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読書感想文まとめ(随時更新)

X(Twitter)に書いた読書感想文のバックアップです。
まとめて残しておくことで後で参照しやすくしたいという目的があります。
※若干のネタバレを含むものもあります


十角館の殺人

これがデビュー作とは思えない上手く作られた作品でした。
見どころはやはりトリックですね。
叙述トリックという評判を聞いていたのに、見事に引っかかってしまいました。
他の評判が高い館シリーズも是非読みたいと思います。

十二人の死にたい子どもたち

タイトル通り怒れる男たちのオマージュ作品でしたが、死にたい子どもとあるように、より重めな内容に仕上がっています。
集団自殺をしようと集まったら、予定の人数+死体1という状況で、そのまま自殺を決行するか、死体の謎を解くかで話し合いをするストーリーです。

自殺決行に待ったをかける人が増える展開も、怒れる男と同じでした。
今作はミステリ要素が強いうえに、自殺、反出生主義などの社会学的内容も含まれるので、2つの意味で考えさせられました。

ただ、最後は着地させるために少々強引な展開だったと思います。
全体的には質が高い作品だと言えるでしょう。

13階段

細かな要素も無駄なく使われており、ラストはジェットコースターな展開、見事なミステリでした。
話のメインテーマとしては死刑制度への問い掛けということになりますが、他にも殺人や正義などといったキーワードも絡み、深く上質な内容となっていました。

死刑制度はいずれは廃止されるべきかと思いますが、現状死刑に代わる何かしらの刑罰がないので必要ではあるのでしょう。
正しさとは一体何か、考えさせられる作品でした。
もちろんオススメ。

1000の小説とバックベアード

ジャンルとしてはオカルトか?言葉と感覚の奇妙な世界が展開されていました。
小説でしかできない表現の要素を使った物語の展開は面白いと思いました。
ただ、脈絡なくぐんぐん物語が進んでいき、ついていけないとことも少々。

もっと近代文学を読んでいると面白く感じるのかなと。
三島由紀夫受賞作といいながらもラノベ風味な作品でした。
あんまりおすすめではないけど、小説というメディアが好きなら一読の価値はあるといったところです。

一九八四年

単なる共産主義、全体主義批判ではなく、資本主義も含めた権力体制への批判を感じ取れる作品でした。
戦争は平和、非自由と不平等の永続など、小説というよりかは社会学の教養本といった感じでまた1つ勉強になりました。

65年も前に今作が書かれていることに驚きます。
今読んでも決して色褪せません。
ディストピアものを語るなら今作ははずせない1作でしょう。
それと平和とか平等とか、その言葉の響きの良さだけで口にするような人たちに是非読んでもらいたい。

「2」

上質なオカルトミステリーでした。
基本的にはアムリタの続編で、いつも通りチートキャラが無双する話です。
2以前の5作品のキャラが登場し、それらを上手く使いこなし物語とトリックを作り上げている、見事な構成でした。
トリックは予想できた点もあれば、それを超えた点もあり楽しめました。

なにより、人間の進化と創作をオカルトによって結びつけた点が素晴らしかったです。
個人的にはなぜ映画なのかまで説明されるとなおよかったです。
5作品のクロスオーバー作品なので間違いなく万人向けではないです。
とりあえずアムリタ読んで作家性が肌に合ったら、今作も読んで損はないでしょう。

2010年代SF傑作選1

「アリスマ王の愛した魔物」
人力コンピューターの話で三体を思い出しました。
人の心は計算できない。
落語っぽい落ちも素敵でした。

「滑車の地」
この設定でFPSゲームを作ってくれ。買います。
短編で収めてしまうにはもったいない設定の数々でした。

「怪獣惑星キンゴジ」
大怪獣を使ったミステリー。
人間の欲望を怪獣が利用するという展開が面白かったです。

「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち」
人間の残虐性が暴かれる短編。
遺伝子工学が発達した未来の社会がよく想像されていました。

「大卒ポンプ」
ホラー短編として綺麗にまとまっていました。
語り口調の軽さに反した薄暗さを感じられました。

「鮮やかな賭け」
自由意思について疑問を呈する短編。
種明かしで唸らされました。

「テルミン嬢」
脳科学と音楽を取り上げた短編。
最後のロマンティックな一文のための作品って感じでした。

「文字渦」
兵馬俑をテーマにした作品。
円城作品の中でもわかりやすい作品だと思いました。
まさに小説ならではの表現で、文章・文字を楽しむという体験ができる作品でした。

「海の指」
幻想的な舞台風景とホラーなラストが印象的な短編。
絶対CGアニメと相性が良い作品だと思います。

「allo,toi,toi」
My Humanityで読んだので割愛。

非常に満足度の高い作品集です。
それぞれテーマも雰囲気も異なっており、かつどれも面白い。
この人の他の作品も読みたいと思えて、いろいろな作品への切り口となる短編集でした。

2010年代SF傑作選2

「バック・イン・ザ・デイズ」
全てが記録として残っていく方向に向かっている情報化社会に対する、1つの提言のような短編。
情報について考えさせられるとともに、切なさも感じさせる作品でした。

「スペース金融道」
宇宙、アンドロイド、異星間交流といったSFに金融が組み合わさリ、コメディな雰囲気で味を整えている作品。
金融工学に量子論を組み込んだ仮設は興味深いものでした。

「流れよわが涙、と孔明は言った」
出落ちの勢いでそのまま走り切った作品。
馬陵のみ、10兆点で声出して笑いました

「環刑錮」
オチのために設定があるような作品。
イメージが追いつかないので、映像で見てみたい作品でした。

「うどん、キツネつきの」
SFの匂いをまったく感じさせない、けど少し不思議な日常を描いている作品。
文学性の色合いを強く感じました。
うどんは結局どういう生き物なんだ?

「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」
ある意味ユートピア作品なのでしょうか。
民俗学とSFがうまく融合していました。
どんでん返しも用意されていて見事な短編です。

「従卒トム」
屍者の帝国の設定を使った作品。
SFに時代劇の渋さがマッチしているかのような短編でした。

「第五の地平」
物語の導入はぶっ飛んでいますが、ひも理論を使って次元を超えて遠方へと向かう展開がチンギス・ハンの生涯と合致し、見事な面白さでした。

「トーキョーを食べて育った」
ポストアポカリプス作品。
子供の視点で物語が進むことで、その世界の有り様がより純粋に描き出されていました。

「11階」
ホラー作品ではありますが、怖さよりも寂しさを強く感じさせる小説でした。
独特な文章だけど読みやすく、物語の雰囲気と合っていました。

1,2を比べると、10年代にデビューした作家の作品のほうが、よりSFに対して自由な解釈を求めているように感じます。
1,2双方とも素晴らしい短編集でした。

2084年のSF

「タイスケヒトリソラノナカ」
VRが発達したことによって生まれる現代病としては十分ありえそう。
最後に認識の話で締めるのはちょっと性急な感じがした。

「Alice」
インフラの一極集中は良くないということがよくわかる。
シェアペットは実現してほしい。

「自分の墓で泣いてください」
サプライズニンジャ理論を初めて知った。
仮葬空間のアイデアが面白い。

「目覚めよ、眠れ」
眠らない分、労働しないといけない未来とかつらすぎ。
アイデアも落ちもいいが、短編がために展開が性急すぎる。
長編で読みたかった一作。

「男性撤廃」
現在の時点で性の多様性がどうこう言ってるのだから、こんなに極端な未来はこないだろう。
よりよい世のなかとは何なのか、考えさせられる。

「R____ R____」
ルビを振ることができる日本語だからこそできる表現が面白い。
音楽の力ってすげー的な作品。

「情動の棺」
情動をコントロールできるのは便利だと思うが、人を愛玩動物のようにしてしまえると考えると恐ろしい。
設定とミステリ調の展開がうまくまとまっていて面白かった。

「カーテン」
作品に登場するシステムの内容が抽象的で理解しにくかった。

「見守りカメラ is whating you」
コミカルなテイストながらも家族愛、性、記憶と人格といった内容をうまく絡めた物語に仕上がっている。

「フリーフォール」
内容は違うが映像的にはインセプションを思わせる。
現実世界での急展開中に思考世界で様々なことが進んでいる描写が面白い。

「春、マザーレイクにて」
ポストアポカリプスの世界の描写が豊かできれい。
こどもたちが健気に希望を持つ終わり方がいい雰囲気を醸し出していた。

「The Plastic World」
鬱屈とした世界の中で、諦めずにしぶとく生きていく人たち がよく描かれていた。
暗い未来に光が差す展開が気持ちの良い読後感だった

「祖母の揺籠」
こどもたちと祖母の描写が想像力を掻き立てる。
最後の淡い恋愛描写も美しい。

「黄金のさくらんぼ」
ブレインブースターで感情が読み取れるという設定があるのに、館長の過去語りの際にあえて感情を描写しないところが妙。

「至聖所」
ミステリ調なのもあり、どうしても秘密と印象が被る。

「移動遊園地の幽霊たち」
幽霊側の視点から話が語られるところが面白い。
博物館が残骸になってしまう未来は寂しいと思った。

「BTTF葬送」
魂のこもった作品が文字通りになり、作品の魂が輪廻するという発想が面白い。
未来でも面白い映画が生まれてほしいという願いがこもっていそう。

「未来への言葉」
スケールが宇宙規模になっただけで、話の展開は陳腐に感じてしまうも、患者から発せられた言葉の重みが際立つ展開になっていて、心を揺さぶられた。

「上限の中獄」
散々上げておいて落とす展開でちょっと笑った。毛沢東のくだりもクスっとくる。
中国人には読ませられない作品。

「星の恋バナ」
巨大化の技術や怪獣の言語に思わずなるほどと思わせる説得力があった。
主人公と怪獣の不器用さが重なるところにエモさを感じさせた。

「かえるのからだのかたち」
都市だのかえるだの時間だのに変わる展開に追いつけなかった。

「混沌を掻き回す」
テラフォーミング技術の企業間闘争で起こる一幕を描いたハードSF。
日本神話のモチーフも使っていて短編とは思えないほど濃厚な一作。

「火星のザッカーバーグ」
わからなかった。考えるな、感じろ的な作品だった。

より多くの未来を提示するというコンセプトに合っている短編集でした。
どの作品もいいアイデアで作られているため、もっと読みたいと思わせる作品ばかりです。
一九八四年を意識しているためか、全体的に暗めなテイストが多い印象ですね。
「情動の棺」と「未来への言葉」がお気に入りの作品です。

All You Need Is Kill

小説は読みやすく、バトルシーンもシンプルで迫力を感じられる描写でした。
また人物描写も丁寧に描かれていて、タイムループを体験した2人の苦悩と戦いへの覚悟が読み取れました。
だからこそ物語の最後は切なさをより深く感じられるものとなっていました。

ただ設定部分はあまり細かくなく、ソフトなSFといった印象です。
物語自体のボリュームもそんなに多くなく、全体的にこじんまりとまとまっています、そういった意味でやっぱりラノベだなと思いました。
軽く読めて楽しめる、まさしくラノベといったエンタメ作品でした。

Another

ホラーというジャンルを前提にして、そこにミステリ要素を加えている作品でしたクラスで起こる災厄も実は人為的なものでしたというどんでん返しも期待しましたが…。
犯人?の予想もつけられやすく、かつ意外性もあり質の高い作品だったと思います。
アニメ版も一見の価値ありかもれません。

GENE MAPPER -full build-

遺伝子をプログラムのコードのように書いて作物を作ることができる未来社会を描いた作品で、違和感のなさに驚きました。
よく練られた設定とミステリー調の展開がマッチしていて面白かったです。
エンジニアの人が読めば共感できるところもあってより楽しめるかも?

know

medium 霊媒探偵城塚翡翠

やられました。
完全に騙されました。
キャラノベミステリだと思ってへらへらしながら読んでいたらところで頬を張られた気分でした。
基本的にはキャラノベですが、決して変わり種ではないちゃんとしたミステリでした。
このミス1位なのも色々な意味で納得な作品でした

MM9

素晴らしい怪獣小説でした。
物語はまさしく読む怪獣映画といった感じで、出現する怪獣たちも魅力あふれるものとなっています。
人間原理をもとにした舞台設定、登場人物たちである気特対の怪獣への対応の仕方はまさしくSF。

一方で民俗学や神話、オカルト要素も盛り込まれています。
それらを理論に当てはめ、最終話では物語に綺麗に落とし込んでいました。

細かな設定、そして怪獣の迫力を感じられる点が面白いところでした。
ゴジラとかウルトラマンとか好きな人はハマること間違い無し。
今度父親に勧めようと思いました。

My Humanity

「地には豊穣」「allo,toi,toi」
『あなたのための物語』の設定を使った作品。
どちらもアイデンティティに対して考えさせられます。
経験と文化的背景の上書き、好きという感情の矯正によって価値観や感覚というものが何から生じているのかを言及しています。
哲学的面でも面白かったし、そういう技術が人を支配できるというテクノロジーの怖さも想起させる話でした。

「Hollow Vision」
『BEATLESS』を読んでないのでまだ読んでいないです。

「父たちの時間」
自己増殖をし人間社会を脅かすナノマシンはウイルスに似ており、今の状況と遠からずリンクする内容です。
そんな中、主人公は父として家族と向き合うことと研究者としてナノマシンと戦うことを求められます。
公私の狭間で揺らぐ葛藤に読んでいてもどかしさを感じました。
今まさにこういう状況下にある人もいるのだろうなと感じられました。

テクノロジーと人間性がテーマとなっている練られた短編集でした。

NVOA3

「ろーどそうるず」
バイク擬人化のロマンティックなお話でした。

「想い出の家」
AR,MRの技術がより日常的になったら、登場人物たちのずれた行動も普遍な姿となるのでしょうか。

「東山屋敷の人々」
家族と家の関わりは有限な時間によって作られているということですね。

「犀が通る」
やはり私には円城塔作品は合わないです。

「ギリシア小文字の誕生」
品のない神話。くだらなくて好き。

「火星のプリンセス」
長編ラノベシリーズとして読みたい作品。
栖花ちゃんかわいい。

「メデューサ複合体」
他シリーズも読んでいないと面白さ半減って感じなんですかね?

「希望」
難しくてわからなかったです。
とりあえず重力という力がいろいろなものに作用しているという感じというところは面白かった。

この短編シリーズ結構巻数出てますね。折を見て1巻から順に買いたいと思いました。

Self-Reference ENGINE

解説も読みましたがなるほどわからん。
ページが重たかったですね。
自分のイメージとどれだけの差異があるか知りたいので視覚化希望です。

STEINS;GATE‐シュタインズゲート‐ 変移空間のオクテット

シュタゲとカオヘの両方の設定が上手く活かせていて、かなりぶっ飛んだ内容だったけどそこそこ面白かったです。
ゼロも楽しみです。

アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」

アイヌ文化入門編にもなるようなわかりやすさもあり、金カムのこだわりポイントも知ることができて、より一層漫画を楽しめるようになれる一作でした。
年末年始に実家で1から読み返そうかと思う気持ちになりました。

青の数学

数学を題材にした高校生の青春物語で、淡白な語り口ながらも登場人物たちの感情がよく表れるような展開にしていて、いい青春小説だと思いました。
惜しいのは、魅力的な登場人物が多すぎてさばききれていないところですね。
もっと人数絞っても良かったと思います。
続刊も読みます。

悪党

犯罪被害者の心情が痛いほど伝わってくる作品でした。
探偵である主人公が、犯罪被害者から加害者のその後を調査してほしいという依頼を受ける物語です。
許すことと許されることとはどういうことなのか、考えさせられました。
重い話ですが話の構成が連作中編で読み進めやすく、オススメな一作です

新しい世界を生きるための14のSF

「Final Anchors」
AIが超短時間で情報を収集し裁判をする展開とAI同士のやり取りがユニーク。AI自身の未来を含め、トロッコ問題を判断するところが面白い。
人間のための良きAIとは何なのかを定義するのが難しいことがわかる1作。

「回樹」
愛を確認できる装置があったら人はどうするのかを問う作品。
愛する努力もまた愛という最後のセリフに諦念のようなものを感じさせる。

「点体」
1行ごとに語り手が変わりそれぞれの視点で物語が進む実験的作品。
遊び心がある一方、没入し話を理解していくのが難しい。
まさにそれが狙いなのかも?

「もしもぼくらが生まれていたら」
隕石衝突の回避策を検討していく高校生たちの物語。
科学的手法の堅実さによってリアリティのあるジュブナイル小説にしあがっている。
また各国の動向も想像に難くなく、核というテーマにすんなりと結びつく。
タイトル回収のエモさは圧巻。

「あなたの空が見たくて」
異星生物の姿形の描写、友情による行動原理の違いといった異文化をコンパクトに構成した作品。

「冬眠世代」
熊を主人公とし冬眠によって記憶が受け継がれながら展開していくところが面白い。
ゲームのような設定と童話のような雰囲気が混ざる独特な1作。

「九月某日の誓い」
超能力を軸にミステリ仕立てになっているところからSPECを想起させる作品。
戦中という時代設定が物語にいいアクセントを加えていた。

「大江戸しんぐらりてぃ」
アリスマ王の愛した魔物や三体Iにも登場する人力演算に歴史改変を混ぜた作品。
古代テクノロジーまで登場するロマンの塊。

「くすんだ言語」
テクノロジーにより人間に制御できない言語が生まれるというアイデアに背筋が凍る一作。
美しい言語ネットワークの色が混ざりすぎて灰色になるという映像が主人公の心理とかぶるようで、見事な絶望感を演出している。

「ショッピング・エクスプロージョン」
総合スーパーマーケット×移動都市×サイバーパンクとかいう闇鍋的な短編で、まさしくドン・キホーテの圧縮陳列を体現したかのような作品。
かっこいい台詞回し、バカバカしい設定、熱いバトルが入り交じる展開は王道少年マンガのよう。

「青い瞳がきこえるうちは」
障碍者スポーツとVRの組み合わせをテーマにした作品。
シンプルに卓球の描写がうまく素晴らしいことに加え、親子関係、兄弟対決、選手同士の友情と人間関係の描写も丁寧。
短編なのに長編を読み終えたかのような満足感。
VR技術の未来に希望が持てるところもグッド。

「それはいきなり繋がった」
コロナに対する解決策の想像としての並行世界という発想が面白い。
同時に、自己同一性とは何かを考えさせられる興味深い作品。
「無脊椎動物の想像力と創造性について」
蜘蛛の可能性を描く作品。
大量の蜘蛛の巣に覆われた建物の映像は恐ろしさの中に美しさも感じさせる。

「夜警」
望んだものが海から流れてくるという設定から、その世界の事実を利用しようとする最後の展開はダークホラーなテイストでグリム童話を感じさせるファンタジー作品。

各作品のテーマに対する編者の作品紹介文もこれでもかというぐらい充実していて、読み応え抜群でした。
また、SFの単著を発刊していない作家という縛りもあり、新鮮味のある短編集でした。
お気に入りは「青い瞳がきこえるうちは」「もしもぼくらが生まれていたら」「くすんだ言語」です。

あなたのための物語

sfであり、哲学書でした。
死にゆく主人公の人生という物語を軸に、生と死、物語とは何なのかということを語っています。
主人公の感情の変化が細かく描かれており、死の恐怖を意識させます。
静的な物語で、作中の病の進行度とリンクするように物語にじわじわ惹きつけられました。

難しい文章で読みにくかったのですが、かえってじっくり読み進めるのに適していました。
物語の構造的には渚にてに近いものを感じましたが、今作のほうがより論理的でした。
中高生のときに読んでいれば深く影響を受けていたと思います。
もちろんオススメの1冊。
ビートレスも早く読みたいですね。

アルジャーノンに花束を

科学の力によって急激に賢くなった知的障害者の物語です。
主人公の経過報告書という体裁で物語が進んでいき、最初は文字が平仮名ばかりで間違いも多いのですが、主人公が賢くなるにつれ漢字も増えていき難しい内容も語られるようになります。

