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【詩】時計店

昔 私が住んでいた町にも
大きな時計店があった

塵一つ見えない
ショーウィンドーの中では
腕時計たちが
誰かの時を刻むのを
待ちながら 輝いていた

店の奥の 
ガラス張りの小部屋では
薄暗い裸電球の下
腕時計を修理する人がいた
何故 あんなに薄暗い所で
細か過ぎる仕事を
していたのだろう

いや あの薄暗い小部屋は
私が「創った」記憶の
映像かもしれない
あの時計店の近くにあった
幼稚園の制服を着た私は
あまりに 遠いのだから

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