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21年秋華賞を振り返る~白毛のアイドルを襲った不運と名手の誤算~
女心と秋の空
よく言ったもんだと思う。マスクの場合、自宅が社会主義国家で独裁政権だから、総裁の気持ち一つでマスクの扱いは変わる。
これがまるで先が読めず、唐突にご機嫌が変わり、怒られる。よく亭主関白なんて言葉もあるが、どうやればそういう状況下にいけるのか俺には分からない。
総裁のお気持ち同様、秋の空模様もコロコロ変わるもので、今週にしても東京競馬場は雨予報がなかったのに雨が降ったり、天気が安定しない中での競馬だった。
ある程度天気予報を見て、降水量や風速を見ながら予想するとはいえ、こっちの思った以上に雨が降ってきたり、実は晴れたりと、秋の天気は難しい。
今週末の阪神競馬場の天気予報も週の初めからずっと見ていたんだけど、何度も変わっていた。思ったより降水量が少ないのではないかという話になったり、実は朝方しか降らないのではという予報になったり、天気予報に一喜一憂した一週間だったよ。
なにせ天気が変われば馬場も変わる。雨、風によって有利なポジション、有利な馬場は変わってくるのはもはや競馬の基本のキ。
秋華賞の舞台である阪神競馬場は、土曜夜にこちらが思っていた以上に雨が降ったようで、加えて日曜は北からの強風の予報だったことから、どういう馬場が出てくるのか、メインレースまでの芝レースを見ながら探っていくしかなかった。
ジョッキーも同様。一部にはまったく考えていないような進路を取る誰かさんや誰かさんもいるが、意識が高いリーディング上位のジョッキーは馬場に対する意識も強い。
早朝起きて、コースを歩いて、馬場を把握する。トップがこの作業をやっていたら、そりゃ勝つよ。今年も100勝以上している福永祐一もそんな一人。たぶん現役で一番馬場を考え、ポジショニングを研究していると思う。
だからこそこういう、朝方まで雨が降って再度馬場読みを求められた時は福永の動きを追うのも有効な手段だったりする。
マスクは序盤、中盤のレースを見て、風向きなどからワンターンだと外伸び外差し有利、一周コースだと内が使えるという見立てで秋華賞に臨んだのだが、この考えに至ったのは、それまでの福永の動きによるところもある。
これは日曜の阪神6R芝2000m。1枚目が向正面で、2枚目が直線。福永騎乗の白グロリアムンディは、最内スタートから内を通り、直線でも内目に進路を選んでいる。
逃げた赤アナゴサンがそのまま残って2着だったように、この6Rでは内が有効に使えていた。
対して、こちらは10R西宮S芝1800m。外回り。福永騎乗の黄ジェラルディーナは3、4コーナーでも外を回り、直線も進路は外。
もちろん馬のタイプも考慮された進路取りではあるが、6Rの内回りではインを手放さなかったのに、外回りだった10Rで堂々と外を回した点は非常に気になっていた。
アナゴサンが逃げ粘ったこと、同じレースで外々を回したディヴィーナが最後止まったことから、内回りはまだイン、そんな思考に至ったわけ。
しかも秋華賞は断然人気のソダシが内枠4番を引いてきた。
過去のソダシの好走レースの回顧を読んでくれれば分かるが、ソダシは強力な先行馬らしく、自身の後ろにいる馬を連れてきやすい。桜花賞のファインルージュなんかがいい例。
福永が6Rでインを使っているように、内回りはインも使えて、ソダシは内枠。これはソダシの後ろが今回も有効なポジションになるのではないか、買回顧も書きやすいレースになるのではないか、というのがマスクのレース前の読みだった。
ところがフタを開けてみると、今年の秋華賞は複数の要素が絡み合い、競馬の難しさを再確認させるレースとなった。