その違いが面白いです。
そして急激に賢くなってしまった主人公の内面と人間関係を丁寧に想像して描いているので、必ずしも外的な力によって知能を高めることが素晴らしいことではないと思わされます。

自己とは、賢さとは、幸せとはなど、色々な視点から考えることができる作品でした。
さすが名作です。

アルテミス

著者の前作、火星の人に増してエンタメ要素の強い作品に仕上がっていました。
キャラクターや舞台設定が細かく、読んでいて映像が頭に浮かびやすく、映画を読む感覚でした。

SFとしての出来は非常にいいですが、物語の展開がマンガとかアニメっぽい感じがしました。
主人公が月の密輸業者をやっていて、いきなり破壊工作に加担するっていうのが強引すぎたかなという印象です。

それでもアクション要素も十分に面白かったし、満足できる一作だと思います。
個人的には火星の人のほうが好きです。

アンドロイドの夢の羊

P・K・ディックのアンドロイドは電気羊~とは全く関係ありませんでした。
タイトルもタイトルなら、内容も最初の展開がコメディに寄りすぎていて、出落ち作品か?と思わせられました。
しかし、いろいろなSFの面白い要素を詰め込んだ素晴らしい冒険小説でした。

派手なアクションシーンもあれば、政治的交渉の頭脳戦もあり、電脳空間、地球外生物、遺伝子操作など要素も含み、それらがうまく重なっていたと思います。
随所に仕掛けてあるユーモアが上手く緩急をつけていて飽きさせない作りになっていました。
ハリウッド映画的エンタメ作品だったと思います。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか

少し哲学的すぎた。

怒り

素晴らしい人間ドラマ小説でした。
4つの物語が展開されますが、丁寧な感情描写によってどの登場人物にも感情移入できます。
文章がうまいと思わざるをえません。
一貫して人を信じることの難しさが描かれており、無理やり一言で表すとすれば切ない愛の物語といったところです。

ただミステリーではない。
文春ミステリーベスト10と書いてあったのでミステリ要素にも期待していましたが、4つの物語が最終的に1つに結びつくとかみたいなことはありませんでした。
読後に腹の底に鈍く溜まるような感情を所望する人にオススメです。
映画は役者の演技が気になるのでいずれ見ます。

異常論文

「決定論的自由意志利用改変攻撃について」
初っ端から読者の想像力を試してくるかのような小説。
大量に出てくる造語と数式に面食らうも、これが異常論文かと納得のいく円城塔ならではの一作。

「空間把握能力の欠如による次元拡張レウム語の再解釈およびその完全な言語的対称性」
三次元視覚言語をテーマに民俗学や脳科学も混ぜ込んだSF小説。
異常さは薄く近未来にありえそうな論文だった。

「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」
マジックなのか幻想魔術なのかがわからなくなる作品。

「掃除と掃除用具の人類史」
掃除と掃除用具という異色な視点から語られるあまりにも壮大な人類史。
コメディ色は強いのに説得力のある展開に、笑える方でも興味深いほうでも面白い一作。

「世界の心理を表す五枚のスライドとその解説、および注釈」
世界の心理は結局わからないということがわかる。
注釈をしっかり読んでもわからなかった。

「INTERNET2」
難しくてよくわからなかった。
INTERNET2はディストピア的なにかなのだろうか。

「裏アカシック・レコード」
まず発想が面白い。
歴史、経済、宗教と想像ができる使われ方の例が一通り示されていることで、より現実味のある内容になっていた。

「フランス革命最初期における大恐慌と緑の人々問題について」
オカルト、陰謀の類の話があまりに自然に科学的に語られる一作。

「『多元宇宙的絶滅主義』と絶滅の遅延」
行き過ぎた反出生主義による全宇宙的な絶滅の一途を描いた作品。
締めの皮肉が素晴らしいスパイスとなっている。

「『アブデエル記』断片」
断片的な史料から架空宗教の一部分を浮かび上がらせる、構成の面白さが光る作品。

「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」
宗教が虫によって引き起こされているものとした設定の上で、それが機械を宿主とした上で起こった流れについて解説される一作。
物体だけでなく概念も宿主になる設定が妙

「SF作家の倒し方」
完全に箸休め的コメディ。
筒井康隆の代わりに小川哲が書いた感じ

「第一四五九五期<異常SF創作講座>最終課題講評」
ある生物の力で、世界がまるっと変わってしまった中で作られるSF作品に対しての講評をまとめた一作。
最終的にこの講評までもが課題の一部に取り込まれてしまう、そのシームレスな展開が異常さを醸し出す。
まさに異常論文といった作品。

「樋口一葉の多声的エクリチュール」
ほぼ論文。
樋口一葉の文体を取り上げ、そこから心霊要素へとつなげる作品。
おわりにが急に論文でなくなるところも怖さを生み出している。

「ベケット講釈」
これもむずかった。
考えるな感じろ系なのか。
サミュエル・ベケットの作品を知らないとわからないのかも。

「ザムザの羽」
自分を三人称で捉えた上で命題に対して論考した上で、抽象的な物語も展開される。
構成は面白いが難解な作品。

「虫→……」
ある虫について論じているところに、急に虫の妨害が入り文章が狂う作りが、まさに異常。
異常な仕上がりになってしまった論文といった作品。

「オルガンのこと」
多様なモチーフが登場することで語られる対象が目まぐるしく変わり、内容についてくことが難しかった。

「四海文書注解抄」
異常な文献の注釈のみで構成されており、その注釈から文献の内容や起きた出来事、裏にいる何かの存在について想像させられるような、上手な作りの一作。

「場所(Spaces)」
この作品で出てくるmdファイルが存在するということが面白い。
論文ではなく小説だった。

「無断と土」
詩と怪談と架空VRゲームについて書かれた一作。
質疑応答まで含めた緻密な作りがより現実味をもたせている。
しかし最後の1段落で異常さが浮かび上がるところが素晴らしい。

「解説-最後のレナディアン語通訳」
人工言語文学の作品集の解説という体で、その言語が作られた事件の異常さについて語る構成。
他の作品が体裁や内容が異常だったのに対し、今作は人間の異常さにスポットがあたる。
締めもツンデレかと思ったが、ある種の執念かと捉えると人間の異常さを感じさせる。

さまざまなテイストの小説もとい論文が詰まった作品集で、かつ異常と名がつくだけあり極端な振れ幅のある作品ばかりで、まったく飽きることのない作品集でした。
個人的に好きなのは異常SF創作講座ですね。
異常論文というテーマに対して、設定と内容と展開がすべて噛み合っていたと思える作品でした。

イニシエーションラブ

正直中途半端でした。
恋愛ものとして読んでも特段過程が面白いわけではなかったです。
ミステリとしても、1つのトリックはsideBに入ってすぐにあたりがつきます。
最後の方になってもう1つのトリックにも気付きました。
ミスリードを誘う仕組みが少なかったのか?

最大の失敗は今作がミステリーとして有名になってしまっていることです。
その情報で読む側も身構えてしまうので、トリックにも気付きやすいのだと思います。
ただ、殺戮にいたる病よりは万人が読める作品で、そういった意味ではオススメです。
読後の結論としては、女は狡猾という感じです。

イノセント・デイズ

考えさせられる小説だったと思います。
死刑制度とか、マスメディアとか、愛されることとか。
私としては主人公に純粋さよりも臆病さを感じました。
他者の視点から主人公の人生を追っていく構成は面白かったです。
ミステリではなかったですが、それなりに面白かったと思います。

息吹

「商人と錬金術師の門」
未来も過去も変えられないタイムトラベルを描いた小説。
すべて定まった出来事だが、違う視点からの事実を知ることで救われるという希望のある小説でした。

「息吹」
肺を交換することで生き続けることができるという世界の仕組みが違う小説。
その世界の理を探求するという内容でした。
抽象的で難しいですが面白い作品。

「予期される未来」
自由意志は存在しないというテーマで書かれた小説。
落語みたいなオチが面白かったです。

「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」
人工ペットの盛衰を描いた中編。
テクノロジーと倫理がテーマです。
今後1世紀以内には有り得そうな未来が描かれていて、人工ペットを巡る社会問題や運用の問題などが丁寧に想像されていました。

「デイシー式全自動ナニー」
子守ロボットの盛衰を描いた作品。
機械に育てられた子供がどうなるかが上手く想像されていました。
これもテクノロジーと倫理がテーマでした。

「偽りのない事実、偽りのない気持ち」
人は自分に都合がいいように記憶の中の事実を捻じ曲げて真実を作る、という真理に切り込んだ作品でした。

「大いなる沈黙」
オウムと天文台に共通点を見出し物語に仕立て上げた作品。
意外性に富んでいました。

「オムファロス」
考古学と物理学から世界を探求する作品。
神を信仰しながらも世界を知ろうとすることをやめない人の業が描かれていました。

「不安は自由のめまい」
もう一方の選択肢を選んだときの世界を知ることができる世界。
そんな中で起こる問題を描いたアイデアの光る1作。

どの短編も面白く、自分の価値観を改めさせるぐらいの影響力のある作品でした。

イモータル

イマイチ面白さがわかりませんでした。
主人公の生き方に触れていく物語かと思ったら、歴史小説になり、最後は幻想譚といった感じでした。

それをまとめるのが哲学というキーワードだと思うのですが、そこがわかりにくい。
哲学をエンタメで伝えるというのであれば、少し難しすぎるように感じました。かといって、哲学全振りな小説かと言われるとそこまでの内容は詰まっていないと思いました。

歴史小説部分はそれ単体で面白かったです。

オススメはしにくい作品ですね。
とりあえずソフィーの世界を読みたいと思います。

イリヤの空、UFOの夏

こういう全部を細かく明かしてはくれないけどちゃんとわかるっていう作品は好きです。
1,2巻は日常の中に非日常が紛れ込みつつ日々が進んでいくのですが、3巻の途中から一転して非日常になり、それでも主人公が日常を取り戻そうとしていくのが印象深いです。

SF的ガジェットは少なく、そういう描写もあまりないのにちゃんとSF小説でした。
結局主人公は大人たちに与えられた役割を演じていただけなのかもしれませんが、最後にミステリーサークルを作ることで夏に決着を着けるという姿に思わずぐっと涙腺にきました。
いい青春SFでした。

隠蔽捜査

警察ものだがミステリーではなく、派手なことも起きないが十分に面白かった。

インドクリスタル

企業エンタメでもあり、人の成長譚でもあり、異文化交流も描いた物語でもあり、1作に面白い内容がいくつも詰まっている小説でした。
異文化の人たちとの交渉の難しさがよく描かれていました。
それぞれの人たちが物語の中でしっかりと生きている感じがしました。

一方で物語のキー人物である少女が成長していく姿やミステリアスな言動も楽しめる要素の1つです。
登場人物たちの表と裏がしっかりと書き分けられているからこそ、緻密な物語に仕上がっているんだなと思います。

社会学とかが好きな人により一層おすすめできる作品です。
映像化にも期待したい。

上田文人の世界 ~言葉のないゲームはどのように生まれたのか?

各作品の作り手としての思考や制作の物語を楽しむことができました。
コンセプトアート、絵コンテといった資料も充実しており、ファン必読の1冊といったところです。
上田さんの次回作も首を長くして待ちたいと思います。

宇宙の戦士

ファシズムとかその辺の議論はどうでもいいとしてもsf、戦争モノとして面白かったです。
思想についても学べる部分がありました。

宇宙のランデヴー

ラーマの設定と描写は素晴らしいものでしたがこれで終わり?って感じでした。
まさか謎は謎のままとは…。
消化不良なところがどうしても好きになれません。

海と毒薬

読んだ感想は虚無です。
登場人物たちの無感動さが読み手にも伝染します。
罪悪感が人を苦しめるということがありありとわかる作品でした。
気持ちが元気なときに読むことをおすすめします。
読んだあと間違いなくぐったりします。

海の味 異色の食習慣探訪

人間の好奇心は偉大だと感じさせる一冊です。
過去に食されていたということがわかる文献+実食した感想がそれぞれの海洋生物に対してまとめられています。
味については想像できるほど細かく書かれており、興味を掻き立てる一冊となっていました。

海辺のカフカ

読み心地のよい幻想譚でした。
特に下巻後半部分は文章もいいし、それによって思い起こされる映像もいい。
神話や古典の内容をモチーフにしているのはわかりますが、知識不足なのですべてを理解することはできず。
文章だけでなく、物語自体も楽しめる、気にいることができた作品でした

裏世界ピクニック

私のツボでした。
くねくね、八尺様などの2ch怪談の怪異がひしめく異世界を、友達を探すために女子大生2人が冒険する物語です。

まず、一時期2ch怪談にハマった身としては、それを再解釈して物語にしているところがすでに面白かったです。
懐かしみながら読み進めることができました。

加えて怪異たちの倒し方として、歴史的背景に則った方法+銃火器といった現代技術で立ち向かうというやり方が、私の好きポイントで楽しく読めました。

百合要素は薄味な印象。
続刊で次第に濃くなるのでしょうか。

今作、ねらー、オタク、百合豚向けの作品ですよね?
私はもちろん続刊も買いますよ。

裏世界ピクニック2~4

3で物語が結構進展したなと思ったら、4で2人の関係進みすぎでしょ…
40キロ走行だったのがいきなり120キロのフルスロットルって感じでした。
アニメも続巻も楽しみです。
元ネタとなっている洒落怖の話も再読しようかと思っています。

裏世界ピクニック5

2人の関係がさらに進展して、終始口角が上がってしまう内容でした。
大筋の物語がさほど進まない巻だったので、おやつ感覚で読めて楽しめました。
空魚と鳥子のイチャイチャは、カードキャプターさくらのさくらと小狼のそれと同様に、無限に見ていたいやつですね。

裏世界ピクニック6

今巻は1冊1話の構成で、大筋の物語も大きく展開する1冊となっていました。
寺生まれのTさんの話の性質上、ホラー要素は薄かったです。
しかし既存キャラの掘り下げや前巻登場の新キャラの展開についても描かれており、まだまだ話が続きそうに感じられました。
今後の展開も楽しみです

裏世界ピクニック7

一旦葬式という形で決着なのでしょうか?
まだ冴月関連の話は終わってなさそうですし、霞の話もあるし、空魚も裏世界に取り込まれつつある怪しい感じもするしで、話はまだ続きそう。
今回はこっくりさんをハッキングというところが斬新で印象深かったです。
次巻も楽しみ。

裏世界ピクニック8

もうこれエッチすぎる…
二人の関係性も1つ区切りがついたところで、これで終わりでい良いのではという満足感でした。
それはさておき怪奇とのファーストコンタクトという面白いキーワードが出てきたので、次巻はより怪奇との関わりが深くなる物語展開が期待できますね

[映]アムリタ

してやられたって感じですね。
ミステリっぽいけど、現実味がなさすぎるのでホラーってところですかね。
短いのによく練られていて面白い作品でした。

永遠の森 博物館惑星

芸術小説とSFが見事に融合した作品でした。
最初数話の短編は別にSF要素なくてもいいような、でも芸術作品を取り巻く物語として面白い内容でした。
しかし5話目以降はSF要素も物語としての軸として立ってきてより面白く仕上がっていました。

芸術の幅も広く絵画、彫刻、ダンス、歌と様々な作品を軸に物語が作られていて、一口に芸術といっても色々あるということを感じさせ楽しませてくれました。
お気に入りの短編は享ける形の手、嘘つきな人魚、ラヴ・ソングです。
SFとしても、芸術作品に纏わる小説としても素晴らしい作品でした。

エロマンガ表現史

面白かったです。
エロマンガ特有の表現方法や擬音などの誕生と発展の歴史を丁寧に研究解説しています。
マンガの表現技法についての学術的著作といえます。

エロ系のコンテンツだけは研究に値しないと、暗黙のうちにそう扱われているのはおかしいと述べており、その通りだと感じました。
私もやましい気持ちでもやらしい気持ちでもなく、マンガ好きとしてそのの表現についてより詳しく知りたいという純粋な気持ちから今作を読みました。

おっぱい表現から始まり、乳首残像、触手、断面図、規制についてなど、興味深い内容が詰め込まれていました。
400P弱ありますが、物足りないぐらいです。

漫画家へのインタビューも多く、表現に対する気持ちを知ることもできます。
参考資料として1コマや1ページが大量に入っているところもいい。
参考になりました、いろいろな意味で。

これは誇張でもなく、マンガが好きなら男女関係なくマンガに対する知見が広がるいい作品だと思います。
オススメです。

ちなみに、笑ったサブタイは「すべてのおっぱいは繋がっている」「人類と「触手」の和解」「一人歩きする「らめぇ」」です。
それと、スマホ等で画像を拡大するときに、「画像をピンチアウトして」という説明より、「画像をくぱぁして」という説明のほうがわかりやすいという話にめちゃ共感しました。

円環少女1バベル再臨

長谷敏司さんの作品ということで手をつけたが、わかりにくくて下手でした。
魔法の設定は面白い。
2巻も買ったのでとりあえず読みます。
きずなちゃんかわいい。

エンダーのゲーム

起承転結の承の部分が長すぎる。
正直あまりのめりこめなかった。
でも映画は気になるので見てみる予定。

王とサーカス

シリーズ前作未読ですが楽しめました。
国際情勢をうまく謎に絡めた展開で、多段に謎が解決していく構造も見事だと思いました。
報道メディア批判の要素も含まれており、主人公の心情を通じてそれについて考えさせられました。
全体的にまとまりのある高品質な作品でした。

オウムアムアは地球人を見たか?

オウムアムアが地球外生命体によって作られた天体だという仮説に、いかにして至ったのかという話を一望できる作品でした。
専門知識はなくとも読めるし、地球外生命体についての仮説についても包括的に学べます。
宇宙へのロマンがあふれる一冊でした。

大泉エッセイ 僕が綴った16年

読みやすく、面白いエッセイでした。
文章自体が読みやすいもので、かつ一つの話が4P程度なので、軽く読み進めることができます。
9割が笑い話ですが、1割は真剣な話だったり、切ない話だったりで、それが全体としていいアクセントになっていました。

大泉洋という人物をそれほど詳しく知らないという人でも、面白い人のエッセイとして読むことができると思います。
水曜どうでしょうのファンならなおのこと楽しく読めるのではないでしょうか。

オー!ファーザー!

