システム思考で、仕組み/構造を可視化する
ものごとの内側は、外から見ているだけではわかりません。
システム思考を使えば、内側の仕組み/構造を可視化することができます。
システム思考では「ものごとをシステムとしてとらえて分析する」システム分析を行います。
システム分析を行えば、仕組み/構造を可視化することができ、理解しやすくなります。
システム分析
システム分析では、分析したい対象をシステムとして分析します。
システム内の要素の関係を見えるようにすることで、仕組み/構造を可視化することができます。
前回の記事では、扇風機をシステムにして使用者(顧客)との関係を分析しました。
今回は、扇風機をシステムにしてシステム分析を行います。
システム分析では、構成要素の関係を見えるようにすることで、仕組み/構造を可視化します。
システム分析を行ううえで、システムが成立する条件を知っておくと効果的です。
その条件に従って分析すると、正しく効率的に分析を進めることができます。
システムが成立する条件
システムが成立する条件には、次の3つがあります。
条件A:システムの要素
条件B:要素の機能
条件C:要素の制御
条件A:システムの要素
システムを成立させるためには6つの要素が必要です。(参考文献1と参考文献2)
※詳しくは、シリーズ記事の「前回の記事」をご覧ください。記事の最後にあります。
「システム内の要素」を構成要素と呼びます。上の図での構成要素は、次の4つになります。
②出力要素
③伝達要素
④作用要素
⑤制御要素
「①エネルギー源・⑥対象物」は、システム外の要素になります。
条件B:要素の機能
システムが機能を働かせるためには、それぞれの構成要素が機能を働かせる必要もあります。
また、システムの機能が正しく働くためには、システムを制御可能にする必要があります。
条件C:要素の制御
システムを制御可能にするためには、構成要素の少なくとも1つが制御される必要があります。(参考文献3)
「②出力要素・③伝達要素・④作用要素」のうちの1つ以上が、⑤制御要素により制御される必要があります。
上の図の「A・B・C」のうちの1つ以上の「制御する」機能が働くことで、システムは制御可能になります。
システムが成立するための3つの条件(システムの要素・要素の機能・要素の制御)を知っておくと、システム分析を効率的に行うことができます。
次は具体的な例を用いて、3つの条件でシステム分析を行います。
システム分析の手順
システム分析は次の手順で行います。
システム図をつくる
要素を分析する
機能を分析する
制御を分析する
扇風機をシステムにして、システム分析を行います。
1.システム図をつくる
次の図をシステム図と呼びます。
扇風機をシステムとしたシステム図をつくります。
上の図を文で表すと次のようになります。
扇風機(システム)は対象物を〇〇する
上記の「〇〇する」を主要機能と呼びます。
主要機能とは、システム全体の機能のことです。
システムの構成要素が全体で働かせる機能が主要機能です。
主要機能は「対象物を〇〇する」といった形で表します。
扇風機システムのシステム図を、次のように定義することができます。
主要機能:動かす
対象物:空気
次はシステム(扇風機)内に「どのような要素があるか」を分析します。
2.要素を分析する
システムの成立条件A「システムの要素」を当てはめて分析します。
システムを成立させるためには6つの要素が必要です。(参考文献1と参考文献2)
6つの要素を、それぞれ具体的に考えていきます。
手順1(システム図をつくる)で、「⑥対象物」は空気にしました。
「①~⑤」の要素について考えていきます。それぞれの要素に扇風機の部品などを当てはめていきます。
まず「①エネルギー源」からです。
扇風機の場合は、エネルギーは電気です。それで「エネルギー源」は外部電源とします。
一般的にはコンセントから電源を得ますが、ここでは簡単にするために「外部電源」と表記します。
「②出力要素」はモーターになります。
では「③伝達要素」は何でしょうか?
伝達要素とは、②出力要素から④作用要素へ「出力を伝えるもの」です。
要素分析を行うときに、この伝達要素が何かを悩む場合があります。
そのような場合は、次の「④作用要素」を先に考えるとわかりやすいです。
作用要素とは、対象物に直接作用するものです。
対象物の「空気」に直接作用するものは、羽根(ファン)です。
羽根が回転することで空気を押し出します。それで作用要素を「羽根(ファン)」とします。
これで次のように決まりました。
②出力要素:モーター
④作用要素:羽根(ファン)
そうすると、その間にある「③伝達要素」は回転軸になります。
最後に「⑤制御要素」を考えます。
最近の扇風機はさまざまな制御要素が組み込まれていますが、ここでも簡単にするために、制御要素としては風量調整だけにします。
以上の分析結果をまとめると、次のようになります。
① エネルギー源:外部電源
② 出力要素:モーター
③ 伝達要素:回転軸
④ 作用要素:羽根(ファン)
⑤ 制御要素:風量調整
⑥ 対象物:空気
次は、それぞれの要素の機能について考えます。
3.機能を分析する
システムの主要機能が正しく働くためには、次の図に示すような形で、それぞれの構成要素が機能を働かせることが必要です。
上の図では、それぞれの要素を矢印で結んでいます。
矢印で結ばれている要素の間には、それぞれの機能が働いています。
また矢印の向きに機能が働いています。
4.制御を分析する
システムを制御可能にするためには、構成要素の少なくとも1つが制御される必要があります。(参考文献3)
「②出力要素・③伝達要素・④作用要素」のうちの1つ以上が、⑤制御要素により制御される必要があります。
次の図の「A・B・C」のうちの1つ以上の「制御する」機能が働くことで、システムは制御可能になります。
制御要素である風量調整が制御しているものは、実際には、出力要素のモーターだけです。そのため上の図(図11)を、次の図のように修正します。
図12.要素の制御(修正版)
上の図8では、矢印の「BとC」を破線に変更しています。
「⑤風量調整→③回転軸」の矢印B
「⑤風量調整→④羽根(ファン)」の矢印C
「存在することが望ましいが、現在(分析時点)は存在しない」制御機能であることを記録しておくために破線で表示しました。
【注記】
手順2(要素を分析する)で、制御要素は「風量調整だけ」にしました。そのため手順4(制御を分析する)では、上記のような分析結果になっています。
(注記おわり)
また、「現在は存在しない制御機能を破線で示す」代わりに、2つの矢印を削除して記載なしにする形でもOKです。
システム分析のまとめ
システム分析は次の手順で行います。
システム図をつくる
要素を分析する
機能を分析する
制御を分析する
手順1「システム図をつくる」では、システムの主要機能を定義します。
手順2「要素を分析する」では、システムの「成立条件A(6つの要素)」を当てはめて分析します。
手順3「機能を分析する」では、図10に示すような形で、それぞれの要素が機能を働かせているかをチェックします。
手順4「制御を分析する」では、システムを制御可能にするために「構成要素の1つ以上が制御されているか」をチェックします。
上記の手順1~4を行うことで、システムの仕組み/構造を可視化することができ、理解しやすくなります。
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関連書籍
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参考文献
Yuri Salamatov 『超発明術TRIZ シリーズ5 思想編「創造的問題解決の極意』の「4.3.システムが始まるのはどこか?」
Darrell Mann『TRIZ 実践と効用 (1) 体系的技術革新』の「17.2.2システムの完全性の法則」
Yuri Salamatov 『超発明術TRIZ シリーズ5 思想編「創造的問題解決の極意』の「4.3.システムが始まるのはどこか?」の「システムの完全性の法則の系」
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