ソダシの敗因、福永の誤算を取り上げながら、今年の秋華賞に対する理解を深めていこう。
●秋華賞 出走馬
灰 ①スルーセブンシーズ 大野
白 ②ステラリア 武豊
桃 ③クールキャット 和田竜
黒 ④ソダシ 吉田隼
赤 ⑤エイシンヒテン 松若
黄 ⑨アンドヴァラナウト 福永
水 ⑩アールドヴィーヴル 松山
緑 ⑫アカイトリノムスメ 戸崎
茶 ⑬ホウオウイクセル 丸田
橙 ⑭ファインルージュ ルメール
スタート直後。報道にあった、ソダシが暴れて歯を折った直後だね。中継には映っていたんだが、パトロールは白ソダシが一暴れした後からしか映してないため、ソダシの歯を折った瞬間が映っていない。
確かにソダシはゲートの中で自身から見て左側にモタれて、潜ろうとしていた。それはレース中継で確認している。その際のケガ。これはもう不運としか言いようがないし、そもそも潜ろうとしたのが原因。
昔ソダシの母ブチコが、ゲートで暴れて競走除外を繰り返した過去があるが、血は争えないね。メイケイエールといいソダシといい、シラユキヒメの気の悪さの遺伝は難しい。
外に目を移すと、茶ホウオウイクセルが、ゲートが開いた瞬間に思い切り座り込む形になっている。こちらはルーラーシップ産駒。血は争えないね。
出遅れた茶ホウオウイクセルが一気に内を目指して走ったように、やはり内の状態は悪くないんだよな。他のジョッキーも内を離れようとする素振りはない。
内から赤エイシンヒテンがハナを切りに行こうとする。
黒ソダシはゲートの中で暴れて若干立ち遅れたとはいえ、行き脚は速い馬だから、スタートから200mほどですでにインの好位を確保している。
そして真ん中ほど、黄アンドヴァラナウトの福永が一気に内を目指していることも分かる。
●桜花賞を振り返る~暴れ馬が作り出したサバイバルと、枠順の作り出した運命~
https://note.com/keiba_maskman/n/n28820282a95b?magazine_key=m7842050bb22c
こちらは桜花賞の振り返りだが、勝った黒ソダシの真後ろに3着白ファインルージュがつけている。この時ファインルージュに騎乗したのが福永。福永は『ソダシの後ろの優位性』を身を持って知っている。
枠の並び的にも福永はスタートさえ決めれば、ソダシの後ろに入れる、そういう予定だったのだと思うよ。今回も意識的な動きだった。
内に寄って行った黄アンドヴァラナウト福永は、1周目ゴール前までに黒ソダシの後ろを確保した。たぶんここまで、福永は完璧だったと自分でも思っていたのではないかな。何一つミスなくソダシの真後ろに入れたわけだからね。
この時点で、外にいる水アールドヴィーヴル、緑アカイトリノムスメより、圧倒的にアンドヴァラナウトのほうがポジションがいい。
先ほど書いたように、ホウオウイクセルが内ラチ沿いにすぐ寄せていくくらい内は使える。内が走れるのであれば単純に考えて内を回るのはプラス。全て福永のプラン通り。そのはずだった。
内回りのフルゲートは難しいよな。
これは1コーナー。白ステラリアがラチ沿いのポジションをキープしようとしたところ、外にいたスライリーがラチ沿いに入ってきたことで頭を上げ、下がる不利を受けてしまったんだ。
フルゲートの内回りGIで内がゴチャつかないことなんて稀。外を回りたくない馬が内を締めてきたり、締められたくない内ラチ沿いの馬が抵抗したり、絶対ゴチャつく。
前にいた黄アンドヴァラナウトも、本来だったら黒ソダシの真後ろをずっとキープしていたかったと思うよ。だってソダシの後ろはべスポジなんだから。
ところがアンドヴァラナウトは1コーナー手前でちょっと掛かってしまったんだよ。パドック見ていた際に租界にも書いたように、アンドヴァラナウトは馬体は良くてもテンションは高めだった。間隔が狭まった分だろうね。
