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【連続不定期更新小説】どうして僕らは分けてしまうのだろう -信念は行動とともにあれ-

-あらすじ-
数年前、感染力の強い病が世界中に流行した。その後、感染が収束した後にもオンラインツールを積極的に活用する人々と、病が流行する以前のようにオフライン重視の生活に戻る人々に分かれるようになった。
この時代の人々はどのように働き、生きているのだろうか?

エピローグ 僕らは今日も仕事に向き合う

社内のフロアで、俺はキーボードを叩いて提案書を作成している。
在宅勤務も可能だが、集中して仕事をしたいときは、出社してパソコンに向き合う方が性に合っているようだ。前職では、オンライン枠の雇用であったため、自宅で仕事をすることが大半であった。でも、それは仕事をするのではなく、ダラダラと作業をこなすだけだったのかもしれない。


作業の合間に同じ部署にいる社員から声をかけられる。
「阿久津さん、このあいだの地方食品メーカーのオンライン対応の件、うまくいきましたね。あの会社の社長とお礼のオンライン会食できましたし。」
「いえいえ。こちらこそお手伝いありがとうございました。前職が同じ業界で、オンライン系の部署がどんなことしているかわかっていたので。」と応じる。

誰かから呼びかけられて、自分の意見を発する。今では当たり前にある、そんなことが、以前の職場の在宅勤務ではなかった。自分の名前を呼ばれる声を聞くこともなく、自分は何者でもなかったのかもしれない。

前の会社を転職してから一年ほどほど経つ。
今俺は、企業や住民のオンライン・オフライン双方の対応を支援する会社で働いている。

前の会社では、異動願いのフォーマットを無視して書類を提出した。
オンライン・オフラインで分けれた部署構成となっているのに、どちらも担当できる仕事をしたいという旨を記した気がする。
当然俺はこっぴどく怒られ、その後退職願を出した。
でも、俺はそれを心のどこかで望んでいたかもしれない。怒られることではなく、以前の会社を去ることをだ。


俺はオン派、オフ派と分けることも分けられることも嫌いだった。
けれども生きていると日々選択しろとつきつけられる。オン派かオフ派か。自分の属性を。所属先を。グループを。
人は誰しも他者を、どこかに属するかで分けてしまう。分けることは人生と不可分だ。
それでも、分けた結果を決めつけることはしたくない。自分も。他人も。


その思いをもって俺は今日も仕事をする。

(終わり)

数あるコンテンツのなかから、本作を手にとって頂きまして、ありがとうございます!

本作は、今の世界と少し似ている、何年か先の未来を舞台にした小説です!

一話目はこちらです!


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