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【この曲がすごい】マニアック解説第9弾!ベートーヴェン交響曲第8番ヘ長調

この記事はこちらの動画を基にしています。

このシリーズでは知名度や歴史的な重要性に関わらず、私がすごい!と思っている曲を紹介していきます。

第9弾はベートーヴェン交響曲第8番ヘ長調。ベートーヴェンの交響曲の中では比較的地味で目立たない存在です。しかし、小粒だがピリリと辛い独特の作品であります。
では、この曲はいったいどこが魅力的なのか、これから見ていきたいと思います。

ベートーヴェン交響曲第8番ってどんな曲?


まずはこの曲の概要について簡単に説明しておきたいと思います。

1812年(42歳)完成、1814年(44歳)に第7番とともに初演されます。
ベートーヴェンの交響曲の中では比較的小規模で軽妙洒脱な雰囲気を持った異色作です。
第2楽章はメルツェルという人が考案したメトロノームに着想を得たと言われています。

ここがすごい!


第1楽章から順に、すごいポイントを見ていきましょう。

第1楽章


明るく華やかなソナタ形式です。
第1主題は前作の第7番などと異なり、序奏なしでいきなり堂々と始まります。第2主題はワルツ調の優雅なものです。
展開部は提示部の終わりのリズム(「運命」の動機《ダダダダーン》と同じ)から導かれます。
第1主題を中心に展開された後、トゥッティで伴奏の音型が鳴り響く中、低弦で再現部が現れます。このあたりの音量のバランスは非常に難しいため、指揮者の力量が試されるところです。
最後にさらっと弱音で第1主題の断片が現れるあたり、非常にしゃれがきいています。

第2楽章


スケルツォ風の軽快な楽章です。
上記の通り、木管が刻むリズムはメトロノームから着想を得たと言われています。また、ハイドンの「時計」交響曲にも似ていると言われています。第2主題では笑い声なような合の手が入ります。

第3楽章


メヌエットですが、宮廷の優雅な舞曲というよりは田舎っぽくパロディ色が強いものとなっています。主題はレントラー風で茶化すようなトランペットの音型が印象的です。トリオはホルンとクラリネットによる牧歌的なものです。

第4楽章


疾走感あふれるロンド形式、あるいはソナタ形式の楽章です。
A-B-A’-A-B-A”-C-A-B-コーダという形式で、ソナタ形式とする場合は後半(A”以降)が長大なコーダとなり、いわば第2展開部と第2再現部を含む入れ子構造となります。
主題は強弱の対比が激しく忙しない第1主題と穏やかに流れる第2主題です。
最後は5番のように執拗に動機を繰り返すラストとなっており、パロディ色が強いです。

まとめ


いかがでしたでしょうか?
このようにベートーヴェンの8番は5番「運命」に通じる要素が随所にあったり、ベートーヴェンとしては異色のパロディ色が強いものとなっています。比較的小規模で素朴な作品だと思っていると、強烈な毒があるあたり、ハイドンに近い作風かもしれません。


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