しかも灰スリーセブンシーズが引かず、外前を先行してきたアールドヴィーヴルも引かず、ここで強引にアンドヴァラナウトが先行したらより掛かる可能性がある。無理できない局面だったと思う。
これによってアンドヴァラナウトのポジションが、ソダシの後ろから1列後ろに下がってしまった。キープしていてもより掛かった可能性があるわけで、どっちが正解だったかは断言しにくい。
向正面入口、正面から見るとこんな感じだ。
黄アンドヴァラナウト福永の理想としては、黒ソダシの後ろ、つまり灰スルーセブンシーズか水アールドヴィーヴルのポジションにいたかったはず。
この時点で緑アカイトリノムスメは難しいポジションだったと思う。内が走れる馬場で、外外を回り続けたくはない。しかも前にはアールドヴィーヴル。アールドが動かなければ更に外を回ることになる。
結果的にこのアールドヴィーヴル先行策がレースを分けた部分もあるね。裏話にも書いたように、この馬の課題は一瞬で反応できないところ。言い方を変えるとちょっとズブいんだよな。
内回りで後ろから行ってしまえば、反応が鈍いと更に外々を回される危険性がある。松山はレース後「スタート良く、リズム良く運べて、折り合いもつきました」と話していたように、スタートが決まったら前というプランだったのだと思うよ。
アールドヴィーヴルが先行したことが、後々になってよりレースに影響を与えるのだが、それは後程。
これは3コーナー手前。阪神内回り芝2000mにおいて、残り1000m地点にあたる。隊列が向正面入口部分とまるで変わっていない。誰も動かず3コーナーまでやってきてしまった。
●21年秋華賞
12.8-11.6-12.2-12.3-12.3-12.0-11.5-11.3-12.3-12.9
太字は前半1000m部分。12秒以上のラップが続いて、ペースが遅くなっている。ペースが遅いと誰かまくるものだが、今回、まくる候補だった桃クールキャットが内枠3番を引いちゃったんだよね。
跳びが大きいクールキャットは外からマイペースに動いていきたい。ところが内枠を引いてしまったおかげで、馬群の中で動けなくなっている。外の人気馬が誰か動かない限り、ペースは上がらない。
これは今年のオークス。オークスでは茶スライリーが外から動いて行ったことで、その後ろにいたユーバーレーベンあたりが外から動く形が取れた。
ところが今回はスライリーも内枠を引いて、内ラチ沿いで溜める戦法に出た。まくる担当が誰もいなくなってしまったんだ。
前半緩い流れになると、後半は当然速くなる。
●21年秋華賞
12.8-11.6-12.2-12.3-12.3-12.0-11.5-11.3-12.3-12.9
残り1000m、つまり3コーナー手前の地点からペースが一気に速くなっていった。
●過去3年の大阪杯ラップ
・19年 良 35.6
12.6-11.1-12.7-12.7-12.2-12.4-11.8-11.4-11.6-12.5
・20年 良 35.1
12.9-11.7-12.3-11.9-11.6-12.1-11.7-11.3-11.2-11.7
・21年 重 37.1
12.4-11.1-12.1-12.1-12.1-12.8-12.2-12.1-11.6-13.1
●21年秋華賞 34.8
12.8-11.6-12.2-12.3-12.3-12.0-11.5-11.3-12.3-12.9
太字の部分は残り1000m→残り400m。ここのタイムが過去3回の大阪杯より速いのだ。
大阪杯は古馬のトップクラスが集まるGIさ。しかも今回の秋華賞は、前夜から雨が降ったことで良馬場とはいえ緩く、力がいるタフな設定。
そんな状態の芝で、残り1000mから古馬GIより速いタイムが出た。厳しいよね。それまでスローだったのに、いきなりロングスパート勝負が始まってしまった。
