娘の冒険は出会いのきっかけをくれる

こんにちは。

どうやら娘のマイブームに『まる』がきている様子。散歩中も丸い形を探しては、「あれなーに?」と指さして教えてくれます。マンホール、信号、窓、いろんな丸があるけれど、わたしは娘が驚いたときに見せる丸々とした瞳が一番好きです。

さて、いつもより早い時間に保育園へ迎えにいった帰り道のこと。いつもは閉店時間をすぎて閉まっている商店街のお店も、まだチラホラと開いていた。日頃とはちがう帰り道の景色に、娘は少し興奮ぎみ。そこで見つけたのが店先に『まる』い窓をあしらったメガネ屋さん。

「まるいところいく!」と、冒険心が出てきた。一目散に駆け出し、重いガラスの扉を押して、なんとか入ろうとする娘。わたしも、この街に越してきてから、入ったことのないお店に、少し緊張しながら店内の様子を伺う。

メガネや時計、宝石がショーケースに並んでいる。お客さんがひとり、おそらく時計の修理を依頼している様子で、カウンター越しにベテランの老紳士が対応していた。その傍らで、上品な奥様が笑顔を添えていた。

思いきって、扉を押す娘に加勢し、店内へ。けれど、買うつもりはないので、「娘が見たいというので、少しいいですか?」と、遠慮しながら声をかけた。「どうぞどうぞ」と迎え入れ、娘にも「いらっしゃいませ」と挨拶してくださった。

キラキラと並ぶメガネに、娘はしばし目を向けて“ほほう”という顔。ばーばがかけている眼鏡に似た商品を指し、「ばーばとおんなじ」と小さくつぶやく。それから店内をぐるりと見渡して、やはり次の『まる』を見つけた。二階へと続く階段の途中に丸い窓がついていた。

「いまは二階は開けていないけど、遊びに行っておいで」と許しをもらって、娘の冒険が続く。ママは来ないでと手をふり払い、丸い窓から顔を出してニコニコ手を振っている。その後、階段を何度も往復して、店内の装飾を吟味。商談用の椅子にドシンと居座ってみたりする。コロコロと興味が変わる娘に、店主は「好きにしていいよ」と付き合ってくださる。

奥様とは、保育園の帰りであること、娘は丸が好きなこと、この街に数年前に越してきたこと、そんな世間話をした。満足した娘を連れて店を出たとき、「クリスマスにはキレイに飾り付けをして待ってるから、また遊びにおいで」と声をかけてくれた。

仕事の都合で大阪から東京に越してきたとき、23区内ともなれば都会の殺伐としたイメージから、近所や地域との交流なんて持てないだろうと諦めていた。でも、子供が生まれてからは、子供を通じて近所の顔見知りや挨拶を交わす人が増え、わたしのイメージは誤解であったと知った。

考えてみれば、この街は、わたしにとっては知らない街だけれど、娘にとっては自分が育った地元になる。メガネ屋さんとの出会いも、近所の強面のおじさんが実は優しい人だと知ったのも、お肉屋さんがおまけしてくれるようになったのも、すべて娘がきっかけをくれたおかげ。娘は、自ら自分の街を知ろうとしている。

そんな娘の冒険に乗っかって、この街の好きなところを見つけるのが、ちょっと楽しみになってきたところです。


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