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「金の角持つ子どもたち」(藤岡陽子)読みました

題名がきれいだなと思って書店で手に取った文庫本。中学受験がテーマで、読後感爽やかです。
「中学受験」…地方で育った人の多くは、まったくピンとこない話かと思います。まったく知らなかった世界…中学受験を対象にした塾について興味深く読みました。
私は、福井の農村部で生まれ育ち小学校は一クラスのみ、全員が町内に唯一の中学校に進みました。県内出身の多くの友人が、同じような経歴だったかと。ちなみに高校もほとんどが公立高校に進学し、私立や大学付属の高校に進む人は少なかったです(40年前の話)。
多くの地方育ちの人が、似たような状況だったかと思います。首都圏とはかなり違う…ということは、大人になってから知りました。その後の時代の変化もきっと大きいし。
中学受験とか塾、というと、「子どもにそんなもの必要ない、公立学校で充分」論、主張する人が多いかと。経済格差、都会と地方の格差により、教育の機会に不平等も生まれるわけだしね。正論としては、“塾に通わず義務教育は公立が基本であるべき”。
でも、今の社会を見る中でそれは理想論とも思う。
都会で生まれ、進学先の選択肢がたくさんある子供…進学だけでなく習い事やスポーツクラブ、様々に都会は経験値の幅が広くて、それはやはり羨ましいと感じる。でも、どこに生まれるかは、子供には選べないこと。子供それぞれが育った環境の中で、一番いい方法を選び進もうとする。大人はそんな子供をしっかりと支える。それが、都会でも田舎でも共通した大人の責務。生まれ育つのが都会か地方かよりも、どういう大人に囲まれて育つかの方が、子供に与える影響は重大です。
都会というより首都圏の人は、大学の難易度に敏感と大学時代に思いました。同じように感じた地方出身者は多かったと思います。きっと、東京には大企業の本社や官庁が集中していて、最終的に就職先によって大きな格差が生じるから、なんだろうなと思う。
今の社会に問題は多々ある。けれど嘆くだけでは変わらない。今できる最善をやっていくことがやがて社会の改善につながる。この本を読んで、中学受験をとりまく状況や意味が、そこに関わる大人の心持ち次第で大きく変わると感じました。
大人になるほどに、地頭(じあたま)の良さよりも集中力が身についているかどうかが大事で、そういう意味でも中学受験が無意味ということはない。
登場人物が魅力的です。世の中に希望が見い出しにくくなってきているけど、ここに登場する子供たちは、大人になっても利己的なインテリには絶対にならないと信じられる。周りの大人たちがハートフルで、ほのぼのと幸せな気持ちになりました。

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