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一大陸周遊記 ②ミュンヘン(ドイツ)

Day3

ランドリーでの出会い

2時間に1回程度の頻度でバスが止まり、バス停名を告げる車内放送が大音量で流れるという厳しい環境下だったが、なんとかある程度眠ることができた。とはいえ当然睡眠不足。

7時ごろにミュンヘンに到着。寒い。まずはコインランドリーへ行った。
使い方は難しかったが、検索などを駆使しながら何とか洗濯と乾燥を行う。

洗濯機を回しながらぼーっとしていたら、なんと同年代の日本人が登場。彼は大学で街づくりなどについて学んでいるらしく、ヨーロッパの街並みを見に来たそう。本当は二人で来ていたのだが、もう一人は体調不良&ホームシックに悩まされ、このタイミングで緊急帰国するらしい。
お互い残り10日以上ある行程を一人で旅することになり、激励しあってお別れ。無事に日本に帰ってきていることを願う。

挫折

ランドリーでの会話は、自分にかなり後ろ向きな感情をもたらした。断っておくが、出会った彼はとてもいい人で、話も弾んだし何なら少し元気すら出た。にもかかわらず、その後には人生史上最大級のネガティブな時間がやってきた。

その理由は、「来なければよかった」と思っている自分に気づいたから。

「あれだけ行きたいと思っていたヨーロッパに来ることができて嬉しい」
「自分は旅行を楽しんでいる」
「たった一人でヨーロッパに適応できている」

これらを自己暗示のように自分に言い聞かせ続けてやっとミュンヘンに到着したタイミングで、ほんの少しだけ「来なければよかった」「帰りたい」と思ってしまった。というより、自分がずっとそう思っていたのだと気づいてしまった。
これはかなりダメージが大きかった。

いわゆる”病み”というやつ。

今思い返せば、睡眠と食事が足りていなかっただけで別に環境に適応できていないわけではなかった。だが、一度ここまでのダメージを負うとなかなか冷静ではいられなくなってしまうもの。
サッカーを見に来たはずなのに、目的を果たす前に帰りたくなっている現状を突き付けられ、本当に自分はサッカーが好きなのかすらわからなくなってしまった。

フロンターレの試合があったので一度空港へ行き、そこで見ようと思ったのだが、Wi-Fiが弱すぎて全く見られず。フロンターレは勝ったものの、さらにメンタルが削られた。

ずっとこの画面でクルクルしてた

その後はミュンヘン観光をあきらめ、ひたすら空港のベンチで仮眠。もちろんろくに寝られる環境ではないのだが、少しでも体力を回復したかった。
楽しいことやものが世界から消え失せたような感覚に陥りながら、必死に目を瞑った。

アリアンツ・アレーナ

何の足しにもならない昼寝(ほとんど寝られていない)を終え、空港を出る。本当に体調が悪くなってきて焦ったのだが、市内に向かう電車の中で爆睡し、何とか自分の身体をごまかした。
ミュンヘン中央駅のロッカーに荷物を預け、ミュンヘン最大の見どころ、マリエン広場へ。アリアンツ・アレーナの最寄り駅、Fröttmaning駅まではマリエン広場から電車で1本。20分ほどで着いた。

Fröttmaning駅
ゲルト・ミュラー好きなんだよね

駅を出ると橋があり、その上からもう遠目にスタジアムが見える。まっすぐ歩いて10~15分ほど、ようやくスタジアムの中に入った。

自分の席に近いゲートにまっすぐ向かう。階段を駆け上がり、コンコースを突っ切ってゲートをくぐり、ピッチが見えた瞬間のことは、一生忘れない。スタジアム全体の迫力、ピッチの見易さ、赤が綺麗なアクセントになっている照明。
言葉にならない声が出た。

一生忘れない光景

数十分前まで何をする気力も湧かなかったのに、今は何でもできる気がした。どこへでも行ける気がした。
日本から遠く離れた、居場所がない国に、サッカーという自分のホームがあった。
何より、そう思えるくらい自分がサッカーが好きだったことが嬉しかった。ついさっきまで自分のサッカーに対する愛情を信じ切れなかった分、本当にほっとした。

なんだ、ちゃんとわくわくできるじゃん。
やっぱちゃんとサッカー好きなんだな。
来てよかった。

気づいたら涙がこぼれていた。
周りから見れば、試合開始まで1時間以上あるのに泣いているアジア人はさぞかし変だっただろうと思う。

まだ序盤とはいえブンデスリーガの頂上決戦と言っていい2チームの試合。レベルが高く、最高の試合だった。お互いの応援も気合が入っており、声援もブーイングも段違いの迫力だった。

引用:スポーツナビ

バイエルンゴール後のコール&レスポンスが楽しかったし、グリマルドのFKは圧巻だった。何より最終盤の点の取り合いがドラマチックだった。

綺麗すぎて思わず2,3分立ち止まって眺めた

ミュンヘンの夜

試合の興奮冷めやらぬまま、中央駅まで荷物を取りに戻る。無事に荷物を回収し、空港に向かう。24時になろうかという時間なので、電車には空港職員と思しき人がまばらに乗っている程度。空港駅の自販機と格闘してコーラを買って、昼に寝ていたベンチに戻る。

次の日にロンドンからマンチェスターに行くための電車のチケットを買おうとしたらSold outの表示が出ており不安になるも、調べてみたら駅の窓口でもチケットは売っているようなのでそこに行って交渉すれば何とかなるだろうと思い、横になった。

この日の寝床



おまけ
この動画、面白かったのでおすすめ。ドイツはどこも煙草の匂いがする。



次回はマンチェスター編、ポテチにまみれた2時間半の話。

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