逃げたエイシンヒテンがこの部分でペースを上げた理由は色々あるだろう。まずコース設定。
阪神の内回りって、他の内回りと違って、1・2コーナーは400m程度に対して3・4コーナーが600m近くあるように、後半のほうがコーナー半径が広いコース設定なんだよね。
図で見ると分かりやすい。3コーナーから4コーナーにかけてが広い分、スピードが落ちづらい。
加えて今年の秋華賞は強風だった。風向きは黒い矢印で示したように北風。秋華賞のあたりでは6~7m吹いていた記録が残っている。
まー、見事に3、4コーナーは追い風なんだよね。
もちろんエイシンヒテンが自分も残るために、前半スローを刻んだ分早めに動かしていった影響もある。それにしても12.0-11.5-11.3という3、4コーナーの速いラップが作られた一因は、この強烈な追い風と見ていいだろう。
●21年札幌記念 36.0
12.5-10.9-11.5-12.5-12.5-12.4-11.8-11.8-11.7-11.9
●21年秋華賞 34.8
12.8-11.6-12.2-12.3-12.3-12.0-11.5-11.3-12.3-12.9
コース形態が違うだけに単純な比較はしづらいところだが、今年、ソダシが勝った札幌記念の残り1000m→400mは36.0。秋華賞はそれより1.2秒も速い34.8。
馬場が超高速だったとはいえ、桜花賞を1:31.1で走破してしまうソダシは、フットワーク的にも本質はマイラー。ある程度ゆったり運んで直線を向けた札幌記念に対して、秋華賞はペースが動くタイミングが早過ぎた。
それでも逃げたエイシンヒテンが4着に粘っているだろうという声を頂戴しそうだが(すでに頂いている)、エイシンヒテンは『逃げている側』。自分でペースを作れている。自分のペースで動けている。
対して番手のソダシは自分でペースを作れておらず、『厳しいペースについていく側』。いわゆる脚を使わせられる側だ。
よく武さんがペースを締めて後続に脚を使わせ、削るような逃げ方をする。それに近く、ついていく側のソダシは余計に厳しかった。
前夜Twitterでもふれたように、今開催の阪神芝は上がりが掛かり気味。土曜もそうだった。12月末まで3カ月開催を続けるために造園課も馬場を柔らかく作ったんだろう。
ただでさえ緩くタフな馬場なのに、前夜に雨。より緩い馬場になって、強風まで吹くハードなコンディションで、スパートポイントまで早くなってしまった。ソダシにとっては三重苦みたいな展開と言っていい。これに加えて歯が折れていたとまできた。
無理じゃん?
そうして厳しいラップを踏んでいたソダシの後ろで、困っていたジョッキーがいる。
黄アンドヴァラナウトの福永祐一さんだ。3コーナーまでスローで、囲まれたまま勝負どころを迎えてしまった。
4コーナー手前で考えれる進路は2択。内の赤エイシンヒテンの後ろか、外の黒ソダシの後ろか。
ここで福永が警戒していたのは赤エイシンヒテンの動きだろう。
これはローズS。黄エイシンヒテンが道中からずっと外に張る素振りを見せていて、4コーナーから我慢できずに、曲がれず外に吹っ飛んでいる。松若が何度も後方を確認しているのだが、何頭かの進路に影響を与えてしまった。
緑アンドヴァラナウトも、エイシンヒテンがこんなに外にやってこなければもっと馬場の真ん中くらいを突いていたはず。
エイシンヒテンは口向きがおかしいことで、外に張る可能性がある、それはたぶん前走VTR見てるジョッキーみんな頭に入れていただろう。
福永レベルの研究熱心なジョッキーだと、たぶん2走前の札幌・藻岩山特別も見ているはず。右回りの札幌でも、4コーナーから口向きが怪しかった。だから今回、エイシンヒテンの進路選択として2パターン考えられたんだ。