伊坂作品としてはイマイチな感じがしました。
軽妙な会話劇や設定の突飛さ、明らかにそれとわかる布石の数々等はまさしく伊坂作品という感じでした。
だからこそラストにどうやって収束していくのかという期待感が高まりながら読んでいました。
しかし、意外にも回収されない布石があったり、雑に物語が進んだりして、尻すぼみだった印象です。

全体を通して言えば会話劇に笑わせてもらったし、教訓的な内容にも頷ける部分があったので、楽しい作品だったと思います。
でも他の作品のほうが私が好きです。
4人の父親たちのキャラは好きです。

大人のための残酷童話

文字通りお子様NGな内容で、いろいろな意味で刺激的でした。
昔話や童話、神話、近代文学など様々な話をモチーフに、どの話も数ページでまとまっています。
話の締めの教訓はどれもユーモラスなものでした。
手軽に読めて面白い、いい短編集でした。

オレたちバブル入行組

解錠師

ミステリーというより青春ラブロマンス小説って感じでした。
トラウマによって喋れなくなってしまった少年が、愛する女の子のために金庫破りの才能を磨いて仕事をこなしていくといった物語でした。
少年の成長と愛する人を思う気持ちを色鮮やかに描いた瑞々しさを感じる小説でした。

海賊とよばれた男

読むプロジェクトXって感じ。
面白いには面白いけど長すぎで読むのに疲れました。
小説ではあるが、小説として読むものではなかったですね。

海底二万里

ロマンの塊でした。
世界中の海中を巡る冒険には憧れを感じざるを得ません。
自然と動物の描写が丁寧で素晴らしく、容易に映像が浮かび上がりました。

一方で、それに終始しているという面もあり、物語としての軸がなかったように思えます。
読書で観光ツアーをしているような作品でした。

影の中の影

ハードボイルド好きのツボをこれでもかと突いてくる作品でした。
中国vs公安の陰謀vs伝説の諜報員+任侠あふれるヤクザたちと陰謀に巻き込まれた人々という構図。
摩天楼での攻防戦。
わかっているお約束の展開が続きますがそれでも面白い。
この種の作品の王道をそのものでした。

しかも諜報員がクールでスマートなおっさんで、もちろん悲惨な過去を抱えていて、得物が日本刀って詰め込みすぎでしょ。
こういうのでいいんです。
物語の背景は大きな問題抱えているけど、展開自体はそんなの意識しなくても楽しめる。
重くるしいようで軽く読める、いいエンタメ作品だったと思います。

華氏451度

今まで読んだことのないディストピアものでした。
設定としてはメディア統制された世界というありがちなものです。
しかしディスピアもので感じられる閉塞感や陰鬱とした雰囲気は薄く、詩的な文体によって幻想的な世界を味わうことができます。
思考しなくてもよい世界は幸せなのでしょうか。

火星人ゴーホーム

火星人という超厄介な生物?が世界に現れたら社会がどうなるのかというとことが丁寧に書かれていて面白かったです。
また、ユーモアも軽快で室内で一番人気のゲームとか、ラストの一文に思わず笑ってしまいました。

火星年代記

連作短編だが、詩的な話もあったり抽象的な話もあったりと様々なジャンルが内包されていて新鮮味があるSFでした。
全体的に漂う廃退的な雰囲気も素敵でした。

火星の人

火星で農業?いいえサバイバルです。
でも主人公の見事な問題解決能力とノリのいいジョークでサクサク読める。
しっかりとしたSFなのに軽い感じなので普段SF読まない人にもオススメ。
名作です。

象られた力

特に表題の中編が素晴らしく、図形が力や意思を持つというアイデアに唸りました。
虐殺器官もこの中編から派生しているような気がします。
作中内で視点が目まぐるしく変わり、読みにくかったのですが、物語の種明かしで納得しました。
映像でも見てみたい作品です。

短編、中編集としてはまとまりに欠けていました。
最初の短編「デュオ」は、それはそれで面白かったのですが、SFではなくオカルト寄りの作品だったと思います。
他は表題と舞台設定を共有するものが1編、ファンタジーものが1編と闇鍋感。
いろいろな味が楽しめるという意味ではアリかなとも思います。

彼女がエスパーだったころ

エセ科学に対して人文学的、科学的視点から切り込み、読者に倫理を問いかける連作短編集でした。
どの短編も読者に対する問いかけで終わるような形となっており、どの考えが正しいのか、そもそも正しさとは何なのかを思考することとなりました。
社会学的小説だと思います。

個人的には宗教というキーワードを軸に短編が構成されていてほしかったです。
表題作とロボトミーの話以外は宗教が絡んでいたので、せっかくなら統一されていてもよかったと思います。
宗教と倫理、胡散臭い科学要素は相性がいいですからね。
短いながらも中身の濃い作品でした。
おすすめです。

神々自身

第二部のパラ人の設定と描写にはあっぱれ。
驚かされました。
しかい第三部は助長な感じがして、全体的には可もなく不可もなくといったところです。

神々の午睡

三大宗教とそれにまつわる世界史の話を、コメディー色を混ぜつつ描いた作品でした。
世界史のことをある程度知っていれば元ネタはすぐにわかります。
宗教という言葉がもつ固さをコメディー要素で取り払いつつ、所々でその本質を突く。
読みやすく、わかりやすく、面白い作品でした。

神々の山頂

ロードムービー的な小説でした。
ミステリ要素を加えつつ、最終的に山頂を目指していく孤高の人の姿を、第三者視点で追っていく物語展開です。
どうしようもなく物事に熱中する性や、登山の描写、山の情景が見事に書かれていました。
登山について詳しくなくても、心から熱くなれる小説でした

神様の裏の顔

軽く読めるしミステリとしても結構面白い作品でした。
作者が元芸人というだけあり、軽妙でコメディチックな文体を楽しむことができます。
またミステリの構成もなかなかに見事。二転三転する展開についページをめくる手が進みます。
ただその展開は若干強引だった気もします。

あとネタが完全にアンジャッシュでした。
オリジナリティには欠けていました。

口語文が多く地の文が少なめなので、ほとんどラノベ感覚です。
トリックを知ったあとにもう1回読み返すのもまた一興な作品だと思います。

紙の月

カネは人を変える。
主人公の複雑な感情が丁寧に描かれており、うわっめんどくさって思わず呆れてしまうほどで、内容もなかなか面白かったです。
カネでは幸せも愛も一時的にしか買えないのですね。
それはそれとして、美人のお姉様に何から何まで面倒みてもらう人生を送りたい。

仮面ライダーW Zを継ぐもの

そのまんま映像を小説にしたって感じでした。
むしろ今作の映像版が見たいぐらいです。
本編の合間の1ストーリーとして丁寧に話が構成されているし、キャラクターの再現度も高いし、映像を思い浮かべながら読み進めることが楽しかったです。
Wが好きなら読むべき作品でしょう

硝子の塔の殺人

サスペンスの様相の導入から始まり、王道的なキャラクターとストーリー展開で飽きさせず、最後に見事に裏切ってくれました。
文章の端々に置かれた布石が回収される様は圧巻です。
また、本作全体が1つのプロローグ的な形で終わっているところも好きです。

本作の大きな特徴の1つは豊富なミステリ知識でしょう。
ミステリ好きには激しく共感を与え、ミステリ初心者には他のミステリに興味を与えるような呼び水となりる。
そして物語の1つの仕掛けとしても作用するというところが上手いと感じました。

気になったのは登場人物をステレオタイプな型に当てはめすぎていて、特に名探偵のバックボーンが薄いというか粗いように感じたところですね。
総じて非常に楽しめるミステリでした。
ミステリマニアがミステリ初心者に勧める作品リストの仲間入りを果たすような作品だったと言えると思います。

空の境界未来福音

箸休め的感覚でさくっと読めてかつそれなりに面白いです。
ところでDDDの3巻はもう発売されないのですかね?

カラハリが呼んでいる

読むナショジオでした。
カラハリの風景と動物たちの生態が事細かに描かれいて、情景をありありと思い浮かべられる作品でした。
ノンフィクションでも起伏のある展開となっており、小説さながらといったところです。
もっと写真や詳細な地図も載っていると嬉しかったと感じました。

川の深さは

陰謀論の設定が面白い小説でした。
新興宗教のテロ事件が実は国家の策謀に繋がっていたという内容は、いかにもありそうなもので興奮させられます。
それに加えてアクションシーンも派手に描かれており、迫力がありました。内容に合わせて現代批判も織り交ぜられ、考えさせられます。

一方で、登場人物たちの個性や人間関係の展開がマンガチックすぎる印象でした。
内容や文体を硬派に仕立てているだけに、そこで生きている登場人物たちがアンバランスに映って見えました。
ハーフボイルドな感じです。

内容自体は好きなものだったので、亡国のイージスも読んでみたいと思います。

騎士団長殺し

異世界ものでした、部分的に。
主人公が1枚の絵画を見つけ、そこから奇妙な出来事が起こるという、ミステリ風かつ幻想的な要素を含んだ内容に仕上がってました。

村上春樹の作品は結末なんかはどうでもよくて、過程が重要であると考えています。
今作もまさしくそういう作品でした。
文章を読み進めることが楽しく、また面白かったです。
そこはさすがに上手いし綺麗です。

ただ1Q84のときも思ったのですが、全体的にエンタメに寄せすぎな気がします。
今作もそういう傾向でした。
そして1番しっくりこなかったのが2部の最後です。
突然震災の話が出てきたことが不自然でした。

話をそれとなくまとめている感じがらしくないです。
それでいて2部終わりとなっていて3部の可能性も示しています。
ノルウェイの森のように過程のまま終わるほうが私は好きです。
村上春樹作品が久々だったので楽しめはしましたが、ノルウェイの森を読んだ時ほどの衝撃はありませんでした。

母は、村上春樹はボジョレーヌーボーのようなもので読むなら初版買いでしょと言っていました。
イベント感があるというのはわかります。
私にとって村上春樹はキムタクみたいなもので、どんなものでもそれにしかならないけど、なんだかんだで好きといったところです。

キッチン

収録されている三編は、どの話も大切なものを失くした喪失感と孤独感が染みるように伝わる作品でした。
誰もが感じるような、言語化しにくい感情を上手に描写できていた点が素晴らしかった。
短めで読みやすいし展開も単純なので、読書と聞いて顔をしかめるような人にもオススメです。

キャプテンサンダーボルト

帯の謳い文句通り、いいエンタメ作品でした。
個々のエピソードがラストの展開に結びついていく面白さ、会話劇の愉快さ、読後の満足感とどれをとっても一級品だったと思います。
陰謀論、アクション、ミステリーが好きな人なら間違いなく楽しめる1作です。

給食のおにいさん

サクサク読めるしそれなりに面白い。
私も給食調理員になって仁奈ちゃんみたいな子につきまとわれたいです。

近畿地方のある場所について

単行本にて再読。
様々な視点、媒体から少しずつ怪異の情報を明かしていく手法が、ネット小説のフォーマットに最適だったのだなと再認識しました。
本で一気読みより、焦らされながら恐怖を待つ読書体験のほうが楽しかったです。
その時点が初見だったからといのもあるかも。

改めて読むと最後のほうは駆け足気味だったなと感じますが、総じてじわじわとずっと不気味さを感じさせる展開を楽しませてくれるいい作品でした。
加えて単行本は取材資料というサービス要素が充実していたり、表紙や帯にもこだわりがあったりと、実物ならではの良さがあって素晴らしいと思いました。

羆撃ち

細かく丁寧な描写のおかげで、森に潜んで狩りをする感覚、食事の味、フチの勇敢さや可愛らしさを味わうことができました。
やっぱりノンフィクションもので犬が出てくるものは大抵いい作品ですね。

グミ・チョコレート・パイン グミ編

むず痒い気持ちで読み終えました。
私も陰キャなので主人公たち3人組に共感しまくりでした。
重要なのは打席に立ってバットを振ること、痛いほど伝わってきました。
下ネタも多くて笑えるところもよかったです。
続編は気が向いたら読もうかなって感じです。

クリムゾンの迷宮

先が気になる展開でサクサク読み進めていくことができました。
内容は出来のいいフリーゲームをやってる感じで、終わり方もまあこんなものかと思う程度の無難なものでした。
エンタメとしては充分に面白い作品だったと思います。

グラスホッパー

黒い家

ゲームの王国

歴史小説でありSF小説であり、なによりも壮大な恋愛小説でした。
上巻の内容は完全に歴史小説。
実話と創作の境界の区別がつきにくい。
それぐらいのリアルさを感じました。
登場人物たちのオカルトめいた能力も、カンボジアの農村という舞台設定だから不自然さはありませんでした。

一転して下巻では、主人公たちが考えるゲームの王国を作り上げようとする近未来小説でした。
ゲームを遊ぶ上で楽しむことが必要となるシステム、それが組み込まれたゲームを私もやりたいと思いました。
そしてそのシステムが現実世界にも適用されたら、今よりももっと生きやすい世界になるのでしょうか?

結末としてはゲームの王国が作られないまま終わりました。
ゲームと現実は違うという結論が突きつけられたようで、悲観的に感じれられました。
エンタメとして面白いとは言い難いです。
話は冗長だし人間関係も複雑で終わり方も正直あっけなかったです。
しかし、いろいろなことを学べるいい小説でした。

煙か土か食い物

空白を嫌うが如く、改行が少なくそれでいてテンポ感のある文章が特徴的な作品でした。
文体が主人公とその家族の特徴を表しているかのようでもありました。
でも読者を振るいにかけているかのようにも感じました。
最初の数ページで合う合わないがはっきりすると思います。

ミステリっぽいストーリ仕立てですが、最終的には家族小説でした。
ミステリとしてはイマイチですが、家族小説としてはなかなか面白いものだと思います。

とりあえず数ページ読んでみることをおすすめします。
個人的にはそこまで刺さるものではありませんでした。

ケモノの城

半分ノンフィクションである小説です。
北九州殺人事件を元ネタにしてあるだけあり、小説内で展開される事件の内容も常軌を逸しています。
ただでさえ元ネタが創作物みたいな事件なのに、それをさらに小説にコンバートしているので、より猟奇的なものとなっています。

犯人を悪のシンボルとして見せるような構成はうまいと思いました。
また、被害者の独白で事件の内容を語らせるのも、リアリティを引き出す演出としてよかったと思います。

面白い小説ではありましたが、気持ち悪いほうのグロさがよく表現されているので、万人向けではないですね。

そして今作を読んで思ったのは、事実は小説より奇なりということですね。
改めて北九州殺人事件の内容をネットで読みましたが、こんな事件が現実に、しかもわりと最近に起こっているというのだから恐ろしいです。
今作を読むのであれば、この事件について知っていたほうが楽しめると思います。

献灯使

難しかったです。
老人たちは死ななくなり、こどもたちは衰弱していくようになってしまい、鎖国状態となった日本での話です。

表題作は、主人公の日常生活の視点から、そういった舞台背景をそぞろに美しい文章で描いた作品でした。
琴線に触れる文章が多く噛み締めながら読みました。

文章の部分部分は素晴らしいのですが、物語の展開がわかりにくかったです。
きれいな文章の段落をつなぎ合わせてできた物語って感じ。

表題作以外の作品も同様で、文学性が強く読みにくかったです。
ディストピアものということで読みましたが、期待していたエンタメ性を感じることはできませんでした。

鋼鉄都市

SFとミステリのバランスが高水準で取れている素晴らしい作品。
流石ロボット工学三原則の生みの親だけあってロボットのテーマもうまく扱われていました。
名作ですね。

ここから先は何もない

宇宙、神学、IT、生命、人類史などの諸々のロマンを詰め込んだ、いいSFミステリーでした。
散りばめられたピースが嵌っていく展開と壮大なテーマで楽しめる内容でした。
タイトルの意味も、物語の謎に対する回答への虚無感を表すのにピッタリでした。

パンスペルミア仮説への大胆なアンサーが提示されていたのも興味深かったです。
全体の物語のテンポはいいものの、登場人物たちが思案して謎を解明するシーンはちょっとくどさを感じました。
いろいろな要素が入っているものの、予備知識がなくても楽しめるような作りで、わかりやすく楽しめる作品でした

九つの物語

死、食、書、愛って感じの小説でした。
死んだ兄の幽霊が見える妹の日常の物語で、既視感のあるような設定ではありました。
しかし、キャラクターの魅力もあってか、重苦しい雰囲気はなく、日常を仔細に描いているため丁寧な作品だなと思いました。
無難におすすめなライト文芸です。

今夜、すべてのバー

アルコールについてのエンタメ論文といった感じの小説でした。
アルコールの知識と人への影響の分析を説いていますが決して堅苦しくなく、軽妙な語り口とユーモアによって美味い酒を飲むようにスムーズに頭の中に入っていきます。また、人の生き方についても考えさせられました。

禁酒をしたい人は今作を読むといいかもしれません。
禁酒とまではいかなくても酒の飲み方が少しは変わると思います。
酒好きの作者が書いた半分エッセイな小説なので説得力抜群です。
特に酒が好きな人にオススメな小説だと思います。
合わせて吾妻ひでおの失踪日記を読むとさらによいかも。

ゴルゴダ

読んでる途中でどこか既視感を覚え、これほぼコマンドーじゃんってことに気づきました。
話の本質とか重みとかは全然違いますが、表面だけ見ると派手にドンパチやるシーンとか似ている感じがしました。
ただコマンドーと違ってガバガバさが全然なく、物語が破綻していませんでした。

それはそれとして、今作は復讐モノとして常にいい緊張感を保ったまま物語が進み、息もつかせぬ展開に期待してどんどん読み進められます。
単純な個人に対する復讐にとどまらず、国の制度や体制にも言及するような内容になっており、エンタメとして上質なものになっていました。
おすすめの一作です。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

サブカル小説?だと思いました。
物語は陰鬱としており、虚言癖、サイコパス、引きこもり、虐待等々、人の暗い部分が要素として盛り込まれています。
これらが実弾となって心を貫くことはなかったです。
読むのが少し遅かったようです。
10代の頃に読みたい作品でした。

殺戮にいたる病

してやられました。
エピローグで犯人が捕まるシーンからスタートするのでサスペンスだと思いながら読み進めました。
犯人、自分の息子を犯人だと疑う母親、犯人を追う元警部補の3人の視点から展開し、読者側は常 に物語の全貌がわかっている状況で読み進めているかのように錯覚します。

しかし最後の1段落にすべてが収束します。
最終盤は違和感だらけで読み終わって呆然。
思い返せばちょっと妙だなと思う箇所がいくつかありましたが、情報の与え方の上手さで見事に騙されていました。
個人ブログを見て「確かに」と 思うところがいくつも。
再読するとより楽しめそうです。

紛うことなきミステリーでした。
非常に面白くて大手を振ってオススメしたいところですが、裏表紙にホラーと書いてある通り、エログロ要素が結構きつい。
そういう気持ち悪さも楽しめる人には是非とも読んで欲しい1冊でした。
ほんとあっぱれな作品です。

聖の青春

読んで強く心を打たれました。
まずタイトルがいい。
今作は村山聖という重い病気を抱えた棋士の短い一生の記録ですが、聖の一生とか人生ではなく青春です。

タイトル通り、将棋をし闘病し遊んだ日々が書かれています。
読んでいて、聖の1日1日を力強く生きた姿がありありと思い起こされました。

今作は時間の重さと感情の激しさを強く感じさせます。
読み終わり、自分の生き方について振り返らざるを得ませんでした。
自分の中で迷った時には今作をもう一度読もうと思いました。
下手な自己啓発本を読むよりずっと貴重な読書体験ができる一作だと思います。
多くの人にオススメしたい。

サハラの薔薇

読むB級映画って感じでした。
ベアニキの知識ですが、砂漠でのサバイバルパートは水足りなくて死んでるだろと思ってしまいました。
サバイバル、人狼、ドンパチありで最後は世界規模の陰謀まで出てくるので読んでいて飽きませんでした。
エンタメ小説として十分に楽しめる作品でした。

ザリガニの鳴くところ

寂寥を噛み締めるような小説でした。
翻訳が(おそらく原文も)素晴らしく、美しい文章で構成された作品でした。
主人公の孤独、偏見、愛憎を追体験して苦しくなる、でもページをめくる手が止まらないと感じさせる展開と文章力でした。
私の中で好きだと言える小説となりました。

残穢

ドキュメンタリー風ホラー小説で、その体裁がより一層怖さを引き立てているうまい作品だと思いました。
心霊現象の原因を調査していけばしていくほど、読者にも怖さが沈殿していくかようでした。
穢れは人に伝染すると作中であるように、本書を持っている自分も伝染しているのかも…と思うかも?

