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『ちょっと思い出しただけ』 ~恋の切なさ・美しさを描いた大作~

松井大悟監督の「ちょっと思い出しただけ」。2月中旬から公開されているこの映画であり、私もこの間鑑賞した。そんでとても良くて、皆にこの感想を共有したいので、書きます。

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この映画は恋愛を時間を遡りながら恋愛の切ない部分を繊細に映し出した映画。

とっっっってもよかった。なんかこれって良さの言語化をしようとすると中々に浅くなってしまって結局「エモい」とか「チルい」とかで済ましてしまう人が多いと思う。


これはそんなんで終わらしちゃいけない気がするな。ってことnoteに描いている訳なんですが。


感想

本当によかった。まず伊藤沙莉と池松壮亮の2人の演技が「日常の中の些細な感情の変化」を表現していてとてもうまい。足を怪我した部分のタクシー内の伊藤沙莉の演技とか、そこから出会いの部分のシーンとかの心のモチベの違いってのが一瞬で伝わるし池松壮亮も男性特有の悩みというか何か夢を持っているからの苦悩を表すのがわかりやすくて全くそこの部分でストレスなしでみることができたな。


恋愛でフラれた人なら誰でもわかると思うんだけど、本当に好きな人にフラれた後は、悲しくなって他の人の優しさにとても感慨深くなってしまう。葉はそんな感じで、目の前の幸せと「妥協」によって切なさを抱えながら人生を歩んでいく。そんなテーマも元にストーリーを読み解くととても面白い。


自分が好きだったのはニューヨーク屋敷の演技。正直これで映画の存在を知って見に行ったから自分の中ではとても注目をしていたのだけれど、本当によかった。ニューヨークのYouTubeでの屋敷と松井大悟監督の対談にあったように屋敷は「クズそうに見えて根はとてもいい人」っていう部分があっていて、演技も少しくさいように感じたけど、それも相まって違和感なくみることができた。


ジェンガの謎?

少し含みがあったように感じた、途中で葉とマスターが行っていたジェンガ。

これは個人的な解釈なのだけれど、ジェンガは自分の人生を表していると感じた。今まで積み上げてきた人生の中で、それを土台にして、新たな人生を積み上げていく。しかし、その新たな経験は今まで自分が行ってきた経験に基づく土台から新たな考えを編み出す。新たな考えは0からは生まれない。今までの自分の培ってきた人生からでしか生み出せないのである。

葉はそれを思い出しては(過去の恋愛や馴れ初め)それを元に新たな人生を踏み出していく。そんなメッセージが込められており、それを元に、2人は新たな人生を踏み出し、過去のことを「ちょっと思い出して」、成長する。こんな繊細な部分を美しく描いた名作である。

ぜひ皆さん見てください。



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