A.右回りだと口向きがマシで外にそんなに膨れない
B.左回り同様、右回りも外に吹っ飛んでいくレベルに酷くなっている
AになるかBになるかは4コーナー出口になってみないと分からない。
通常この形だと、灰スルーセブンシーズが下がらなければ、内の進路は開かない。対して外に進路を取れば、黒ソダシ、水アールドヴィーヴルと実力馬が並んでいることから進路が開く可能性が高い。
ただ外に進路を取った場合、赤エイシンヒテンが外に飛んでしまうと、黒ソダシらと共に巻き込まれ事故を起こすかもしれない。
悩むよなあ。一番いいのは、自分の前を走っている黒ソダシがエイシンヒテンを早めに捕まえに行ってくれることなんだけど、前記のようにソダシは厳しい流れを追走している最中で、手応えがあまり良くない。
「これソダシ危ないんちゃう…?」という思考から、内と外、福永はどちらかに進路を取るか相当迷ったと思うよ。
黒ソダシがなかなかペースアップしないこともあって、その後ろが渋滞し始める。黄アンドヴァラナウトもそうだが、その後ろ、黒丸で囲んだ部分の馬たちも、前が動けないんだから自分たちも動けない。辛い。
そうしているうちに、このラインに入っていない緑アカイトリノムスメが外から上がってきた。
逆サイドから見るとこんな感じ。黄アンドヴァラナウトは動きたくても、水アールドヴィーヴルの反応が鈍過ぎて動けないことにより、一瞬進路がなくなっている。
その間に外から緑アカイトリノムスメが上がってこれた。アカイトリノムスメにとってはラッキーだよね。内が勝手に渋滞してるんだもん。
序盤を思い出してほしい。当初、黒ソダシの真後ろの絶好のポジションはアンドヴァラナウトがいたはずだ。ところがポジションを取りに行ったところで少し掛かり、1列下がったことで、アンドのポジションはアールドヴィーヴルの斜め後ろというポジションになってしまった。
その影響が出てしまったのがここ。まー、結果論ではある。アールドヴィーヴルがもっと反応スムーズだったらこうはなっていない。もしポジション取りに行って、アールドの前に入ったとしても、掛かって制御できなくなっていたかもしれない。
難しいよ、競馬は。1つの動きでその先の未来が大きく変わってきてしまう。
直線入口。黄アンドヴァラナウトの福永は完全に進路を内に絞った。内見てるもんね(笑)
アールドヴィーヴルやソダシの反応が悪い以上、外を回るとよりロスとなるか、前が詰まる可能性がある。
だったら赤エイシンヒテンが外に飛んでいく可能性も考慮して内を突いたほうがいい。これはもう、この状況においてベストな作戦だったと思うよ。選択肢が少なすぎる。
仮に赤エイシンヒテンが外に飛んでいかなくても、内ラチ沿いをぴったり回れるほどの口向きではないと藻岩山特別を見て確信していたんだろう。逃げ馬の口向きが難しいと後続の判断が難しくなるんだよなあ…
●中京記念を振り返る~頭をよぎる『あのホープフルS』~
https://note.com/keiba_maskman/n/nfa9bb41f8b67?magazine_key=m7842050bb22c
余談だが、逃げ馬が外に張るという例は今年他にもある。今年の中京記念もそうだった。水ディアンドルが曲がれず外に飛び、内にいた赤アンドラステの進路がガラ空きになったレースだ。
アンドヴァラナウト福永はこのプランを想定していたのだろう。内にこだわるか、外に出すか、難しいよなあ…今回の福永の進路取りはさすがに責められない。
結果的に、赤エイシンヒテンは外に飛ばず、内ラチ沿いに戻ってくる。この画像からもなんとなく口向きが怪しい雰囲気はあるけどね。
ただ前の黒ソダシはもう伸びてないし、左前の水アールドヴィーヴルは未だに反応が鈍くて動かない。もう進路がソダシとエイシンヒテンの間しかない。そんなに広い進路ではないんだ。