三体Ⅰ

感想は帯に書かれている宣伝文句通りです。
幼年期の終わり+果てしなき流れの果にって感じだったし、エンタメ的でもあり、文学的でもあるって感じでした。
三部作というところから、星を継ぐものシリーズも彷彿とさせます。

今作で起きる不可思議な現象や、三体というVRゲームについて、物理法則が崩壊するとは何なのかといった謎に対するミステリー要素と、それに対する解答としてのSF要素が面白かったです。
謎自体はすべてこの一作目で解き明かされます。

情報技術的要素も多かったところが個人的には楽しめました。

この一作目で一旦物語としては完結していますが、その上でまだ二作残っています。
今後人類がどういう方向に進んでいくのかという巨大なスケールの物語の展開があるかと思うと、残り二作品の翻訳が待ち遠しい限りです。
発売前から話題になるほどの作品なだけあり、素晴らしい作品でした。

三体Ⅱ暗黒森林

圧巻です。
前作の絶望的な終わり方からどうやって物語が続いていくのだろうと、全く予想できていませんでした。
世紀をまたいで物語が進み、当たり前のように宇宙にも進出するような、圧倒的にスケールアップした展開になっているとは思ってもいなかったです。

今作はSF好きだけでなくミステリ好きも満足させるような構成でした。
上巻では面壁計画を軸に頭脳戦が繰り広げられ、暴かれる作戦の内容に驚かされます。
下巻では上巻で打たれた布石をきっちりと回収します。
サブタイトルもミスリードを誘って読者の裏をかく要素となっており絶妙ですね。

今作最大の見所は、やはりフェルミのパラドクスへの回答でしょう。
わかりやすい論理かつ納得のできる内容で衝撃的でした。
今後は今作の定義がデファクトスタンダードとなり、宇宙人との交流をテーマとした作品が作られるのかもしれませんね。
あの終わり方から三作目にどう繋がるのか、今から楽しみです

三体Ⅲ死神永生

ついに読み終えてしまいました。
発売日当日に一部を読み、面白すぎるあまり読み終えてしまうのがもったいなく思えて少しずつ読んでいましたが、終わってしまいました。
圧倒的興奮、百億の昼~を読んだときのような虚無感、そして読後の寂寥感、恐ろしいエンタメでした。
傑作です。

リアルタイムで星を継ぐもの三部作を読んだ人たちは、その時の衝撃を今シリーズで再び味わうことができたでしょう。
これ程のものが今後半世紀以内に出てくることが想像できません。
また、これをたった1人の人間が考え書き記したとも到底思えません。
このシリーズを読めたことに本当に感謝します。

内容的感想は訳者あとがきで書かれていることとほぼ一緒です。
あの綺麗に終わったⅡから正当に続き見事に完結していました。
緻密な理論とシミュレーションによって純粋なハードSFとして成り立たせていて、かつ日本のサブカル的な要素も取り入れることでエンタメ性も両立していました。

膨大な文量にも関わらず、少しもダレることがなかったのは、人工冬眠によって大幅な時間のスキップをしてスピード感を出していたからでしょう。
今作ではそういった構成のうまさも際立っていました。
前作で感じた時間空間の広がりが、いかに小さかったかと思わせるスケール感でした。

世間的にはⅡのほうが綺麗に終わり評価が高いらしいですが、個人的にはⅢのほうが衝撃的な終わり方で好きです。
このシリーズがn回前の宇宙の記録であるというメタ構造だと解釈できる締めに気付き、ただ驚嘆しました。
大作としてふさわしい終わり方だったと思います。本当にこの作品を読めて幸せです。

それはそうと三体ドラマ化って相当高いハードル超えなければならなそうですね。
本家が頂点すぎてどう作っても霞みそう。

三体X観想之宙

ダレン・シャンじゃんこれ!って感じでした。
本編で詳しく語られなかった要素をうまく拾ってつなぎ合わせられていました。
恋愛的要素が強くラノベっぽさが否めないというところもありますが、それでも十分な満足感がありました。

特に第三部の神話が語られていくところは、本編よりもさらに巨大なスケールで話が展開していき読み応えがありました。
ここもラノベ感はありますが、想像力を試されるいいSFだったと思います。
相当な出来の二次創作というところで、三体ロスで空いた隙間を埋めるには最適な作品だったともいます。

三体0球状閃電

三体の前日譚かと思いきや、三体の要素は匂わせる程度でした。
球電を起点に量子論を使ったストーリー展開は鮮やかで見事なハードSFでした。
量子論の特性とラブロマンスの相性もよく、完成度が高い一作でした。
三体を期待して買うとちょっと拍子抜けかもしれません。

三匹のおっさん

痛快活劇でおっさんたちのキャラもたってて面白かったです。
あと早苗ちゃんかわいい。

三匹のおっさん ふたたび

続編も特に言うことなく面白かったです。
早苗ちゃんかわいい。

しあわせの理由

専門的な内容はいつも通りわからんのですが、哲学的要素は印象深かったです。
特に適切な愛と表題作ですね。
闇の中へや愛撫などはハードボイルドな雰囲気が感じられ、どの短編もそこそこ面白かったです。

詩羽のいる街

この作品が好きです。
人に親切にすることを仕事とし、お金も家も何も持たずに生きていく詩羽という女性と、その女性に関わった人たち4人それぞれの視点から物語は語られます。
詩羽の言動に触発され人々が変わっていく様子に面白さがあり、読者もいろいろ考えさせられます。

今作のいいところは、物事の核心に触れるような内容が多いにも関わらず説教臭さがあまりないところだと思います。
読者は天の邪鬼になり噛み付くことなく、自分の考え方を見つめ直すことができるでしょう。
一方で今作で語られることが全てではなく、もっと複雑だとも思いました。

今作のようにすべてをうまく回して生きていけるとは到底思えませんが、論理に基づいて人々が協力しあってみんなが幸せになるように生きていけたらいいなと、希望が持てるような作品でした。
読後感も非常に気持ちの良いものでした。
非常におすすめの作品です。
あと「戦まほ」のコミカライズもほしい。

塩狩峠

最後のシーンでは思わず涙が出そうになりました。
生き方について考えさせられるもので、中高生のうちに読んでいたら強く影響を受けていたかもしれません。

慈雨

ミステリというよりかは人間関係に焦点を当てたドラマって感じの小説でした。
ミステリとしての結末が気になりつつも、登場人物たちそれぞれの心理描写とその発展を面白く感じながら読みすすめることができました。
でも、最後タイトルを主人公にそのまま語らせたのは微妙だなと思いました。

屍者の帝国

抽象SFとして楽しめました。
ただ中盤は盛り上がりに欠ける印象。
アニメ映えしそうなので映画は楽しみです。

屍人荘の殺人

状況が特殊なだけで王道のミステリーでした。
事件が起き、美少女がそれを解決するキャラノベで読みやすかったです。

.個人的に面白かった点は3つ。
1つめはミステリにありがちな登場人物多くて誰が誰だかわからなくなる問題を、露骨にわかりやすく説明して解決していたところ。

2つめはミステリの色々なトリックや要素をできる限り詰め込んでいたところ。

3つめはある殺人のWhyとWhatをやりたいがために、今作の中で起きる特殊な状況を作り出してるように感じられたところです。

状況だけが変化球なだけであとはしっかりしたミステリだったし、キャラも立っていて面白かったです

下町ロケット

池井戸さんらしい経営バトルものの小説で、専門的な知識は不必要で読みやすく、困難をなんとか乗り越えていく様子にグイグイ引き込まれ、読後感は爽やかさを感じさせ面白かったです。
来期の日曜ドラマということでよみましたが、これは期待できますね。

疾走

結局にんげんは最後にひとりになるのかどうか。
なんとも言えない読後感。
もちろん面白かったです。

知ってるつもり無知の科学

人間がいかにものを知らないか、一方いかに思考する上で高度なことをしているかを認識できます。
本書では認知科学の尺度から、思考における当たり前のこと、そして我々が認識していないことを論じており、読者に自覚とより賢いものの考え方を教えてくれます。

例題や実験が豊富に示されており、より具体的にわかりやすい説明がされています。
個人的に印象深かったのはジグソーメソッド。
思考について理解できる素晴らしい方法だと感銘を受けました。
ネットによって知識が急速に伝搬する時代、本書の考え方は必須だと思います。
現代人必読な本だと感じました。

死なない生徒殺人事件

死神の精度

完成度の高い現代的寓話でした。
主人公は死神で会社員のように数日後に死ぬ人の調査をするという物語で、ファンタジックな要素を含みつつもそれを感じさせない現代社会描写でした。
主人公のキャラクターもどこか抜けているところがあり、死神にしては怖くなく愛嬌があります。

基本的には短編で伊坂独特の文体やテンポで読みやすく、どの話も面白かったです。
最初は死神と呼ばれる暗殺者か何かと思ってましたが、普通に死神だったのはいい意味で拍子抜けでした。
誰にでもおすすめできるいいエンタメ作品だったと思います。

死にゆく者への祈り

渋さとかっこよさに惚れる。

忍びの国

相変わらず読みやすい時代小説でした。
何よりキャラ作りがいい。
主人公は時に情けなく、時にかっこよく人間味にあふれていました。
忍者たちの狡猾さと残忍さ、人間らしさがよく描かれていました。
ただ話の途中で入る注釈は興ざめですね。
軽く読める時代小説としていい作品だと思います。

シャドー81

しゃぼん玉

主人公が田舎の爺さん婆さんたちとの関わりを通して、人として欠けたものを少しずつ取り戻していく愛の物語でした。
心理描写、情景描写が素晴らしく、また詩のようなテンポの良さもあり、読み心地が非常によかったです。
読了後の余韻も深く温まるような気持ちよさでした。

個人的にはタイトルにもある「しゃぼん玉」が抽象的なものでしかなかったのがエンタメ性に欠けていたかなと思います。
何かしら主人公に関わる具体性があるとなおよかったです。
子供時代によく遊んだものとか。

それはともかく、良い読書体験ができるおすすめの一作です。

シャルロットの憂鬱

私もシャルちゃんのパパになりたいと感じざるを得ませんでした。
短編日常ミステリの体裁で話が構成されており、単純に犬のいる物語ってだけで終わっていなかったので読みやすかったです。
まあご都合主義的なところ多く、ミステリとしてはそこまで上質ではなかったです。

しかし、犬が登場する物語としては素晴らしかったです。
特に擬人化が最低限にとどめられており、まったくうっとおしくなかったところがよかったです。
読んでいてつい口角があがってしまうぐらいにはシャルちゃんがかわいらしく描かれていました。
将来はでっかい犬を飼おうと改めて思いました。

自由未来

タイムスリップしたとわかるまでが長い。
そこまでのサバイバル生活もそこそこ面白いですが、そのあとの展開のほうが好きです。
未来社会の設定は面白かったです。
登場人物の癖の強さもあってか、なんだか読むのに疲れました。

首都感染

素晴らしいクライシス小説でした。
致死性60%のインフルエンザが世界中に蔓延、日本も生き残るために東京封鎖を試みるという内容で、その現実味と緊張感に圧倒されました。
ウイルスが爆発的に感染していくように、物語 に没入していきました。
また、本当に起こりそうで怖さすら感じました。

国としての動きに注目しているので、個人の動きへの掘り下げが浅かったです。
それでも相当面白かったです。
今作はあくまで小説ですが、未来を予言しているかのようでもありました。
今作のようなことが起こらないこと、起こったとしても今作のように政府が素晴らしい対応をしてくれることを願います。
(2017年時点での感想)

シュレディンガーのチョコパフェ

硬派なSFなのに軽く読めてしまう短編集でした。
どの作品も50pくらいで読みやすいのに、細かな設定が存在していて、どれも1本の長編にしてもいいぐらいだと思いました。
お気に入りの話はメデューサの呪文です。
設定と物語の構成が素晴らしかったです。

少女七竈と七人の可愛そうな大人

一言でまとめてしまえば村上春樹の模造品って感じでした。
でも今の村上作品より遥かにいい文体だし、少女の描き方や詩うようなテンポが美しかったです。
文学作品が読みはじめてみたいという人におすすめしたい、文学入門編な作品でした。
一定層に刺さると思います。

小説家の作り方

ミステリだと思って読んだらミステリじゃなかった。
私にとって小説って何かなと考えたとき、例え純文学でも「エンタメ」であって所詮は紙の束なのかなと。
でもそのエネルギーは計り知れない。
それと紫さんかわいい。
あなたのための物語もそのうち読みます。

少年と犬

賢い犬が苦しんでいる人々を癒やしていく連作小説でした。
最低限の擬人化と簡素な文体で読みやすく、どの話でも涙を誘う展開が待っています。
地震という扱いにくい要素を使いつつも感動作品としてまとまっていました。
もちろんおすすめですが、個人的にはソウルメイトのほうが好きです。

ジョーカーゲーム

キャラノベらしい軽さと各話のテンポの良さでサクサク読み終わります。
ミステリーとしてなかなかしっかりした出来ですが、歴史的背景がもっと織り交ぜられているとより面白いのかなと思いました。
アニメ見ます。

水素製造法

短編で読みやすく、笑いを誘う心地よさがたまらない一冊。

スカイ・クロラ

まさしく雰囲気小説でした。
最小限の説明と独特の表現とテンポが戦闘機に乗って闘う少年の物語にマッチしていました。
どこか物足りなさを感じる、けどそれはつまらないということではなく、その物足りなさが心地よいという感じでした。

登場人物たちの感情の脆さが映えるいい作りです。

ただ、物語自体の起伏があまりなく淡々と進むので、退屈に感じる人もいると思います。
すべてがFになるより、今作のほうが全体的に調和が取れているように思えました。
結構好みの作品だったので、続編も読むかもしれません。

好き好き大好き超愛してる

まず、単純なエンタメ恋愛小説だと思って読み始め、ギャップに面食らいました。
愛する人の死という定番の筋に沿いつつも、そういった定番の作品とは一線を画しているようには感じました。
セカチューとかのアンチテーゼ的作品らしい。

ただ自分には合いませんでした。
なんとなくわかった感じがするだけ。
一応阿修羅ガールも読んでみたいと思います。

スノウ・クラッシュ

1992年の時点で仮想空間にアバターを投影できるという設定が描かれていることに驚きます。
ニューロマンサーからさらに想像力が発展したということでしょう。
現時点でも、今作で描かれているVR世界にはまだ到達していないですね。

アニメ的な描写も多く比較的ライトなサイバーパンクでした。
一方、歴史・宗教・言語の話が展開されるため、ストーリーとしては小難しい印象。
テクノロジーとそれらのテーマの組み合わせでロマンは詰まっています。

ですが最後はハリウッド映画的な派手さで無理やりまとめていて少し残念でした。

すべてがFになる

トリックが素晴らしかったし、タイトル回収の部分もなるほどと思わされました。
ただ登場人物たち冷静すぎじゃない?人が死んでるのに結構淡々としているところには違和感を感じました。

スローカーブをもう1球

野球だけでなく、レガッタやボクシング、スカッシュなどのスポーツのノンフィクション短編集でした。
当時の選手たちの心境を細かく描いており、それぞれの白熱のシーンが容易に目に浮かんできました。
野球好きはもちろんのこと、スポーツ好きの人におすすめできる一作です。

スワロウテイル人工少女販売処

ユートピア+ロボット+サイバーパンク+ミステリーの闇鍋。
設定は色々な作品のいいところをとった面白いもの、かつ硬派。
だけどキャラの掛け合いとかは軽め。
SFでも中くらいの硬度です。

話は面白かったし終わり方もよかったのですが、全体としてのまとまりがイマイチな気がしました。
ロボット扱うだけあって、愛とか幸福とか心理や哲学がテーマになり、そこがしっかり描かれていてることで深みがグッと増していました。
続巻を続けて読もうかどうか迷い中。

スワロウテイル/幼形成熟の終わり

設定集みたいな作品でした。
物語の核となる要素の人工妖精がどういう背景のもとで作り上げられているのか、またそれを取り巻く問題についても掘り下げられていて面白かったです。
それらを説明するときの会話もクセは強くて読みにくいですが、ある意味で楽しめます。

物語は個と全体の視点で進むことで、規模の大きさを感じさせるような構成でした。
ただ、設定の説明と物語の進行のバランスが悪かったです。
重要な内容がためることなく語られるので呆気に取られました。
しかし、今作によってこのシリーズを好きになってきたので、続けて続編も読みたいと思います。

スワロウテイル序章/人工処女受胎

シリーズの前日譚としても面白かったし、前二作品と比べてよりまとまったいい仕上がりの作品でした。
連作中編として構成されており、中編と大筋の話の起承転結がしっかりしていたので読みやすかったです。
舞台設定の説明も程よく、煩わしさは感じませんでした。

また、いい意味でラノベっぽさが増していました。
登場人物たちの可愛らしさにもスポットが浴びせられており、魅力的な姿が描かれていました。

話、キャラ、設定のどれも楽しめるような作品でした。

スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの

シリーズ最終作にふさわしい作品でした。
何よりも素晴らしかったのは演出です。
大筋の物語は2者の視点から進められ、「白」と「黒」の対比が非常に鮮やかでした。

ラストバトルに興奮させられ、最後の語りに背筋を凍らさせられました。
見事な幕引きでした。

また話の節目で挿入されるBad Apple!!の歌詞も物語を盛り上げる効果的な要素でした。
最初に出てきたところでなんか見たことあるフレーズだなと思い、読み進めるうちにふとBadAppleじゃんと思い出しました。
しこたま聞いた曲ですので、こんな形で使われると今作も好きにならざるを得ないですね。

話の内容も壮大でシリーズを読んできた甲斐があったと感じさせられました。
シリーズ最後ということで読後の満足感ありましたが、やはりどこか尺の足りなさを感じました。
それは主要人物の視点しかないからかと。
主人公たちが世界を動かしていて、その動きだけしか書かれていないから物足りない。

まるで小説風味の歴史の教科書のような物語の進み方になっていると感じました。
世界は大きく変動しているけど、その動きを読者が実感しにくい。
主人公の友人たちなど、ミクロの視点から物語が語られる場面もあってほしかったです。
そういうやり方で、他のキャラたちも今作内で生きて欲しかったです。

シリーズ通して文体が小難しいとか、啓蒙的な長台詞が多いとかいろいろありましたが、それでもやはり私はこのシリーズが好きです。
哲学的知識もりもりのラノベっぽいSFっていってピンと来るなら今シリーズはおすすめです。
終わり方的にも、さならる続編に期待したいです。
あと真白に救われてほしい。

生存者ゼロ

勢いで読めてしまう面白さ。
しかしこれ、ミステリーではないですね。
最終的にはパニックアクションといったところ。

誓約

ストーリー展開は多少強引な感じはしましたが、それでも次の展開に期待して読み進める速度が上がりました。
復讐と贖罪をテーマに重い人間ドラマが語られていて面白かったです。
本格的なミステリではありませんでしたが、十分楽しめる作品でした。

雪冤

ミステリとしても社会派としても面白い作品でした。
死刑、冤罪という重いテーマを扱っていますが、話の展開に意外性があり面白く、犯人と動機が気になるというところで読み進めていきやすいです。
最後まで犯人がわからない展開、重いテーマに深く向き合わせる内容、おすすめの作品です。

雪冤の帯に「100人中99人が騙される!!」という煽り文句が書かれていましたが、そう書かれていると意外性のある犯人だろうなと推測して、叙述トリックとか主人公が犯人とかを前提に読み進めてしまいませんかね?

