見出し画像

起業の天才!―江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男 - 感想・引用

著者プロフィール: 大西 康之
1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)などがある。

起業の天才!―江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男

今回の記事は、現在株式時価総額国内10位まで成長したベンチャー企業リクルートを創業した江副浩正さんの伝記です。江副さんがどのような考えで起業に至り、どのように会社を成長させた来たのかが読める興味深い一冊です。

この記事では、本の要約をするのではなく、輪読会を行うにあたり、私が読んだ感想や本からの学び、一部引用を紹介するものです。輪読会用のメモなので、一般的な記事のようにきちんと整理されているわけではないのでご了承ください。

感想

  • 本のタイトルにある通り、天才そのものだというのが本を読んでの感想。


  • 自分には才能がない、カリスマ性がないと認識しながらも、優秀な人を惹きつけ続け、10兆円を超える企業にまでなった。

    • 採用狂と言われるだけ会って、その手腕は優れていたし、実際に優秀な人が集まり続けていた。

    • また、リーダーシップも強力で、方向性をダイレクトに変えている。


  • 未来を見通す力が非常に高い。この先見性はどこから来ているのか?

    • リクルートが情報会社そのものだけど、情報通信の未来に関する情報源というのはどこだったのだろうか?

    • そして、その先見性に基づく、決断力もすごい。


  • 一石二鳥、一石三鳥の考え方は好き。合理性の権化でもある。

    • 優秀な人間は、一つのSolutionで複数のProblemを同時に解決すると言われているが、まさにその権化のような存在だと思った。


  • リクルート事件は残念だったけど、「法律に触れなければ何をしてもよい」という考え方の人が結局は辿る運命なのだろうなと思った。

    • 一方で、イノベーションはならず者や薄い倫理観の天才が起こしていくものでもあるから、ここの解釈は難しい。

    • 個人的には、倫理観をもって、芯や根幹、達成したいビジョン、動機が倫理的・道徳的なものであるべきだと思う。

    • 稲盛さんが江副さんのことを見抜いて、第二電電に入れなかったのはgood jobだと思う。


  • やはり上の世代・先輩が周りにいるという状況がいかに貴重かと感じた。

    • ネットワークを紹介する、ビジネス的なアドバイスをするということも非常に大事だが、哲学を説いてくれる人というのは非常に重要。

    • 人生は自分の哲学で決まる、自分の行きたい方向に進んでいく。


  • リクルート事件がなく、リクルートが日本の情報革命を牽引していく未来が見たかった。

    • 日本の風土も良くなかったし、江副さん本人の哲学もよろしくなかった。


  • リクルートは平成の会社という印象だったが、結構歴史のある昭和の会社なのだなと。


  • 社員に圧倒的な当事者意識を持たせるというのがうまい。リクルートの強みはここだと思う。

引用

江副さんの経営は常に目的合理的で「資本主義そのもの」でした。江副さんを筆頭に東大で心理学を学んだ人たちが作ったリクルートは、極めて科学的な会社であり、その後の日本のベンチャー企業の原型になりました。

江副さんがダークサイドに堕ちてしまったのは、彼を乗りこなす騎手、つまりまともなエンジェル投資家が日本にいなかったからです。

リクルートが他のベンチャーと異なるのは、江副さんという強烈なキャラクターの創業者が去った後も、会社として成長し続けたところです。理論が好きな江副さんは、創業メンバーと一緒に、会社が成長し続ける「仕組み」を作りました。

江副は、本人すら気づいていない才能を見抜き、リクルートの中でその才能を存分に発揮させた。終身雇用と引き換えに社員に会社への忠誠を誓わせていた昭和の時代。「モチベーション」を軸に多種多様な人材を生き生きと働かせた江副はマネジメントの天才でもあった。

起業家を志す人間には「お山の大将」が多いが、「なんでも自分が一番」では会社は大きくならない。「ユニコーン(幻の一角獣= 10 億ドルを超える企業価値を持つ未上場ベンチャー)」を立ち上げる人間は、優れたビジョンと、そのビジョンの実現のために優秀な人間を巻き込んでいく力を兼ね備えた人間でなくてはならない。

求人広告は産業構造を変える。求人広告により、労働市場に十分な情報が恒常的に提供されれば、構造的・体質的に高賃金に耐えられない企業は衰退し、労働条件を向上させうる企業は繁栄することとなる。そのメカニズムで国全体の産業構造の変革が推進される

江副は、自分にカリスマ性がないことを知っていた。創業者がカリスマ的な人間なら、会社が大きくなっても社員はその人物の魅力や個性についていく。だがシャイな性格で、人前で話すことすら苦手な自分に、そんな力はない。

待つことが大嫌いな江副は、いつも頭をフル回転させて、ひとつのアクションで二つ、三つの目的を達成することに喜びを覚えた。思惑どおりに段取りが進み、いくつかの目的がパタパタとドミノ倒しのように達成されていくとき、江副はえも言われぬ快感を覚えるのだ。

簡単に言えば、求人数が増えている会社の株を買えば儲かる。求人が減ってきたら売ればいい。江副は生の求人情報を通じて、近い将来どの企業の業績が上がり、どの企業の業績が下がるかを見通す「魔法の水晶玉」を持っていた。今ならインサイダー取引規制に抵触するだろう。

情報誌ビジネスの理念は、既得権者が独占していた情報をオープンにする「情報の民主化」にある。江副は閉ざされた情報を人々に解放する改革者だった。ところが皮肉なことに、情報誌で成功を収めた江副は、より成功するためにエスタブリッシュメントとの距離を縮め、自ら既得権者側の人間になろうとしていた。

モノづくりを喜びとしない人が増え、モノをつくらない会社へ優秀な学生が就職していくと、日本の将来は危ういと僕は思っている。どうですか?

江副の「採用狂」は相変わらずで、ひとりにつき 600 万円、年間にしめて 60 億円という法外な採用コストをかけて人材をかき集めていた。

この記事で掲載した引用は、Glaspの機能を使ってエクスポートしています。Kindleのハイライトをエクスポートすることに興味がある方は、以下の記事をご覧ください。

また、この本のトップハイライトは以下のリンクよりご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?