そうしているうちに外のほうがフタをするように伸びてきた。
黄アンドヴァラナウトの福永はレース後「ソダシを交わす時の脚はすごく速く、勝ったと思いましたが…」と話している。ソダシを交わした時は速かったんだけどね…それまでの3、4コーナーの過程が良くなかった。
ただその後「成長途中の中、やれることを証明してくれましたし、来年がまた楽しみです」と話しているように、まだこの馬自身が完成されていない。この完成度で、窮屈な競馬で3着。まだ脚に弱いところがあるだけに、解消されてくればもっと走れるね。
母系の成長力は日本トップクラス。あと二回り大きくなれば、来年のGIでも面白い競馬が見られそうだよ。ワンターンだとより良さそう。
2着橙ファインルージュは3コーナーから内が渋滞気味だったことも良かった。本来アウトアウトは厳しい馬場とはいえ、内がやや自滅気味になってくれたこと、緑アカイトリノムスメが動いてくれたことが大きかった。
さすがにアウトアウトをやった分、最後に止まっている。このタフな馬場で大外を回っては正直誰だって止まるし、内容としてはかなり濃いほうだ。2000mは十分こなせるけど、本質的にはマイル~1800が一番いいのだろうね。
ちょっと馬体が変わってきたな。トレセンで見ていても全体的に肉がついてパワーアップしてきた。来年になればもっとマイラーっぽくなる可能性もあるが、もう少し軽い2000なら能力でこなしてきそうな感触を受ける。
4着エイシンヒテンは3コーナーからペースアップしたことを考えればよく粘ったと言っていい。ただ単騎だったこと、そもそも3コーナーまでスローだったことを考えると、その貯金で残れたとも言える。
最近使うたびに口向きが悪くなっている。今回のレースを見る限り、右回りのほうが断然いい。ここまでくると陣営も安易に左回りは使ってこないだろうが、もしエイシンヒテンが左回りを使ってきたら、外に飛んで内がガラ空きになりイン差しになる可能性があることも考慮しておきたい。
まるで触れていないが、5着スライリーは画像を見てもらえれば分かるように、道中内ラチ沿いを走れている。ロスを最小限に抑えた競馬ができた結果の5着で、外を回っていた上位とは明確に差がある。
ただ、以前はこういう競馬ができなかった馬。内で溜める競馬ができた=選択肢が増えたと見ていいだろう。中山牝馬Sの内枠とか、悪くないんじゃないかな。
6着白ステラリアは最後に外から差してきた。それだけに、前記通り1コーナーでスライリーに強引に前に入られてしまったのが痛かった。あれはちょっと強引。
使い詰めるとオークスのように出がらしになることが分かっているため、狙えるのは休み明け1、2戦目が中心かな、現状。少し上がりが掛かる芝だと、この馬なかなか走る。過去の数字も優秀。福島牝馬Sにそんなに重くない斤量で出てきてくれないか。
7着同着アールドヴィーヴルは今回先行したものの、相変わらず反応が鈍い。広いコースで次第にエンジンをかけたほうがいいんだろうな。心肺機能は素晴らしいものがあるんだが、体がまだ素質に追い付いていない。
いっそのこと、ここで休養入りしてほしい。中京2000の愛知杯や阪神牝馬Sあたりに休み明け、450kgくらいで出てくれればチャンスあると思う。今は細すぎる。エサをモリモリ食べて、450は欲しい。
同じく7着アナザーリリックも走る馬。今回は枠が悪かった。どうしても後手に回ってしまう。こちらもさりげなく力をつけている馬で、2000も持つのは十分分かった。現状ワンターンのほうがよりいいかな。1800のワンターン、来年の府中牝馬Sあたりでいかがか。