零式

ロックな感じでかっこいい小説でした。
文体とか設定とか物語の展開とか。
ひたすら勢いに圧倒されて、気づけば読んでいる自分も熱い気持ちになっていました。
その勢いで読まされていたからこそ、読んでる途中でオチにも気づかなかったし、してやられた感がありました。
癖は強いがオススメです。

ゼロ年代SF傑作選

マルドゥックスクランブル、あなたのための物語を読みたい熱が高まりました。
どの作品も印象的で面白かったです。
海猫沢めろんさんと元長柾木さんを知れたのもよかっです。

ゼロの迎撃

本当に起こり得そうな現実が描かれていました。
足を引っ張り合う官僚たちも平和ボケしたマスコミも実際にいそうだし、東京で大規模軍事テロが発生したときに政府の優柔不断な態度で内部から崩壊しそうとも思えてしまいました。
現実の政府がフィクションのように愚かでないことを祈ります

物語としても、緊迫感のある展開に目が離せない作りになっていました。
登場人物たちの身命を賭した行動のかっこよさには震えました。
エンタメ的にも十分楽しめる作品だったと思います。
いつまでもこの安全安心な日常がなくならないと信じている私たちに緊張感を与えてくれるいい作品でした。

戦闘妖精・雪風〈改〉

(再読)
改めてシリーズ一作目は、登場人物と舞台設定をエンタメ要素強めなシナリオ展開で紹介しながら、次作以降の下地を作っているような内容だなと感じました。
戦闘シーンの描写の臨場感とスピード感が一番の見どころです。

グッドラック戦闘妖精雪風

機械と意識について前作より深く掘り下げられ、JAMの存在も徐々に明らかになり、グイグイ引き込まれました。
しかし、ここで終わりかよって感じです。
引き続きアンブロークンアローを読みます。

(再読)
一作目とは異なりテーマ性が色濃く出て本編が始まったなと思わせます。
SFという要素を利用した哲学小説というのが正しいかも。
JAMと雪風を通じて自己とは、生命とは、人間とは何かを問うような内容でした。
読書を通じて考えることを楽しむ一作となっています。

アンブロークンアロー戦闘妖精雪風

意識とか感覚とかリアルとか幻とか、前2作とは毛色が異なっていて随分と哲学的でした。
これはこれで面白かったです。
言葉って結局何なのでしょうかね。

(再読)
JAMの攻撃により時間と空間の認識が曖昧になった世界で物語が進むので、より難解さが増しています。
JAM、雪風との禅問答のようなコミュニケーションを読者も追体験する感覚です。
アグレッサーズで舞台が地球に移りどういう展開をするのか、先が読めませんね。

蒼穹のファフナー

アニメ1期前半見終わってから今作を読むのが一番いい流れかも。
心情を深く掘り下げていて面白かったです。
エグゾダスも面白いし2クール目にも期待してます。

そうだったのか!現代史

現代史入門書として最適だと思います。
自分の勉強不足が身に沁みました。
本書だけを鵜呑みにするのではなく、自分で考えることが必要ですね。

そうだったのか!現代史2

テロや紛争の背景を知ることのできる一冊です。
つい最近話題になったミャンマーの話も載っていました。
現代を生きる上で必要な情報を手に入れることができますが、この一冊にとどまらず様々なソースから自分なりの知識としてモノにしたいと思います。

ソウルメイト

読んで癒やされました。
やっぱり犬はいいね。

今作は犬を題材にしているだけあり、犬の描写が本当に素晴らしい。
擬人化を極力避けた上で感情を表現しており、映像が自然と思い浮かびます。
解説でも取り上げられていた、「喜びの欠片を撒き散らしながら走っていた」という一文は名文ですね。

しかし、短編の最初と最後に切ない話持ってくるのは読んでて辛かったですね。
お気に入りの話はボルゾイ、ジャックラッセル、シェパードです。
犬好きは今作を読むべし、猫好きも今作読んで犬もいいじゃんってなってほしい。
映像化もしくはコミカライズ希望です。

その女アレックス

まあズルいですね。
序盤中盤と楽しめるけど、整合性に欠けてました。
一気に読みきれるけど最終的にはうーんってなる作品でした。

その日のまえに

朝読書として読むものではないですね。
一日の始まりから涙ちょちょぎれそうでした。
死をテーマにしているのでもちろん悲しく切ない物語になるのですが、決して重苦しくない読後感でした。
文章のテンポと表現が見事です。

さすが重松作品。
もちろんオススメです。

ソフィーの世界

前半はソフィーと一緒に哲学講座を受け、後半からは物語の展開に飲まれていきました。
メタフィクション構造にすることで、読者に対して「自分の存在とは何なのか?」という問に否が応でも向き合わせる作りが、小説のテーマと合致していて素晴らしかったです。

ただ物語を通じて哲学の基礎的知識を提示するだけでなく、読者自身も哲学者に仕立て上げる、そして物語自身も面白いという見事な青少年向けの小説だと思います。
もちろん大人も十分楽しめる作品です。
全世界で愛される小説なだけあり、いつの時代、どの年代の人が読んでも色褪せない小説でした。

空飛ぶタイヤ

安心して読める小説でした。
池井戸作品なので勧善懲悪+下剋上というわかりやすい構図で、期待した通りの結末を味わうことができました。

今作は長編ということもあって、主人公の運送業、悪者の大手自動車メーカー、銀行、警察、メディアといった組織と人物の対立構造が存在します。
それぞれの思惑で物事が動き対立しますが、相関図が複雑になりすぎないところが面白さの一端を担っているのだと思いました。
色々なところから主人公は悪者扱いされフラストレーションがたまり、それが最後にちゃんと解消されて爽快な気分にしてもらえました。
読んだ池井戸作品の中では一番好きですね。

ソロモンの偽証

最後のほうの展開はなんとなく読めていたけど、タイトル回収で合点がいったという感じでした。
中学生でなく高校生であったほうがより現実感あった気がするけど、教育の制度に対する考えを呈するためには中学生である必要があったってところでしょうか。

登場人物の後日談をもう少し見たかったですね。
結末も個人的にはもっとはっきり描いて、衝撃を与えて欲しかったです。
700P×3冊という大ボリュームながらも様々な人物の視点から物語が描かれており、飽きさせることなく読むことができる作品だったと思います。

代償

人の悪意を存分に味わえる作品でした。
悪人に対する怒りと、どうやって成敗されるのかという期待で読み進めていくことができます。
そういう面白さがありますが、基本的には胸糞悪い展開が続くので、人を選ぶ小説だと思います。

大進化どうぶつデスゲーム

勢いに圧倒されました。
設定やガジェットはガチガチのハードSFなのに、それをラノベとデスゲームものの文脈に無理やり乗せるという暴挙。
個性の強いキャラたちの一人称視点を難なく操る技巧。
あらゆるお約束的な要素が詰め込まれていて、それが350P程に凝縮されていました。

おれの好きなもの全部のっけ丼って感じの作品でした。
はっきり言って尺が足りていません。
キャラも18人+1で多すぎだった印象です。
古代生物の説明も冗長だったように感じます。
まるで論文を書いたかのような参考文献の数には笑いました。
筆者の新作「大絶滅恐竜タイムウォーズ」、もちろん買います。

大絶滅恐竜タイムウォーズ

なにこれ?
帯に書かれている内容だけだと想像がつきませんが、まさかそこに書かれた単語そのままぶち込まれているとは思わないでしょ。
崩壊したのは私の認識力でした。
SFだと思って読んでいたら、実はミステリ?は?
左巻キ式ラストリゾートを思い出しました。

終始読みながらツッコミ入れたくなってしまい、読むのに疲れる作品でした。
さも当たり前のように独自の物理用語がでてきて、困惑を通り越して笑ってしまいました。

オススメはできません。
理由は読めばわかります。
読んでも意味はわかりません。
まずはどうデスから読んで見ればいいと思います。

タイタン

なんて壮大なおねショタなんだ…って感じです。

全人類の全仕事を肩代わりするスーパーAIが不調になり、心理学者が対話を通じて仕事とはなにかを突き詰めていく物語です。
その結論については予想の範囲内に収まっていて、新鮮な驚きを感じられなかったところは残念でした。
報酬系があるから人が仕事しなくなることなんてあるのか?っていう疑問が前提にあったから驚けなかったというところもあります。

そんなことより今作の面白さは映像的なところにあると思います。
AIと一緒に地球旅行する過程とか、AI同士の対話のシーンとか、明らかに映像を意識した展開だったと思います

物語のオチもなんだか落語っぽくて私が好きです。
描かれていた未来は完全に機械>人間となっていて、ある意味ではディストピアのようにも感じられますが、そんな中でも強くしぶとく生きる人類の未来像には希望を感じられるものでした。
エンタメ小説として十分に楽しませてくれた小説でした。

タイタンの妖女

地球から火星へ、水星へ、地球に戻りタイタンへと、その間には地球と火星で戦争まで起き、なんとも壮大に進む物語ですが最後に待っているオチはなんともあっけない。
驚嘆こそするものの、読後感に百億の昼のような絶望感はなく、滑稽さを思わせる作品でした。

大日本帝国の銀河1

たまらないですね。
歴史改変、かつファーストコンタクトもの。
近代史、ミリタリー、SFとトルコライスのような作品です。
1巻なだけあって物語のほんの最初の部分といった感じで、続きが気になって仕方ありません。
オリオン人の動向と歴史がどう変わっていくかに期待します

大日本帝国の銀河2

新たに開示されるオリオン人たちの軍事技術にワクワクさせられました。
また会話劇の楽しさも目立ちます。
地球人同士の論理的な戦略による交渉、一方でオリオン人とのどこかユーモラスで的外れな禅問答、対照的な会話が緩急を生みテンポよく読み進められ面白かったです。

大日本帝国の銀河3

今巻は主に日本のオリオン人に対する動きが描かれました。
当時の軍部だったらありえそうな楽観的な行動に困惑させられます。
また少しずつオリオン人たちの目的や状況の推測も進み、今後の展開をより期待させます。
シリーズとしては起承転結の起が終わった感じですかね。

大日本帝国の銀河4

歴史ifとして大きな転換点を迎えるところや、オリオン集団と外交が見所。
オリオン集団のなんとなく透けてきている目的や連合国側にあたりが強いところなど、気になる点もまだ多いです。
最終巻で地球の行く末とオリオン集団の謎が明かされることを楽しみにしています。

大日本帝国の銀河5

まさか三体へのラブレター的作品だとは思いませんでした…
時間的スケールの急拡大も三体リスペクトな構成なのかと勘ぐってしまいますね。
オリオン星人の正体、目的もきちんと論理的に明かされ、物語もきれいに完結して、シリーズを読み切って大満足といったところです。

太陽の黄金の林檎

様々なジャンルの話を楽しめる短編集でした。
SF、ファンタジー、社会派などの話が詩的表現で美しく語られています。
22作品も収録されいるので、いずれかの話を気に入るはずです。
「霧笛」「二度とみえない」「サウンドオブサンダー」がお気に入り。
「人殺し」も落語っぽくて好きです

太陽の簒奪者

専門的な内容はほぼわからないが、何が起きてるかはわかるので文系でも読めるし面白いです。
地球外生命体とのファーストコンタクトを丁寧に描いており、リングや知的生命体の設定が興味深いものでした。
ただ、専門的な知識があればより面白く感じるのでしょう。

太陽風交点

ハードっぷりがいいね。
ただ文系の私は理解できないところが多数。
時間礁と電送都市が印象的。


妙なる技の乙女たち

なかなか珍しいSFだったと思います。
宇宙エレベーターがある世界となると、宇宙エレベーターについての話か宇宙での話が多いと想像しますが違いました。
どの短編もほとんど地球が舞台で、宇宙エレベーターを取り巻く環境での仕事とそこで働く女性たちに焦点を当てていました。

女性たちが自分の力で生き抜いていく姿に美しさとかっこよさを感じました。
ただ登場する女性たちのキャラクターがどの人も似ているなとは感じました。
キャラノベらしい、ソフトなSFで読みやすいですが面白さはそこそこといった感じです。

それと内容とは関係ないですがポプラ社なので紙質がいいです。

竹林はるか遠く

この作品自体に価値があるのは理解できる。
しかし、中途半端というのが私の印象。

旅のラゴス

ラノベの先駆けといった感覚。
ニキタがかわいかった。

断絶への航海

異文化コミュニケーションとユートピアがテーマでしょうか。
地球人たちがケイロンに自分たちの社会を作り上げ、ケイロン人たちを支配しようとする様は滑稽で、いつの時代の為政者にも当てはまる姿でした。
資本主義社会への皮肉が混ざる、よくできたハードSF作品でした。

短編工場

載ってる人たちのネームバリューもいいし、ヒューマンドラマ、ホラー、SF、恋愛等いろいろなジャンルのものが読めるところもよかったです。
どこからでも読めるし、どこを読んでも面白い。
順位を付けるとしたら、ここが青山、約束、陽だまりの詞ですね。

美ら海、血の海

沖縄戦の悲惨さをミクロの視点から描いた作品でした。
小説ではありますが、ほぼノンフィクションのような内容でした。
ひどく絶望的で救われることがない物語でした。
でもそれが戦争ですね。
歴史的事実だけでなく、そこ生きた人々についても学ぶ必要があると考えさせられる作品でした。

つねならぬ話

単純でさくさく読めて、そこそこ面白い。
星新一の作品をあんまり読んでないからもっと読んでおきたいですね。

デス・ストランディング

今の時代にこそ体験するべき物語だと感じる一方、内容の難しさも感じました。
崩壊したアメリカの都市拠点の通信回路を繋げてアメリカを復活させるという話。
絶滅という巨大な力に対して人と人が繋がることで抗っていくという、人間の力強さを実感しました。

今の時代、SNSで人々は簡単に関係を築き繋げることができますが、そのインフラがなくなってしまったときでも、孤独にならず繋がりを持たねば生きていけないという意図が伝わりました。
一方、超自然的現象による心象風景と夢と現実が入り交じるストーリー展開で、頭の中で映像化しにくかったです。

ゲームはまだ未プレイですからまだわかりませんが、映像で見たほうがよりストーリーが掴みやすいのでしょうか。
キャラクターの心理が言葉で語られない分、小説とは違った難しさ、解釈の余地があるのかもしれません。
ゲームとして面白いのかどうかが微妙なので、気が向いたらやろうと思います。

デューン砂の惑星

上中下で長いのに「これで終わり?」って感じのあっけなさでちょっとがっかり。
って思ったらデューンシリーズは続きがあるということで、これは追えないなと思ってしまいました。
舞台とガジェットがSFチックなだけで、話自体は中世の権力争い+先住民の対立の2本柱でした

説明のない固有名詞が大量に登場したり、宗教色が強かったり、超能力とかの薬物とかで文章がより難解になっていたりで、読みやすくなっていると言われている新訳でも結構読みにくさを感じました。
下巻の舞台設定の掘り下げとか用語辞典のほうが面白みを感じました。
原作読んだので映画も見たいですね。

天使のナイフ 

エンタメ指向な展開や構成であるにも関わらず、少年法やもっと広く見て刑法について考えさせられる作品でした。
殺人の加害者と被害者の双方の感情や論理をよく描けており、犯罪者に対して厳罰と更生のどちらが望ましいのかを読者に問いかけてくる、いい啓蒙作品だったと思います。

話の展開は後半に一気に進んでいくもので、最後まで飽きさせずに読ませてくれました。
詰め込みすぎな感じはしますが、それでこそエンタメだと思っています。
ただ2段オチにまでする必要はなかったかなという印象もあります。
ミステリとしても社会派的としても質の高いオススメの作品です。

天に堕ちる女性

様々な感情を理解できる短編集でした。
どの短編も話自体はわりとありきたりなものだったかもしれませんが、よくまとまっている上にそこそこ面白い。
それぞれの主人公たちの細やかな感情とその種類を楽しむことができました。
女性は短編のどれかに共感を抱けるのではないかと思います。

天盆

実にかっこいい小説でした。
将棋をモチーフにした天盆というゲームが国を動かすファンタジー世界が舞台です。

主人公のそのゲームで振るう才能と家族愛の2つのテーマで物語は描かれています。
平民が己が才能で次々と強敵を 打ち倒していく様は、さながら少年マンガを読んでいるかのようでした。

最後の天盆は国の動きとリンクさせた試合を演出しており、思わず感動してしまいました。
それでいて家族関係についても深く登場人物たちの心情を捉えていて、母のセリフにこれまた感動。

そして全体的に文章がかっこいい。
爽やかな情景描写が印象的でした。
誰にでもオススメできる、熱い作品でした。

東京すみっこごはん

ちょっと塩気も感じられるがやさしい味がする料理のような小説でした。
悩みを抱える登場人物たちがすみっこごはんという場所をきっかけに悩みを解決していく話でした。
いかにもなキャラノベって感じで軽く読めます。
期待はずれだったのは料理の描写がぱっとしなかったところですね

慟哭

素晴らしいミステリ作品でした。
幼女誘拐事件追う警察側の視点と、新興宗教にのめり込む男の2つの視点で話が進んでいきます。
宗教にハマる男が犯人側の視点なんだろうなと思いながら読み進めると、物語中盤でその予想通りの展開になっていきます。

最後の最後で2つの視点が交差する、読んでいるときのその瞬間はたまらないものでした。
ある程度予想していましたが、トリックを明かされたときの感情は驚きと納得でした。
物語の締めもまさしくタイトル通りといったところで、十二分な読後の満足感でした。
評価が高いのも頷ける、オススメの一作です。

同志少女よ、敵を撃て

歴史小説に見せかけたド級のエンタメ小説でした。
悲劇、修行、成長、宿敵と対峙といった少年漫画的な展開は王道で面白い。
特に最後のタイトル回収のシーンは圧巻。
独ソ戦を題材にしつつも現代に通ずる風刺がスパイスとして効いていました。
いい意味でギャップのある作品でした。

透明カメレオン

雰囲気が散らかってしまった印象を受ける小説でした。
全体通してコメディな展開だったのに、最後はなぜか切ない話で終わらせていました。
ところどころ伏線が張られているかと思っても大したものじゃなかったです。
今作はあまりオススメではないかと思います。

時砂の王

短いながらもスケールの壮大さに圧倒されました。
未来と邪馬台国の2つの舞台から展開される物語、人類vs侵略者という構図、長編にしてもよいぐらいの内容ですがコンパクトかつ綺麗にまとめています。
タイムパラドクス 的要素が勢い任せだったところは残念ですが十分満足できる面白さでした

時の顔

入っている短編の数々は、短いながらもが緻密に作られていました。
すべての短編がタイムトラベルをテーマにしていますが、表題作のような円環構造が素晴らしいシリアスな作品からコメディチックなモノ、青春モノまで多種多様です。
どれか1つは気にいる作品があるであろう、いい短篇集でした。

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍

どういう事が起きたか、どういう性質の戦争だったのかということをわかりやすく学べました。
その上、互いの国のトップの愚かさや、歴史学者、軍部関係者の歴史の修正や隠蔽など、歴史的事実だけでなくそれに関わった人たちの人間らしさを感じとるこもできます。

戦線の動きも細かく追えるように、随所で地図が挿入されていてより理解しやすい作りになっていました。
加えて当時の写真も掲載されているので、過去にこのようなことが起きたという実感も得やすいです。
総合的に簡単に独ソ戦を学べるいい書籍でした。
これで「同志少女~」を読む準備が整いました。

時のきざはし

「太陽に別れを告げる日」
エンダーのゲームっぽいと思ったら解説でもそう書かれていました。

「異域」
精神と時の部屋の設定を上手く使っていて面白かったです。

「鯨座を見た人」
壮大な舞台で語られる親子愛の物語でした。

「沈黙の音節」
虐殺器官とイメージは似ている。
呪文を科学的に解釈すると、この物語のような理論になるのでしょう。

「ハインリヒ・バーナルの文学的肖像」
SF作家の伝記という体裁で、実際にいた人物のものかと思えてしまう内容でした。

「勝利のV」
コロナ禍の現在、こういう未来が訪れるのかも?

「七重のSHELL」
読者も含めどこまで虚構なのかがわからなくなる作品でした。
これが1997年発表というのだから驚き。

「宇宙八景瘋者戯」
これ難しかった。
宇宙のエネルギーと心理を関連させた内容?

