと思います。




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