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うちの母

今朝、キャベツ炒めを食べたので、これを書くことにした。

炒めたキャベツは甘い。今朝は焦げて真っ黒になってしまった部分も食べたけどやっぱり甘かった。

私の母は料理をしない。なので、子供の頃から歩いて20分ほどの祖母の家で夕飯を食べるのが日課だった。

でも、幼稚園のお弁当は作ってくれた。

今でもよく覚えている。金属製の(子供だったから分からなかったけれど多分ステンレス)バンビの絵がついているお弁当箱。

冬場、幼稚園に着くとまずお弁当箱を先生に預ける。すると先生たちはそれを保温庫にいれる。そしてお昼の時間になるとほんのりと温かいお弁当箱をそれぞれに配ってくれる。

お腹が空いていたからなのか、お弁当箱の中が楽しみだったからなのかは分からないけれど、とにかくお弁当箱の蓋を開ける瞬間が大好きだった。

開けた瞬間に漂うなんとも言えないごはんとおかずが混ざった匂い。大好きだった。

そしてたまぁに、実にたまぁに入っている、炒めた芽キャベツが大好きだった。巷にあふれているあのキャベツと全く同じ。色も形も葉っぱのくるみ具合も。なのに、なのに、一口で食べれてしまう!そんなすごいことができるなんて!

母の芽キャベツはいつも二つに割ってあった。なんの変哲もない、単に包丁で二つに切っただけ。その断面にも見惚れた。葉っぱが幾重にもなっている。真ん中に種があるわけでもない。ただただ葉っぱが重なっているだけ。葉っぱはどうやってこんな風にうまいこと重なっていくのかと、出来上がる姿が不思議で、食べてしまうのが惜しくて仕方なかった。だからいつもひとつ残しておいた。なるべく見ないように・・・。

そして最後、他のものを全て食べ終わってしまうと、そーっと、恐る恐る、なくなってしまう寂しさをこらえて、口に入れた。

やっぱりおいしい。甘くてホワッと柔らかい葉っぱの塊。

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