「洛南の大凧」
過去の事件を探っていく展開がミステリっぽい作品でした。

「プラチナの結婚指輪」
異星人との結婚について取り扱った作品。
異星人であろうがなかろうが、コミュニケーションが大事だとよくわかる。

「超過出産ゲリラ」
地球で暮らす宇宙人側の視点の物語。
クラゲみたいだとさすがに人として扱いにくいよね。

「地下鉄の驚くべき変容」
アニメで見たい。
五十嵐大介が描いてもよさそうな作品でした。

「人骨笛」
中国の歴史に明るくないと難しい。
私にはよくわからなかった。

「餓塔」
極限状態の中で人間の暗い部分が色濃く表れる作品でした。

「ものがたるロボット」
わかりやすいし、オチも落語みたいで面白かった。

「落言」
言葉がなくとも想いが通じるのは、人種が違えど同じだということが伝わる作品でした。

「時のきざはし」
好奇心には勝てなかったよ…な作品。
時間的スケールが壮大で面白かったです。

「三体」以外にも面白い中華SFはたくさんあるということがよくわかる短編集でした。
他作品の翻訳にも期待。

どくとるマンボウ航海記

ユーモアたっぷりで笑えるほうで面白いエッセイでした。
流れるように皮肉を入れたり、畳み掛けるようにギャグをかましたりしていて、テンポよく読めます。
わが予言、崩壊すの女房のくだりが一番好き。
楽しく読めるいい作品です。

都市と都市

一風変わったミステリsfでした。

物語内で起こる殺人事件とその舞台となる2つの都市が謎としての対象となります。
この都市の設定と謎が面白い。
巨大な権力装置や噂で存在する第3の都市、これらのオカルト要素が謎となります。
事件の犯人よりもこちらの謎のほうに興味をそそられました。

また、2つ都市固有の習慣や言語などの文化も細かく描かれており、現代が舞台なのにファンタジーを読んでいるかのようでした。
一方で話の大筋となる殺人事件はありきたりなものとなっていました。また、文章が若干わかりにくいのも難点だったと思います。

土漠の花

まるでFPSを読んでいるかのような作品でした。
物語は危機的状況の発生からスタートし、急急緩急急といつた具合にハイスピードで展開します。
上層部の政治的シーンを省き現場の話のみを描いていたところも、より物語に疾走感を与えています。
アクションものとしてそこそこおすすめです。

トランスヒューマンガンマ線バースト童話集

アイデアと語り口が軽妙なSFでした。
童話をモチーフにSF要素を盛り込みアレンジした短編集で軽い感じで楽しめました。
最初の三編、特にスノーホワイトホワイトアウトが元ネタの童話の内容を活かし、童話特有のダークな部分も見える内容で好きです。

渚にて

夏の庭

期待とは違いましたが満足できる作品でした。
少年たちの死への好奇心や大人との友人付き合いなど、自分が通り過ぎた経験が描かれていて読み終わった後に少し寂しい気持ちになりました。
成長物語としては面白かったのですが、夏っぽさをあまり感じられなかったのが期待はずれでした。

夏への扉

ラノベみたく軽く読めてかつ面白いタイムスリップ小説。
今読むと少し物足りさなを感じるかもしれないが、SF好きなら読むべきという義務的な部分もあるかも。

なにかのご縁

心温まる感じの話でそこそこ面白かったです。
思ってたよりは無難な感じの作品でした。

なめらかな世界と、その敵

素晴らしい短編集でした。

「なめらかな世界と、その敵」
表題にして素晴らしい一作。
すべての人が乗覚という平行世界を自由に行き来できる力を持っているという設定。
みんなガクちゃんみたいになっているというイメージですね。
そんな世界で乗覚を失った子と主人公の友情の物語でした。

最後のかけっこのシーンはあまりの美しさに目眩がしそうでした。
アニメ化を切に願います。
映像で是非見てみたい。

「ゼロ年代の臨界点」
筒井康隆と小松左京の両方の雰囲気が感じられた作品。
架空日本SF史の論文という構成が面白かったです。
この話に出てきた小説は、おそらく様々な作品を元ネタとしているのでしょうが、私にはすべてはわかりませんでした。

「美亜羽へ贈る拳銃」
harmonyの続編っぽさを匂わせつつ、harmonyの結末に対する反論をした渾身の一作だと思います。
愛を人工的に生み出せるようになった一種のディストピア物語です。

とどのつまりただの恋愛小説なのですが、愛に対する希望が持てる作品でした。
感動して涙が出ました。
伊藤計劃に対するリスペクトも強く伝わりました。
harmony自体が好きだということもありますが、その派生作品であるということを抜きにしても今作は最高の一作でした。
今短編集一番のお気に入りです。

「ホーリーアイアンメイデン」
自分の死後、姉に対して贈る手紙という体裁で語られる物語。
抱擁されたら誰もが必要以上に丸い性格になって、そしてディストピア化していくって怖っ。
終わり方も含めホラー作品でした。

「シンギュラリティ・ソビエト」
ソ連とアメリカのマウントの取り合いをする話でした。
全体的に勢いが強い話のように感じました。

「ひかりより速く、ゆるやかに」
新幹線の時間経過が超遅くなった中で、その時間に囚われてしまった幼馴染と主人公の青春小説。
その新幹線と乗客がネット上で慰み者になってしまう様子が粒さに描かれており、現代ネット社会への批判の意思が込められていました

ただそれ自体は本筋ではなく、今作はやはり青春小説。
構図としてはほしのこえのような感じです。
主人公の青臭い感情に懐かしさを感じ共感できる作品でした。
でも時間経過が遅くなるタネについては、ネットワークには詳しくないですがちょっと無理があるかなって気がしました。

帯の謳い文句にある通り、「2010年代、世界で最もSFを愛した作家」というのは間違いないと感じました。
全編を通してハードSFではなかったですがが、小難しい設定を長たらしく解説される作品よりも私は好きだし、私のツボにハマる作品が多かったです。

南極点のピアピア動画

夢とロマンの詰まった小説でした。
ニコニコと初音ミクをモチーフとした要素を起点として、人々の情熱と思いが宇宙へ、深海へ、そして地球外生命体との交流へとつながっていく展開に、ワクワクしながら読み進めることができました。
設定はラノベっぽいですが、硬派なSFです。

また当時のニコニコの盛り上がりを懐かしむこともできました。
今はだいぶ落ち込んだニコニコですが、10年代前半まではこの小説のような未来が想像できるぐらいの活気があったということですね。
物語の面白さだけでなく、ニコニコの盛衰を感じるという側面でも面白みがある、ニコ厨におすすめの作品です。

汝、星のごとく

二人の男女の人間関係が濃密に描かれた、美しい人間ドラマでした。
片方がうまくいっている時はもう片方が落ちているという、鬱屈とした展開が終始続きます。
それでも読み進められるのは、軽やかな言葉とそこから紡がれる文章のテンポの良さがあってのものでしょう。

最後には報われてほしいという希望を持ちながら読み続け、主人公たち二人の幸せを追体験できるという素晴らしい読書体験ができました。
ネグレクト、ジェンダー、村社会等の要素もうまく取り扱っており、恋愛ものの枠には括れない作品ですね。
各所でオススメされ売れているのも納得の小説でした。

一方、基本重苦しい展開が続き、最後も露骨なハッピーエンドってわけでもないのに、こんなに評価されているのも珍しいなとも思いました。
本屋大賞ももっとライトなエンタメが取るものかと。
最近の傾向的に何が何でもハッピーに終わる作品が望まれてるのかと思ってましたがそうでもないんですね。

二千七百の夏と冬

ファンタジーな冒険小説で、ロマンティックな恋愛小説でした。
縄文と弥生時代の変わり目が舞台となっていて、そこに生きる人たちの言動が見事な想像によって描かれています。
また、歴史的な内容を補足するための現代パートも、小説内にいいリズムを与えていました。

展開的には恋愛ものなのですが、テーマとしては日本人とは何かということだと思います。
一つ一つは出来がいいのですが、どうしても全体的な展開が若干緩慢だったように感じました。
とはいえ、ただ甘ったるいだけでもなく、毒々しくもない、素敵な恋愛小説だったと思います。
オススメできる一作です。

日本SF傑作選1筒井康隆

「お紺昇天」
SFだけどシュールギャグでした。
涙をワイパーで拭うという一文で笑いました。

「東海道戦争」
メディア批判かと思ったけど、最終的にはドタバタコメディになっていて楽しく読める一編でした。

「マグロマル」
コミュニケーションは難しい。
ただでさえ人間同士の会議でも上手くいかないのに、まして異種間同士なんて無理に違いないでしょう。

「亀ロイド文部省」
完全にギャグ小説。
短編なのにキャラが際立っているところがよかったです。

「トラブル」
無茶苦茶な一編。バトル・ロワイヤル。

「火星のツァラトゥストラ」
流行ったものは必ず廃れていくということ。

「最高級有機質肥料」
やっぱうんこは面白い。
めちゃ笑いましたが、食後に読んだということもあり、食事のシーンは流し読みにとどめました。

「ベトナム観光公社」
これもドタバタ系。所々で話の展開が強引で笑えました。

「アルファルファ作戦」お爺ちゃんが回りくどい話をするシーンが面白かった。

「近所迷惑」
オチがおしゃれ。
世にも奇妙な物語っぽい。

「腸はどこへいった」
やっぱうんこは面白い。最悪なオチで笑えました。

「人口九千九百億」
2~300年後にはこうなっているのかも?こんな狭すぎる世界は嫌ですね。

「わが良き狼」
一風変わったハードボイルドな一編。
この短編集の中では異色でしたが、いい切なさを感じさせる作品でした。

「フル・ネルソン」
日本3大奇書にも負けず劣らず?誰か解説してください。

「たぬきの方程式」
会話のやり取りが面白い。
かと思ったら最後はブラックなオチで緩急が付いていました

「ビタミン」
まず小説の構成、書き方が面白い。
科学の歴史は名誉と功績の取り合い。
フランケンシュタインの誘惑でそう教わりました。

「郵性省」
これが一番笑えた。
最高に下品。
自衛隊ならぬ自慰隊←これを書きたいがために書いたのではないかと思いました。
やっぱ下ネタ最高だよ。

「おれに関する噂」
現状起こりうる話なのかなとも思いました。
これもマスコミ批判。

「デマ」
これも書き方が面白い。
伝言ゲームが難しいということがよくわかる。
オチは考えさせられるものでした。
情報という手段をどう使うかという問題は、今まさに直面しているものだと思います。
なんともタイムリー。

「佇むひと」
ディストピアもの。
怖さの中に哀愁が漂う雰囲気の作品でした。

「バブリング創世記」
逆に10P分もよくこんなもの書けたなという作品。

「蟹甲癬」
小林多喜二はまったく関係なし。
これも地味にディストピアもの。
そしてグロい。

「こぶ天才」
天才たちが集まっても物事は上手くいかない。

「顔面崩壊」
ひたすらグロい。
気持ち悪さに身の毛がよだちました。

「最悪の接触」
コミュニケーションは難しい。
これって若者と老人のコミュニケーションでも似たようなことが起きているのかなと思いました。

筒井康隆の作品はギャグ系も非常に面白いとわかりました。
実家に作品集があるので読みます。

日本SF傑作選2小松左京

「地には平和を」
日本が終戦を迎えなかった場合を描いた作品。
今の歴史の世界でよかったと思えました。
歴史ものとしても、タイムトラベルものとしても面白い。

「時の顔」
いいループ作品。
舞台が江戸時代というのも粋ですね。

「紙か髪か」
昔だったら紙を選んでいたでしょうが、今だったら電子化も進んでいてるし髪のほうが選ばれるのかなと考えました。

「御先祖様万歳」
小松左京のドタバタSF。
これもいいループもの。

「お召し」
どんな状況でも人は強く生きていくということを強く感じさせる、小松左京が描く人の本質SFでした。

「物体O」
アイデアは結構ぶっ飛んでいるが、見事な想像力でリアリティのある世界が描かれています。

「神への長い道」
何千年後かには肉体を捨てて精神だけで生きていくのでしょうか。
外的宇宙の果ても見てみたいですが、精神という意味での内的宇宙の果ても見てみたい。

「継ぐのは誰か?」
青春、SF、民族、ミステリーといろいろ詰め込んでいるのに綺麗にまとまっている素晴らしい長編。
もし本当にククルスクがいたら情報の海で溺れてしまいそうですね。

日本SF傑作選3眉村卓

「下級アイデアマン」
時代が進めばアイデアマンという職業も生まれそうだと思いました。

「悪夢と移民」
科学信仰への批判的内容でした。

「正接曲線」
急速な進化とリセットを繰り返す宇宙人を描いた作品。

「使節」
植物宇宙人を描いた作品。
不機嫌だったというオチも面白い。

「重力地獄」
宇宙人が実は人間でしたというオチ。
登場するロボットの言動も面白い。

「エピソード」
宇宙人側の視点で宇宙人を描いた作品。
想像力を掻き立てられます。

「わがパキーネ」
自分に忠実に生きることが大事。

「フニフマム」
これも面白いアイデアの宇宙人を描いた作品。

「時間と泥」
宇宙人と人間の邂逅を宇宙人側から描いた作品。
人間の驕りが見て取れます。

「養成所教官」
テレパシー能力のあるなしの違いを上手く描いている作品でした。

「かれらと私」
混乱の末、考えることをやめるのも無理はないと思いました

「ギガテア」
毒みたいな宇宙人兵器。
とんでもない宇宙人です。

「サバントとぼく」
ディストピアを感じさせる作品でした。

「還らざる空」
自分だけが人間でしたと言われても狂うしかないみたいな。

「準B級市民」
これも実は人間でしたパターン。

「表と裏」
人工知能の人間とロボットに対する態度の違いを上手く描いた作品。
締め方もユーモラスでいい。

「惑星総長」
自分の努力が水の泡となるのは辛い。

「契約締結命令」「工事中止命令」「虹は消えた」「最後の手段」
無任所要員シリーズ。
コメディチックでもあり、ハードボイルドな感じもあり、面白いシリーズ短編でした。
虹は消えたが一番お気に入り。

「産業士官候補生」
エリートになることよりも家族を選ぶ姿に共感しました。

今回の短編でお気に入りの作品は「正接曲線」「ギガテア」「表と裏」「虹は消えた」です。
宇宙人系の作品と組織と個人を描いた作品(インサイダーSF)の両方を楽しめるいい短編集でした。

日本SF傑作選4平井和正

「レオノーラ」
作家性をすぐに把握できる一作。
重く暗い哀しさが美しい。

「死を蒔く女」
いつの時代でも通用するホラー。
1962年の時点ですでにこんな怖いメンヘラ女を描かれていたことに驚き。

「虎は目覚める」
暴力性に年齢は関係なし。

「背後の虎」
スタンドかな?
意識が顕在化するという発想はマンガ向きですね。

「次元モンタージュ」
次元がバラバラになって人間関係にずれが生じるという面白い内容。
コメディ寄りにしたら筒井康隆作品っぽくなりそう。

「虎は暗闇より」
人間は理性あってこその生き物だと再認識させられる一作。

「エスパーお蘭」
超能力バトルもの。
ラノベのはしりっぽい感じがよくわかる。

「悪徳学園」
ウルフガイシリーズを読みたくなりました。

「星新一の内的宇宙」
他作品とは毛色の違う、ドタバタコメディの作品。
作者の星新一愛がよく伝わります。

「転生」
暴力性は控えめで、最後も切なさを残す一作

「サイボーグ・ブルース」
ハードボイルド作品なだけあって、主人公がかっこいい。
ロボットものかと思っていたら後半は超能力ものに。
SF要素は控えめでファンタジー色が強い長編でした。

「デスハンターエピローグ」
マンガ読んでないと面白くないらしいですが、そこそこ楽しめました。
マンガも読みたい

暴力性が強く、過激な作品が多かったですがどの短編も非常に面白かったです。
好きな作品はレオノーラ、次元モンタージュ、転生です。
他にも幻魔大戦や平井和正原作のマンガも読みたいと思います。

日本SF傑作選5光瀬龍

今作については各短編についてあれこれ感想を書くことはないです。どの作品も宇宙を舞台に、人々の無常観や悲哀を描いています。特徴ある詩的な文体がそれらをより一層強く感じさせるような作りになっていました。

個人的には読み勧めにくい短編集だったなという印象です。
今作の短編集を凝縮したものが百億の昼と千億の夜だと思います。
光瀬龍がどういう作家かを理解するなら、今作を読むことより百億~を読むことをオススメします

日本SF傑作選6半村良

「収穫」
ディストピア的雰囲気と人類が収穫されるというアイデアが面白い。

「虚空の男」
今作もアイデアとそのSF的要素の不気味さが際立つ。

「赤い酒場を訪れたまえ」
物語ではなく設定集みたい。
これをもとにした長編があるのでそれも読みたい。

「およね平吉時穴道行」
小松左京っぽい作品。
時代SFもの。
終わり方が雑。

「農閑期大作戦」
ドタバタ系コメディ作品。
めちゃくちゃな展開で笑える作品。

「わがふるさとは黄泉の国」
現実世界と古事記の内容が紐付いていく過程が面白い。

「誕生」
三位一体によって高次元の存在になるという発想は海外SFぽい

「庄之内民話考」
民話を複数並べて、それらが1つのオカルト的仮説に繋がると結論付ける。
作品の構成のされ方が面白い。

「戦国自衛隊」
ドラマ見た記憶がうっすら残っていましたが、内容まったく違いますね。
設定に対して尺が足りていない感じ。
長編にしても十分面白そうな作品。
俺TSUEE系の先駆けですね

「箪笥」
気味の悪いホラー。
短めの作品ながらも怪しさを存分に感じられる。

「ボール箱」
段ボールの擬人化作品。
今度から段ボール捨てるときは水浸しにして捨てるようにします。

「夢の底から来た男」
主人公と同様に頭がおかしくなりそうな感覚を味わうことができる。

全体を通して思ったことは、どれもアイデアや設定が面白く、10倍ぐらい希釈して長編として世に送り出しても十分通用するような作品ばかりだったということです。
傑作選シリーズ第2期が刊行されることを心待ちにしたいと思います。

日本SFの臨界点[怪奇編]

「DECO-CHIN」
90年代のサブカルチャー+カルトの空気が強く感じられる作品。

「怪奇フラクタル男」
映像を想像すると身の毛がよだつような気持ち悪さを感じられる作品。

「大阪ヌル計画」
nullかと思ったらぬるぬるのヌルでした。
あっけない締め方が笑いを誘います。

「ぎゅうぎゅう」
密です。
ある意味で終末世界という感じでのボーイミーツガールな小説でした。

「地球に磔にされた男」
多次元世界もので今短編の中で1番SFっぽい感じ。
主人公の哀愁が染みます。

「黄金珊瑚」
珊瑚が人々を狂わせるというホラー要素の強い作品。
終わり方もいい匂わせ方。

「ちまみれ家族」
絵面は恐ろしいけどコミカルな内容。
浦安鉄筋家族を連想したのは私だけでしょうか?

