活用して損する人?得する人?居住用財産の買い換え特例の仕組みとは?

新しくマイホームを買い換えた時に一定の要件を満たすと譲渡益の課税金が繰り延べ出来ることを「特定の居住用財産の買い換え特例」といいます。


売った家よりも買った家の方が安い場合はその差額から一定の費用を差し引いて税金が計算されます。


一方、買った家の方が高い場合は売却益が出た場合でもその時に税金がかかるわけではなく、将来的に繰り越すことが出来ます。


少し複雑な制度ですが、しっかりと学び損のない家づくりをしていきましょう。

買い換え特例はどんな建物が該当するの?


まず、売却するマイホームの条件として

・譲渡資産の譲渡に係る対価の金額が1億円以下
・売った年の1月1日の時点で所有期間が10年を超えている(居住期間は継続していなくても可。例えば転勤など途中に住んでいない時期があっても、通算で10年以上ならOK。ただし、売った年の1月1日時点で家屋と敷地の所有期間がどちらも10年を超えていることが要件となります)。
・実際にその家に住んでいるか、住まなくなって3年経った年末までに売ること
・敷地だけの場合は災害で家がなくなった場合など一定の事項にあてはまること

があげられます。

次に買い換えるマイホームの主な条件として

・家の床面積は50㎡以上
・土地の面積は500㎡以下
・中古の場合は築後25年以内か、構造が一定の安定基準に達している

などがあります。

そのほかにも
・売る年かその前年に買い換え資産取得した人は、売る年の翌年までに入居する
・売る年の翌年に取得した人(税務署の承認が必要)は、買った年の翌年までに入居する
・売る相手が配偶者でない(このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます)

など全ての条件をクリアすれば適用出来ます。


ケース1 売却額≦購入額

例えば、3,000万円で購入したマイホームを4,000万円で売却し、5,000万円で新たにマイホームを購入したとします。


この時、通常であれば1,000万円の譲渡益が課税対象になります(4,000万円-3,000万円)。


しかし、この特例を活用すれば課税は行われず、新たに購入したマイホームを将来的に譲渡するときまで繰り延べられます。

ケース2 売却額≧購入額

次に、マイホームを4,000万円で売却し、3,000万円で新たに別のマイホームを購入したとします。

この場合は、一定の費用を差し引いてから税金がかかってきます。


実際にどのくらいの金額がかかるか具体的に見てみましょう。

上記の内容で、取得費が500万円、売るためにかかった費用が300万円だとします。

収入金額の計算
売った金額-買い換えた金額=4,000万円-3,000万円=1,000万円

必要経費の計算
(売ったマイホームの取得費+譲渡費用)×(①÷売った金額)=(500万円+300万円)×(1,000万円÷4,000万円)=200万円

譲渡所得の計算

①-②=1,000万円-200万円=800万円

よって実際にかかる所得税・住民税は800万円×20.315%=1,625,200円となります。


注意点や申請方法など


「買い換え特例」を受けるためには、売却した翌年に確定申告をしなければいけません。


申告期限までに下記の資料を揃えておく必要があります。


・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
・売った資産が次のいずれかの資産に該当する事実を記載した書類
・売った資産の登記事項証明書等で所有期間が10年を超えるものであることを明らかにするもの
・買い換えた資産の登記事項証明書や売買契約書の写しで、取得したこと及び買い換えた資産の面積を明らかにするもの
・売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの
・買い換えた資産が中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであることを明らかにする書類、又は耐震基準適合証明書など

それとは別に「買い換え特例」を活用する前に注意しなければいけないのがマイホームを譲渡する際の特例はこれだけではないという点。


その他にもマイホームの取得期間にかかわらず、譲渡所得から最高3,000万円を差し引くことが出来る①「居住用財産譲渡の3,000万円の特別控除」があります。


また、所有期間が10年を超えるマイホームを売った場合は①の控除後の所得金額に対し、通常より低い10%の所得金額が適用出来る②「軽減税率の特例」もあります(※6,000万円を超える部分の税率は15%)。

どの特例を受けると得するのかはケースによって異なります。


例えば、①を選んだときは配偶者控除・配偶者特別控除が受けられなくなる可能性があります。


つまり、これらの控除は合計所得金額が1,000万円以下でないと適用出来ないのですが、3,000万円の控除前で合計所得金額が1,000万円かどうか判定することになっているからです。


3つの特例のうち①②は同時に受けることが可能です。


「買い換え特例」だけは併用が出来ないのでよくシミュレーションをしてからどれを選択するか検討しましょう。

家の購入を考えている人は、前回紹介したすまい給付金についてもチェックしておくと良いと思います。


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