13着ユーバーレーベンは裏話などにも書いたように、まだデキが弱い。今回も8割くらいだった。パドック見てまだと分かるレベル。ただ状況を考えると、この短期間によくここまで仕上がったなと思えるほどで、再度95くらいまで持ってくれば違う。
エリザベスだと中3週。たぶんこの短期間で95には戻らないはずで、今年勝つには展開の助けが欲しいが、来年無事に使えれば、馬場次第でエリザベス女王杯でも面白いと思う。
さて、ここまで書いてきて、大して勝ったアカイトリノムスメに触れていない。勝ったのにね。ごめんね。話の都合上どうしても触れる機会が少なかった。
桜花賞はソダシの後ろをファインルージュに取られて4着。オークスはソダシの後ろを取れたのに、ソダシが距離もあって伸びきれず2着。なんとも不運なレースが続いていただけに、外から動いて自力で勝ち切ったことに感動している。
もちろん序盤スローを先行できた点が良かったとはいえ、形の上ではアウトアウト。直行ローテで使い減りしていなかったのも良かったのだろうし、馬自身の成長はこちらの思った以上だった。
体重面が変わっていないことからどこまで成長しているか掴みにくいタイプなんだが、父も体重は変わらなかった。父寄りなのかもしれないね。母のアパパネと違って、こっちは全体的な点数が平均して高いタイプ。往々にして牡馬相手のGIだと通用しにくいタイプだが、競馬が上手い。今後も強い先行馬が近くにいる時に中心視したいところ。
そして10着に負けたソダシだ。
デキは良かった。裏話通り、バツグンに良かった桜花賞ほどではないとしても95くらいはあったと思う。
札幌記念と違って今回はロンスパの2000mになったことなどを踏まえると、2000は持つけど持たない、その時々の条件によるというタイプなんだろうね。完全平坦の札幌をこなしても、坂2度超える阪神2000のロンスパだと手応えが悪くなったあたり、この距離だと条件を選ぶ。
母親がゲート難で除外を食らっていること、母系がお馴染みの気性難であることを考えると、歯を折ったなどレース前のゲートの動きや、隼人の「今日はポケットから出たくなかったり、ゲートを苦しがるそぶりがあったり、競馬を嫌がるそぶりがあったかもしれません」というコメント通り、ちょっとずつ、母系が出てきた可能性はある。
これまでのレースから本当に頭がいいのは伝わってくる。頭がいい馬はレース=苦しいものとしてやめたがる部分があるから、まず今後課題になっていくのは競馬に対する気持ちの持っていき方。
加えて細かな条件設定だろう。歩き方などを見てもパワー寄りで、フットワーク的にも理想はマイル付近。順調なら武蔵野Sを使ってほしかったが、歯となれば武蔵野には間に合わない。直行でフェブラリーもありそうな展開だ。
ダートのマイルなんていかにも合いそうだが、気持ちが減退しつつある今の段階で、内枠なんぞ引いて砂被ったら競馬を投げる可能性のほうが高い。フェブラリーに直行するなら外枠が欲しい。
元々完成度が高いとはいえ、もう一段階上がありそうな緩さもあるから、心身のバランスが取れたままいけるかどうかに尽きそう。精神面が悪化しなければヴィクトリアマイルでも楽しみ。
2000は、軽い馬場の時の天皇賞あたりなら…という感じ。金鯱賞とか出てこられると条件次第になりそう。少なくとも今年の金鯱賞のような馬場だったら×。なるべく平坦寄りであってほしい。
ツヨカワ系アイドルとして白毛の歴史を塗り変えてきた馬だが、長い競走馬生活、どこかでこういう躓きはある。心身共に最初から最後までずっとマックスのまま引退する馬なんてこの世に存在しない。
ここから精神面が競馬に向くか、向かないか。今の段階では何とも言えないが、一競馬ファンとして、また新しい白毛の歴史を見たい。
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