「笑う宇宙」
誰が狂っているのかわからなくなり、私自信も狂気の渦中に巻き込まれるかのようでした。

「A Boy Meets A Girl」
主人公の形象の設定が面白い作品。
ロマンスと切なさを感じさせてくれました。

「貂の女伯爵、万年城を攻略す」
ジブリっぽい映像ですが内容は残酷なので、そのギャップに面白さを感じました。

「雪女」
レポートのような語り口で、事実を記述し登場人物たちの感情が極限まで排除された形で物語が進み、読者に心理描写を委ねる構成が素晴らしい。
恋愛編でも良かったような作品でした。

怪奇編といっても恐怖というより奇妙といった印象が強いです。想像することが楽しい作品が多い短編集でした。

日本SFの臨界点[恋愛編]

「死んだ恋人からの手紙」
バラバラの時系列でメッセージが届いてしまうという構造を活かして、死者から死について語られるかのような見せ方をしているところが絶妙。

「奇跡の石」
時空を共感覚の力で具現化してしまうという面白い設定。
共感覚がテーマなだけに文章もより幻想的なものに仕上がっていました。

「生まれくる者、死にゆく者」
出生と死が徐々に起きる不思議な世界での家族の関わり合いを描いた作品。
生き死にに鈍感な世界がうまく想像されていました。

「劇画・セカイ系」
セカイ系のラノベのリアルなその後を読まされているようでした。
イリヤの空のその後みたいな。
私が中学生の頃、ラノベを読んで妄想した世界を、現実という形で否定されたような気持ちになりました。
切なさと懐古が入り交じる感情にさせられ、物理的に心に刺さる作品でした。

「G線上のアリア」
オチのためにある作品。
でもプログラミングとかかじってないとオチの意味がわかりにくいのでは?と思いました。

「アトラクタの奏でる音楽」
いい百合小説。
古都×テクノロジーの舞台設定も好き。
アニメ的な作品だと思ったのはHello Worldとか電脳コイルの映像が頭にあるからでしょうか

「人生、信号待ち」
世にも奇妙な~的作品。
時間経過の書き方が上手いと感じました。

「ムーンシャイン」
やっぱり円城塔は難しい。
数字に強くないのなおのこと…

「月を買った御婦人」
竹取物語にSFのエッセンスを加えた、わかりやすく面白い作品でした。

SF短編なだけあって、恋愛編といいつつも全体的に怪奇的な色合いが強いように感じました。
この短編のコンセプトの通り、今まで読んだことのない作家さんの短編がほとんどで、新鮮な感覚でした。
1番のお気に入りは「戯画・セカイ系」です。

日本SFの臨界点 中井紀夫

「山の上の交響楽」
半永久的に演奏が続く楽団の1シーンを切り取った奇想小説。
演奏に関わる人達の会話が魅力的。

「山手線のあやとり娘」
ある意味ハッピーエンド?
コミュニケーション方法のモチーフが面白い。

「暴走バス」
編者短編の「ひかりより~」に影響を与えたことがすぐわかる作品。
周りの人たちが救われないまま終わってしまうところに後味の悪さを感じる。

「殴り合い」
コメディさと歳を取ることへの哀愁を感じさせる一作。

「神々の将棋盤」
タルカス伝を知らないから面白さ半減だったかもしれない。

「絶壁」
重力の作用の働き方が違うとかではなく、立場の違いという扱いで物語が進むところが面白い。

「満員電車」
たった5Pでゾッとさせてくれるホラー。
電車内で漏らした、の極限版。

「見果てぬ風」
規模は地上で収まっているものの、無限への畏怖と虚無感を味わえる作品。

「例の席」
登場人物が当事者にならずに防寒するだけで終わるところに、不気味さが染みてくるような感覚になる。

「花の中であたしを殺して」
生死にまつわることを幻想的な映像で描いた作品。
喜びと悲しみの感情が同居する設定が見事。

そして編者の作者解説の略歴解説と、作品解説の情報量が濃すぎる。
私の感想も編者に同意の一言に尽きてしまう。
総じていわゆるSFというより、幻想・奇想・ホラーに寄る短編集という印象でした。
個人的には今作にも収録され、かつ恋愛編にもある「死んだ恋人からの手紙」が一番気に入っています。

日本SFの臨界点 新城カズマ

「議論の余地はございましょうが」
今年書かれたもの?と疑うかのような新鮮さ。
政治経済というとっつきにくいテーマながらも、構成と話の展開のおかげでわかりやすく面白い。
ベーシックインカムへの1つの解の提示内容も面白く、ハートフルなオチも好み。

「ギルガメッシュ叙事詩を読みすぎた男」
破茶滅茶さで星新一リスペクトだとすぐわかる。
メタ構造のオチをつけることであっけなさが増している。

「アンジー・クレマーにさよならを」
遺伝情報の売買ができるという設定が面白い。
歴史物語と近未来の話が交互に進む構成も独特。
百合SFとしても見事な一作

「世界終末ピクニック」
サービス終了時のMMOの様相と寂寥がよく描かれた一作

「原稿は来週水曜まで」
ぶっ飛んだ展開に人工知能というSF要素を加えた作品。
童話的なオチが魅力的。

「マトリカレント」
身体の変化がその人の世界観にも影響を与えていることを、詩的な文体で表現しているところが特徴的。

「ジェラルド・L・エアーズ、最後の犯行」
少女と囚人の手紙のやり取りから語られていく。構成の面白さもさることながら、サスペンスとしても上質。

「さよなら三角、また来てリープ」
マップスは知らないが、古のオタクたちのジュブナイル小説として十分に楽しめた。

「雨ふりマージ」
自然人から架空人になったという起点から語られるボーイミーツガール小説。
架空人という設定のおかげで信用できない語り手による物語となっており、それが読後の切なさをより際立たせるものとなっていた。
短編でまとめてしまうにはもったいないと思えていまう一作。

総じて語りの方法を工夫している小説が多く、まずは読む文章の面白さで読者を惹き付けようとしている著者の意図が伺えました。
解説を読んでわかるように、面白いことが大好きというところが作品にも表れているようでした。
著者の書いたSF以外の作品も読んでみたいと思わせられる素晴らしい短編集でした

日本SFの臨界点 石黒達昌

「希望ホヤ」
関係者たちの浅ましい選択の積み重ねが描かれている作品。
人類としては間違った結果で終わるが、1人の父親としては正しい行為だったと思うと、複雑な思いにさせられる。

「冬至草」
放射性物質を発する植物という起点から、狂気の植物に魅入られていく人の話が語られる。
他にはない薄気味悪さが特徴的なホラーSF。

「王様はどのようにして不幸になっていたったのか?」
寓話の中での論理的な問答の内容と、物語そのものが擬人化されているというところで二度おいしい作品。

「アブサルティに関する評伝」
結果が先であとからデータという論理はわからなくもないが、うまくいかないとSTAP細胞みたいになるんだろうなと思ってたら、解説でも触れられていた。

「或る一日」
子どもたちの死が取り上げられるのに淡々と物語が進み、感情が置き去りにされるような感覚になる作品。

「ALICE」
多重人格者の事件のレポートを追う形となっており、人格の入れ替わりに加えて抽象的な話が多く難しい。

「平成3年5月2日~」
本物の論文のような体裁で語られる、架空動物の研究過程を描いた作品。
ノンフィクションかと見紛うような、設定も小説の内容も奇妙な作品。

SFというジャンルが、一概に近未来の華々しい技術を描いただけのものではないということがよくわかる短編集でした。
現代的な内容に即した要素を用いた作品ばかりで、どれもノンフィクションと言われても違和感のない作品ばかりでした。
また淡々とした語り口の割に生々しい人間が描かれている印象でした

ニューロマンサー

とにかく読みにくい。
読んだ後ネタバレを調べて内容を確認しました。
その文体がいいみたいな風潮もありますが賛同できません。
自分の想像力、読解力の問題じゃないと感じました。
今作こそ出た当時に読むべき作品です。
サイバーパンクの衝撃は巨大だったでしょう。

話の内容自体は面白かったし、作品に価値があることはわかります。
ただあえて読む必要はないです。
サイバーパンクを楽しみたいならやっぱり攻殻機動隊ですね。

人形つかい

俺達の戦いはこれからだ!ってな感じですかそうですか。
ナメクジが寄生して人間が操られてしまうというのは恐ろしいですが、首の後ろがヒヤっとする程の恐怖を感じられませんでした。
地球侵略モノの古典で今読むと物足りないのかも。

人間以上

孤独な異能力者たちが集まりホモ・ゲシュタルトへと進化し、再び孤独になってしまう。
私がわかるのはこんぐらいです。
ぶっちゃけ話が淡々と進みすぎてイマイチ展開が掴めなかったです。
まだ私には難しすぎたのだろうか。

鼠と竜のゲーム

バラエティに富んだ短編小説でした。
SFを基盤とし、バトルや恋愛、政治なんかも取り扱っています。
SFにしては珍しく文章の綺麗さも特徴的でした。
お気に入りの話は星の海に〜とスズダル中佐〜です。
専門用語が出てきて少し読みにくいところはありましたが、十分面白い作品でした。

眠れないほど面白い古事記

単純に簡略化した古事記でした。
やはり上巻が1番面白くて中下巻は権力争いと色恋ばかりだなと感じました。

眠れるラプンツェル

これも一種のおねショタですかね。
想像通り心理描写は丁寧で、女性の複雑な心境に共感できる箇所が数多くあることでしょう。
読み進めるごとに切なさとかつらさとかが染み渡っていくようでした。
今作が好きな人は私の少年も好きなはず。

野崎まど劇場

ふざけきっていて中身なしな短編集。
気に入った話は、森のおんがく団、神の国、TP対称性の乱れです。
2時間程度で軽く読めて、ばかばかしさに吹き出してしまえる楽しい短編集でした。

望み

親としての激しい葛藤を描いた素晴らしい作品でした。
息子が殺人事件に巻き込まれ行方不明になってしまい、その事件の加害者なのか被害者なのかわからない。
そんな状況下で息子がどうあってほしいかを願うことしかできない両親の物語です。
ミステリ、サスペンスというより家族小説って感じです。

息子に生きていてもらいたい、だけど人殺しであってほしくないという思いが対立する中で、ただ事件の行末を待つ家族の心理描写や行動が丁寧に描かれていました。
わかりやすい二択ということもあり、どちらの望みを持つか読者も考えさせられることになるでしょう。
子供を持つ人におすすめしたい作品です

のぼうの城

日本史全然詳しくなくてもそれなりに面白かったです。
キャラがわかりやすくて話も簡単だからか?
でもやっぱり歴史小説はちゃんと歴史の知識があったほうが感じ方が全然変わるのでしょう。
勉強すべきですね。

パーフェクトフレンド

そもそもキャラの設定が荒唐無稽なので、話が無理やりすぎるということはないと思いました。
小学生が登場人物なので他の作品に比べコミカルさが強かったです。
概念という曖昧なものをシステムとして捉える発想はやはり面白いです。

あと今作を読んでより強く思ったのが、話の区切りの締めの文章が心地良いなと。
例えば、この少女と友達にならないで済む〜とか、理桜の精神は〜とか。
最後なんか自分も同じような表情になりました。
そんなこんなで、やっと2を読める状況になりました。
すぐ読みます。

ハーモニー

博士の愛した数式

読後感の心地よさ。
今度映画も見てみるか。

葉桜の季節に君を想うということ

こういう小説の紹介文に文句があるのですが、「読み返したくなる」みたいな文章を使わないでほしい。
それありきで読んじゃうから数中ページぐらいで違和感を覚えて、仮説を立てた上で読み進め、最後に答え合わせという感じになってしまいました。

それはそれとして、小狡いミスリードや展開は素晴らしく、主人公のキャラクターとしての性格や思考がトリックの判明後により個性として際立つというところも気に入りました。
ミステリをそこそこ読んでるので、裏切ってくれるところまではいかなかったですが、十分に楽しめるものでした。

ハサミ男

トリックが素晴らしい小説でした。
三重に仕掛けられたトリックに私は気付くことができませんでした。
仮に1、2のトリックに気付いても、それらがミスリードとなり最後の展開に驚きを与えてくれる、見事な構成だったと思います。
物語の締め方もホラーチックでいい意味で不気味な後味でした。

ただ犯人の動機が弱いことと、物語を締めるために都合の良い展開に持っていった感じが少し残念だったところです。
そうはいっても、十分にオススメできるミステリーだと思います。
なんか最近こういうミステリーを続けて読んでいる気がします。

裸の太陽

鋼鉄都市の続編でこれまたSFとミステリが上手く融合された作品でしたが、それらの要素よりも社会学的要素のほうが強い感じがしました。
ITの発達によって人を眺めるのが普遍的になる社会が来るのかも?

はてしない物語

まずメタフィクションとしての作りも上手く、物語の構成が面白いです。
また、主人公が強欲で身勝手になっていくところから、自分のことを思ってくれる周囲の人間の大切さに気付き、人間として大きく成長する物語となっていて、人としての模範を示してくれます。

舞台設定や登場人物たちのディティールも重厚で映像を想像する楽しさも味わえます。
ファンタジー小説として面白く、児童文学として道徳も教えてくれる素晴らしい作品でした。
年齢関係なく面白いし、万人に読んでもらいたいような紛れもない名作だと思います。

果しなき流れの果に

結局難しくてよくわかりませんでした。
時間、空間が飛び飛びになって話を追うのに一苦労だったし、抽象的な話が多く反芻するのに時間がかかったりで、読みにくかったです。
全体的な話の構成はお洒落だったと思います。
SF玄人向けの作品ですね。

バビロンⅠ

いつもながら陰謀の上に重なるさらなる陰謀、ミステリアスな女が魅せてくれました。
積み上がっていく謎が解明されていくカタルシスがたまりません。
上質なミステリです。
しかも良いところで「続く」ときたものだ。
来春が待ち遠しい限りです。

バビロンⅡ

いいところで終わって続きが楽しみで仕方ない。
政治家たちの公開討論のシーンは考えさせられる点が多々あり、今回一番の見せ場でした。
オカルト女の狂気が今後どう展開するのか楽しみです。
主人公だけが生き残らされ てる理由も明かされてほしいです

バビロンⅢ

1,2とは打って変わった内容で、違うシリーズの小説のようでした。
正解するカドの影響が感じられます。
野崎まどの作品は、ある程度狭い範囲で完結する内容が多かったのですが、バビロンは完全にセカイ系ですね。
これはこれでありです。
どうやって話をまとめるのか気になるところです。

パラサイトイヴ

専門的なことはさっぱりわからんが、SFホラーで面白かったです。
ただ、ぴたん連発の壊れ表現は個人的にはなしです。

左巻キ式ラストリゾート

怪作。
エログロ要素が激しい一方で推理小説でもある。
ポルノミステリー?それでいてメタ的だしセカイ系だし愛のゴリ押しだし。
ゼロ年代をごった煮して、上澄みではなく沈殿したものを固めたような作品といえばよいのだろうか。
確かに今作はゼロ年代の墓標でした。

狂気的な作品でしたが、これが2004年に書かれていることが一番の狂気だと思います。
私のようなキモオタに絶望と希望を与える作品でした。
全くオススメできませんが、オタクに読んでもらいたい、そんな無茶苦茶なものです。

羊と鋼の森

いい作品でした。
まずタイトルがいい。
読む前はどういう意味なのかわかりませんが、読み始めてすぐピアノの中のことを指していることがわかります。

主人公がピアノの調律師として成長していく、その一端を描いており、静かだけど確かな歩みを感じとることができる作品となっています。
一時の主人公の気持ちを仔細に描いており、情緒あふれる文章が読んでいて体に染み込んでいくかのようでした。

話の内容は短いながらも、読後感が素晴らしいおかげで満足感がありました。
読めば心が豊かになれる小説だと思います。
万人にオススメしたい。

ヒトの目、驚異の進化 視覚革命が文明を生んだ

当たり前と思っていることに焦点を当て、ヒトの目の機能について解説していく面白い内容となっていました。
肌色って何色なのか?、目が後ろにもついていない理由は?などの疑問から、実は目のこの機能って超能力だよねっていうことも教えてくれます。

多くの図や絵、統計データによって、私たちが意識していなかった目の機能にメスを入れ、新たな気付きを与えてくれる作品でした。
論文ほどのアカデミックさはなく(wikipediaも参照してるぐらい)、説明もわかりやすく読みやすいです。
自分の認識を手軽にひっくり返す体験ができる、おすすめの作品です

火の粉

サスペンスの醍醐味であるジリジリくる感じがたまらない。
犯人がサイコパスというわけではなく、誰もがもつ承認欲求に従順すぎる人で、異常ではあるが人間味もあるように描かれていました。
女性の心理描写も素晴らしく、様々な箇所でリアリティを感じる作品でした。

個人的にはエピローグにもう少し余韻が欲しいと思いました。
フリーフォール的展開なので最後までイッキ読みできる面白い作品です。
ドラマもこれから見ていきます。

百億の昼と千億の夜

阿修羅は美少女でブッダとイエスがバトルして、哲学でファンタジーでSFってラノベ?
でも全然ライトじゃない。
時間と空間の大きさに圧倒された感じで無気力になります。
無限って怖いね。
あとマンガのほうも読んでおきたい。

ピュア

「ピュア」
noteで話題となった作品。
グロテスクな状況が描かれているはずなのに、美しさを感じさせる文章表現でした。
本能のままに愛を求める主人公の姿がまさにピュアなのでしょう。

「バースデー」
この短編集の中で1番好きです。親友が性転換したっていう話です。
語り口は軽く読みやすいですが、男女の性差という取り扱いの難しいテーマとなっています。
それについて考えさせられつつ、文学としても面白い。
物語のシンボルとして登場するラブホが、ネガティブなイメージからポジティブなものへと変化していき、物語の雰囲気をうまく作り上げていました。道徳の教科書に載ってほしいお話って感じ。

「To the Moon」
現代版グリム童話って感じ。
残酷な百合物語でした。

「幻胎」
女性は女として、娘として、母としてどう生きればよいのかといったことを考えさせられる話でした。
女という性の難しさを感じた次第です。

「エイジ」
「ピュア」の男視点の話であり前日譚。
こちらについては特にぐっとくるものはありませんでした。

作品としての共通のテーマが性であり、特に女性について描かれていますが、男性が読んでも楽しめるし興味深い内容のだったと思います。
SF味は薄味なので、SF苦手な人でも読めるいい作品です。

ファンタジスタドールイヴ

なんだこれは…。
純粋にSF作品でした。
短いながらも腹一杯と思わせるほどの陰鬱さを持つ内容でした。
しかしそれだけに所々にある常識はずれの台詞や文章には衝撃と笑いを与えてくれます。
硬派さと馬鹿馬鹿しさの混合、なんとも不思議な1冊でした。

それと、今作のようにほとんど原作に沿わないようなメディアミックス作品には、初めて触れた気がします。
これはこれでありです。
強いギャップを作り異質感を持たせるだけで面白さがうまれるのだな、と考えました。
今後も時折こういう作品が出てくることを期待します。

ファントムピークス

緊迫感のあるパニック小説でした。
野生動物との共生は難しい課題ですね。

プリズンホテル1夏

キャラも魅力的だし、話のテンポもよく笑えるところもあり、面白い小説でした。
続きも多分読むと思います。

プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン 実績・省察・評価・総括

アニメマニアとか研究者とかビジネスマンとかが読むべき資料あるいは史料といったところです。
個別具体のビジネスプロジェクトの遂行について検討、検分した書籍であり、ファンブック的要素は少なかったです。

シン・エヴァがどういう思考のもとでアニメーション制作されたのか、どういうアプローチで商業的作品として売られたのかが詳細にわかり非常に興味深かったです。
また、一般論あるいは自分が参加した一プロジェクトの経験と比較をしてみると、書籍には書かれていない面白い知見が見えてくるかと思います

復活の日

やはりある意味食物連鎖の頂点に立つのはウイルスなのでしょうか。
世界が滅亡していく様がリアルに描かれていてぞっとしました。
最後の皮肉なオチも現実に有り得そうで、完成度が非常に高かったです。

閉鎖病棟

人間描写が丁寧に描かれていることで、ハンデを持つ人達の強さを感じられます。
最後のシーンは確かに感動的でした。
ただ、起承転結のバランスが悪く感じました。
精神病患者たちの過去話など全体的に重いので、個人的には読み進めやすいようにもっと緩急が欲しかったです。

ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々

事実は小説より奇なりとはまさにこのこと。
下手なホラーよりも怖く緊張感のある展開でした。
アカデミックさは薄めで、物語として楽しめるノンフィクションです。
まさに今読むべき感染症に関する書籍だと感じました。
おすすめの一冊。

ホワイトアウト

全体的に質の高い小説でした。
雪山のダムを舞台に男1人がテロリスト達に立ち向かうアクション映画のような作り。
それでいて勢いだけでなく情景描写、特に雪の描写や心理描写も丁寧で、いろいろな意味で読みやす い。
常にいい緊迫感を保たせながら話が進み、まったく飽きさせません。

単純に主人公対悪の構造というわけでもなく、うまく読者をミスリードさせていました。
主人公が人間離れしすぎというところはありましたが、アクション小説だからオッケー。
一気読みをオススメする小説です。映画も見てみたい。

マークスの山

長かった。
ミステリというよりは警察内部の人間関係を緻密に描いた、警察小説でした。

哀愁の漂う終わり方が印象的です。
しかし私には合わない作品でした。
1つ1つの描写が長くて話の進みが遅いし、一文も長いので読み進めるのがかったるかったです。

それにしても、警察内部ではあんなに自分勝手に行動する人たちでチーム組んで捜査しているのでしょうかね。
それと権力によるマウントの取り合いもあるのでしょうか、それも風刺の1つなのかもしれません。
私は純粋にトリックと推理を楽しめるミステリのほうが好きです。

