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マシアス・ギリの失脚 - 池澤夏樹 vol.1

朝起きて本棚から池澤夏樹のマシアス・ギリの失脚を引っ張ってくる。
ずいぶん前に買った本、分厚いので買ったはいいものの手を出せずにしまったままだった。なぜか最近頻繁にこの本が頭をよぎるので。
本を開いて最初の文を読んで、ああ読みたかった理由がわかった。

引用:p.7
「朝から話を始めよう。すべてのよき物語は朝の薄明かりの中から出現するものだから。午前五時三十分。空はまだ暗いのに、鳥たちが巣を出て騒ぎ出す。東の空は夜の漆黒から少しだけ青みを帯びた色に変わって、地平線のすぐ下に太陽が待っていることを遠回しにほのめかしている。」

小学生の頃、夜明け前に外へ出て暗い夜の世界から薄明かりの景色が浮かび上がるのを感じた時があった。その時の感動を思い出させてくれる序文だった。
淡い青の薄明かりの景色の中、早起きの鳥たちが目覚め、鳴き始める。
朝はもうすぐそこだ。やがて東から太陽がのぼり、ひんやりした空気、そして地面がじわじわと太陽の光に温められていく。この夜明けの一瞬の出来事。
生命の息吹を感じる。その時イヤホンで聴いていたUnderworld のDirty EpicからJumboの流れが景色とミックスされて印象的だった。

久々に小説を読んでみよう。

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