舞面真面とお面の女

やはり最後にひっくり返してきますね。
無理のないミステリに仕上がっており、サクッと読めて面白かったです。
私もクリームソーダの似合う女子大生の従兄妹にお兄様と慕われたい。

マイナスゼロ

見事なタイムトラベル小説。

魔王

10年くらい前の作品なのにタイムリーな感じ。
今まさに読むべきなのかも。

街とその不確かな壁

昔の作品のリメイクということだけあって、私の好きな村上春樹だ、こういうのがいいんだよって思いながら楽しめました。
1Q84以降うーんって感じながらも読んでいた身としては、久しぶりに往年の雰囲気、テンポ感、文章を味わえて満足できる一作でした。

マリアビートル

マルドゥック・スクランブル圧縮

やっぱりアニメよりも心理的な面がわかりやすいです。
アクションもなかなか読みやすく、むしろ小説のほうがバロットとボイルドの強さを印象付けられる感じでした。

マルドゥックスクランブル燃焼

アニメでも思ったがやっぱりカジノパートは面白い。

マルドゥックスクランブル排気

カジノとバトル、いいところ詰め込んだ最終巻で、最後ちょっと切ない感じもよかったです。
緊迫した雰囲気の中にもくすりとくる部分があり、よくできた作品でした。
アニメもう一回見直します。

満願

「夜警」
銃ってやっぱりかっこいいよね。わかる。

「死人宿」
無情さを感じさせる1編。

「柘榴」
魔性の男。
人が死なないミステリーでしたが、なかなかエグい内容だと感じた。

「万灯」
社畜の鑑。
犯罪がバレるまでの経緯のトリックが面白かった。

「関守」
ジェットコースター的急転直下の内容が良かった。
恐怖が一気に押し寄せる感じがたまらない。

「満願」
表題作ながら地味な印象。
動機の真意は面白かった。

私的には柘榴と関守がお気に入りです。
単純に水準の高いミステリが詰まった、素晴らしい短編集でした。
無難にオススメの一作。

美亜へ贈る真珠短編傑作選ロマンチック篇

ラブストーリーにSFテイストを加えた短編集でどの短編もうまくまとまっていて面白かったです。
ただロマンスよりホラーを感じる部分も少々…。
梨湖という虚像、箱宇宙あたりはぞっとしますね。

水の棺

所々に散りばめられたワードをうまく重ねていてきれいな出来でした。
国語の試験問題に使われそうな作品でそこそこ面白かったです。

蜜蜂と遠雷

直木と本屋大賞をとるだけはあり、いいエンタメ小説でした。
ピアノの演奏シーンではまず文章の表現力を楽しめ、そこから情景や音を想像する楽しさが生まれます。
読書で文章、映像、音楽を楽しんでいるかのような感覚になれたのが素晴らしい。
実際に曲を聞きながら読書するのも一興です。

テンポもよいので読みやすい。
マンガかアニメを見ているかのようでした。

一方で表現の仕方が使いまわされていることは気になりました。
それと、主人公が順調に成長し続ける一本調子な展開なことにも物足りなさを感じました。
天才たちがただ活躍するだけ。
葛藤とか嫉妬とか挫折とかはありません。

でもそれらを書いていたら物語が長くなりすぎてに飽きる。
上がって上がってそのまま終わる構成でよかったと思います。

文章で音楽を表現する難しさを感じました。

長編でありながらそれを感じさせず、多幸感に満ちたまま読み終えることができるので、楽しい読書ができる作品であることは間違いないです。

未必のマクベス

全体的にお洒落な雰囲気が漂う小説でした。
登場人物たちの淡々としつつも強く感情が表に出る会話とか、利用されているモチーフとかに抜け目のなさを感じました。
マクベスについて知らなくても、ビターな恋愛小説として物語を楽しむことができました。
わりとオススメできる作品です。

麦の海に沈む果実

ミクロな世界のディストピアって感じでした。
孤立、閉鎖された学園内で不可解に生徒が死んだり行方不明になったりする事件が発生します。
その謎に主人公とともに読者も巻き込まれていくことでしょう。
美しく怪しい雰囲気に魅了されました。
ちょっと違った学園青春モノを楽しめました

無人島に生きる十六人

海の男たちが無人島で助けを求めながら前向きに生きていく、読者にも活力が漲ってくるかのような物語でした。
簡単に読めるし面白いし、元気を分けてもらえる一冊です。

無法の弁護人

もっと硬派なものかなと思ってたけど、やはり良くも悪くもキャラノベでした。
会話分多くて簡単に読めるしそこそこ面白い。
けどトリックはたいしたことなく、コンビである必要もなく、もっと面白くできたと思います。
続編は気が向いたら読みます。

村上海賊の娘

戦のシーンがド派手で、まるで少年マンガを読んでいるかのようでした。
最後は文字通り熱く燃えるバトルです。

主人公は作中では醜女と呼ばれていますが、現代的にはモデルのような美女として描かれており、なおさらマンガ感がありました。
そういう部分も含め、映像で見たいと思いました。

一方で、所々で入る歴史的注釈が多すぎてテンポを削がれています。
のぼうの時より強く感じました。
特に「この小説では」という文言はやめてほしかった。
小説にのめり込めません。
本の下部分に余白を作り、注釈をそこに入れるという構成のほうがよいのではないでしょうか。
バーティミアスみたいに。

それとせっかく海賊の話なのだから、もっと海の描写が欲しかったです。

重厚な歴史小説ではなく、歴史エンタメ小説として面白かったです。
歴史小説慣れしてない私にとってはちょうどいいのかもしれません。
次に読む歴史小説は影武者徳川家康にしようかなと思っています。

無理

日本が抱える闇の部分が描かれていて陰鬱な気分にさせられるほどのものでした。
そういった部分では面白かったのですが、群像劇が交差する部分にタイトル通り無理があり、結末も尻切れトンボな感じで、もっと頑張って書ききってほしいと思いました。

メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット

素晴らしいノベライズでした。
しかしやはり1.2の内容は今作だけでは追いきれず、ゲームやってない人にはわかりにくいかも。

メタルギア ソリッド スネークイーター

3以降のメタルギアのストーリーを楽しむなら、小説のほうがよりいいのかもしれない。

メタルギア ソリッド ピースウォーカー

作者は違えどもいい出来だと思う。
面白かったです。
ガンズオブザパトリオット買ってこなきゃ。

メタルギアソリッドサブスタンスⅠ

シャドーモセスの内容をオリジナル要素を混じえつつノベライズされたもので、相変わらず素晴らしい出来でした。
私自身の6年前ぐらいにプレイした記憶が、頭の中で映像となって蘇りました。

第三者にシャドーモセス事件の全貌が書かれたファイルが送られてきて、それを読み進めるというシステムで、それをうまく活かしてゲームの要素を取り入れていたのがよかったです。
設定も補完されるようにちゃんと改変されており、未プレイ、既プレイともにオススメできる1冊でした。
続刊が楽しみ。

メタルギアソリッド サブスタンスⅡ

ゲームでもオセロットの語りで驚いたことを読んでいて思い出しました。
陰謀に次ぐ陰謀で、陰謀論好きにはたまらないストーリー、でも少し辟易するかもしれませんね。
IT技術が進歩していく中、情報社会への警鐘という面もあるのかと思います。

相変わらずノベライズの出来は素晴らしいものでした。
来月発売されるファントムペインに繋げるために、「言葉」について言及されていたところも良い点でした。
是非とも消化不良だったVを見事補完してくれる作品となっていることを期待します。

メタルギアソリッド ファントムペイン

小島秀夫さんの解説にもあるよう、ノベライズに不向きなミッション形式を見事に違和感なくノベライズした野島一人さんには天晴。
見せ場は盛り上がり、物語も上手く補完され、高い完成度に仕上がっていました。

しかし、あくまでゲームに準拠というところで、ゲームをクリアした人が知りたい語られなかった中途半端な部分はゲーム同様抜け落ちていました。
そもそもMGSVがMGサーガとして蛇足であるという印象ではありますが、それはMGSにエンタメ的要素を求めるからだと思います。

MGSVは文学とか芸術とかに近いもので、英雄に別れを告げるとともにMGSのプレイヤーの心の中に英雄を生き続けさせるという役割を持った作品だったということでしょう。
日光東照宮の逆柱と同じ通年のもと、ああいう作品になったのだと考えています。

まあでも私自身はMGSVに納得はしていませんけどね。
内容云々はおいといて、ゲームを上手くノベライズしたということに関して言えば充分に満足させる出来でしたのでファンなら買いでしょう。
野島一人さんにはアウターヘブン蜂起とザンジバーランド騒乱のノベライズもして欲しいですね。

MOMENT

あらすじを読みさぞ重苦しくお涙頂戴的な内容かと思いましたが、切なくなる話ではなかったです。
人間の負の感情をよく描いている作品でした。
しかし、1話完結の4話構成と登場人物たちの軽妙な会話劇もあり、テンポよく読める軽さがありました。
無難にオススメできる1作です。

モモ

時間とは何かという小難しいテーマを取り扱っていますが、児童文学なだけありわかりやすい。
最終的には少女が悪に立ち向かうという冒険活劇ですが、社会風刺的な側面もあります。
子供の時に読み、大人になり再び読むと、違った面白さを感じるのではないでしょうか。

今作のように時間を扱ったものだからこそ、時間を経るごとに変わる面白さをより感じられるはずです。
いくつになっても楽しめる、素晴らしい作品でした。

約束の森

派手にドンパチやってるハードボイルドな面もあれば、共感できるホームドラマな面もあり、緩急がうまくついていて飽きさせないものになっていました。
最後の犬との会話のシーンはクサい、だがそこがいいって感じのグッドな演出でした。
かなりおすすめの1冊です。

あと、やっぱりマクナイトがかっこいいですね。
将来はドーベルマンとかシェパードとかラブラドールとかゴールデンとか、そこら辺の大きい犬が飼いたいと改めて思わされました。
それとふみちゃんがブチ切れるシーンはあるあるすぎて思わず笑ってしまいました。
お気に入りのシーンの1つです。

夜葬

読みだしたら止まらないという謳い文句通りではあるのですが、文章がライト+そこまで上手くないので読み進めやすいというだけでは…?
内容も色々な日本ホラー混ぜ合わせたような既視感のあるものでした。
小説ではなくアイドルが主演の映画とか深夜ドラマとかでやればいい作品だと思います。

邪馬台国はどこですか

歴史の通説を覆すような内容を、文献の紹介とともに紐解いていく、歴史論文のような小説でした。
とはいっても話の大まかな流れとしてはBARを舞台に4人が新説について語り合うというものなので、ほとんど会話文で構成されていてラノベ感覚で読めます。
ほとんどSSのようなものです

歴史の新説自体はどれも面白いものでしたが、小説として全体を見るとイマイチのように感じました。
登場人物の背景が薄すぎて、ただ役割が与えられている人になっている状態でした。
それと最終的になにか一つの物語に繋がるかのような伏線を張っておいて特に何もなかったのがミステリとして痛かった。

歴史にそこまで明るいわけではないので、どの話も読んでいてはえ~って感じになり、そこそこ楽しめました。
歴史に詳しくなくても読めるものだと思います。
が、小説としてはそこまでおすすめではないかなって感じです。
なにより読んでいて静香さんかわいそうだったし。

雪の鉄樹

人間の愚直さがよく表れている作品でした。
もどかしく苦しい展開が中盤まで続きますが、それでも読むことをやめることができない、素晴らしい文章力です。
最後には心の中に溜まった澱がきれいになるような感覚になりました。
人間ドラマ小説として別格の出来だったと思います。

一方で主人公とたった一人の友人との関係についての掘り下げが浅かったように感じました。
これは友人という概念に対しての私の価値観からでてくる感想だと思います。

単純にいい小説でした。おすすめです。

ユリゴコロ

ラストのシチュエーションを書くために他の部分も作ったって感じ。
手記のギミックは良かったです。
全体としては面白かった気がする…?

陽気なギャングが地球を回す

登場するファクターを見事に使ってうまく繋がりが作られている作品でした。
流れるように進むストーリーは作中で行われる銀行強盗なみの鮮やかさです。
エンタメ小説として充分にオススメ出来る作品でした。

妖精作戦

1984年にこんな作品が出ているとは驚き。
今読むと物足りなく感じるのは仕方ないが、SF初心者にはちょうどいいかも。

幼年期の終わり

四畳半神話体系

初の森見登美彦さんの作品。
なるほど確かに面白いです。
でも結構お腹いっぱい。
時間空けてから夜は短し〜とか読みたい。

夜は短し歩けよ乙女

二人の視点から面白おかしくすれ違っていく様が描かれていて、その二人の絶妙な距離間が楽しめました。
くすりと笑いを誘う部分も豊富で読むのが楽しかったです。
羽海野チカさんの解説ページもグッド。

夜の床屋

最初はオカルトをミステリで説明するために些か荒唐無稽な謎解きをしてるなと思ってましたが、意外な展開に驚かされました。
悪くはなかったけど、キャラが立ってなかったり結果ありきの過程だったりで物足りなさは否めません。

夜のピクニック

ピクニックのような軽さが全然ない。
ひたすら歩くことで自分の感情に気付いていき、たった1日で以前大きく変わることができた姿に青春を感じました。
単純に恋愛展開するのではなく、仲良くなるという展開になったところも青春小説として素晴らしかったです。

ただ、個人的な感覚ですが何でも話せれば親友ってことでもないと思うのでありますよ。
今作を読んで高校時代を思い出し、おセンチになってしまいました。
これを読んで感傷の念を抱くか、後悔の念を抱くかは読者次第ですね。

楽園のカンヴァス

美術館に行きたい気分になっています。
死後評価された画家ルソーの絵画を巡る物語で、主人公たちが物語内で物語を読み進めることで話が進んでいきます。

ミステリ調でありつつ、それでいてノンフィクションのように感じられる、面白い作品でした。
他作品も読みたいです。

ラストレシピ

作りが上手いミステリでした。
現在と過去の話が交互に展開していきますが、スムーズに読み進めることができます。
いろいろなところでミスリードを誘い、要素がつながっていき、最後の真実が明かされたときに思わず手を打ちました。

文章に癖がないのが良くも悪くもといったところです。
巻末にレシピの題目を全部載せているという、細かな要素も私の好みです。

今度映画でやるそうですが、映画で見たいという作品ではなかったです。
そこそこオススメの作品です。
私には刺さりました。

流星ワゴン

ドラマ見る前に読むべきでした。
ドラマの映像に引っ張られすぎる。
それぐらい面白かったということでしょう。
小説のほうは内容やキャラの描写に物足りなさを感じてしまいました。
息子を思う父の姿はドラマに負けず劣らず表れていてよかったと思います。
でも、ドラマのほうがおすすめです。

リライト

ハヤカワSFから出版されているけど完全にキャラノベだし、SFじゃなくてミステリーでした。
SF設定やアイテムに理論はなく、トリックのための要素となっていました。

タイムパラドックスを題材にしており、早い段階で読者に違和感を与え、先が気になる展開に仕上げられていました。
ただ、タイムパラドックスのネタバラシがわかりにくかったです。
そもそもこの問題自体が難しいから解説がわかりにくくても仕方ないのかもしれません。

キャラノベなので簡単に読めるし、そこそこ面白くてよかったと思います。
続編も見かけたら買って読もうかなという感じです。

リヴィジョン

リライトのときも思いましたが、やはり時間軸の図がほしいところです。
なんとなくで事の運びを理解しました。
ただリヴィジョンのルールが後半になるにつれよくわからなくなってしまいました。
話が短くサクサク読めるので、続きも機会があれば読もうかなって感じです。

流浪地球

「流浪地球」
太陽爆発での人類滅亡の回避策として地球ごとぶっ飛ばすという発想が面白い作品。
群衆心理の描かれ方もよく、パニックものとしても楽しめる。

「ミクロ紀元」
人類滅亡回避のために人類をミクロ化するというアイデア。
最後の数行はホラー要素。

「呑食者」
異星人VS地球人のスペースオペラ的作品。
異星人の正体も含め、アニメ的な描写が際立つ。
最後の地球人の行動に武士道を感じさせる。

「呪い5.0」
世にも奇妙な物語みたいなホラーコメディ的作品。
コンピューターウィルス怖すぎワロタ。

「中国太陽」
農夫からビルの窓清掃員、さらには人工太陽の清掃、そして宇宙の果への旅へと行く物語展開に夢が詰まっていた作品。

「山」
宇宙船によって海水が盛り上がってできた山を登り、異星人と対話する話。そもそも異星人視点で話を作ったほうが面白かったのではと思った。

6作品中4作品が人類滅亡の筋書きを書いている短編集となっており、科学的根拠まではわかりませんがアイデアは優れていると思いました。
加えて人間の愚かさと強さのそれぞれが描かれており、単純にSF的アイデアを披露するだけの物語になっていないところが好みです。

隷王戦記1

読む少年マンガ、あるいは黎明期のラノベといった感じのファンタジーサーガでした。
展開はスピーディーで飽きさせず、物語の展開や登場人物の相関関係などが王道で、わかりやすく面白い。
新鮮味はないですが、楽しい読書体験ができる作品です。
続刊も買ったので読むのが楽しみ。

隷王戦記2

テンポよく、しかし大胆に物語が進むので飽きさせません。
前巻は異能バトル色が強めだったのに対して、今巻は軍事戦略ものの色も出ていて、また違った面白さがありました。
敵味方両陣営の準備が整った感じで終わったので、最終巻でどんな戦いが起きるのかが楽しみです。

隷王戦記3

メインの登場人物の成長具合も見られ、王道展開詰め合わせで激アツでした。
が、やはり戦記ものは3巻では物足りない!
魅力的な登場人物たちも多いが故に、語りきれていない物語も多くもったいなかったです。
とはいえ希少な国産ファンタジー戦記として十分楽しめるシリーズでした。

レボリューションno3

私はこの物語の登場人物たちのように不良ではありませんでしたが、仲間とともに馬鹿騒ぎをやっている姿にどこか共感を覚えるところがありました。
読んでいて楽しい気分にもなれるし、どこか懐かしさも感じられたいい作品でした。

老人と宇宙

21世紀版宇宙の戦士と呼ばれてますが、宇宙の戦士をよりエンタメに寄せた作品でした。
設定が宇宙の超テクノロジーによるものといった感じで大雑把にまとまってますが、それはそれでわかりやすく読みやすく、結構質の高い作品でした。

我が心の底の光

読者を騙し裏切るという点ではいい作品でした。
物語は復讐劇なのですが、主人公の感情描写が極端になく何を考えているのかがわからない。
主人公の過去が語られていくものの、一向に復讐の動機が見えてこない。
でも、読みやすい文章と先の気になる展開で読みだしたら止まりません。

このミステリは復讐の動機こそがトリックでした。
それが明かされたとき、裏切られたという気持ちになりました。
しかもそれは決して爽快感のあるものではなく、重たい気持ちのまま読了といった感じです。
面白いことは確かですが、読み切ったときのきつい思いをするのでおすすめではないです。

和菓子のアン

軽いミステリーで、舌の上で餡子が溶けるみたいにサラッと読めます、とそれっぽく言ってみました。
もちろんそれなりに面白かったです。

われはロボット

1950年に書かれたものとは思えないほどの完成度です。
今読んでもまったく古さを感じさせないどころか、タイムリーと感じさせるほどです。
ロボット三原則によって矛盾が起こるケースをミステリー調に描く短編集で、どの短編も質が高く面白いです。

特に最後の短編である災厄のときは、あと何十年後かに現実に起こってしまうかもしれないリアルさがあり、背筋が冷える面白さでした。
トランプ政権になって1984年がバカ売れしたように、今後AI、ロボットへの不安が高まるような出来事が起これば今作も一時的に売れるかもしれないと思いました。


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