ジャングルへ、そしてヤツに刺される。社会人一年目の人生を変えた旅
2012年の9月。社会人一年目。
新卒で入った会社を辞めて、バイヤーの道に踏み出す半年ほど前のことである。
3連休に有給を2日間つなげて、5日間の連休を確保した。
(新入社員がそんなに休むの?みたいな空気が若干あったが)
新卒として入社したメーカーでは、自宅からバスで20分かけて武蔵小杉にある町工場に通い、研究室にこもる日々。
仕事にも慣れ、変化の少ない日常を送る反動で、久しぶりに思いっきり旅に出たくなった。
そして、時間と場所にとらわれない生き方を求めて独立をするきっかけとなった、マレーシアへの旅に出かけた。
ジャングルに飛び込もう
住宅街。バス。工場。薬品。
普段は無機質な人工物ばかりを見ているので、大自然に飛び込みたい気分だった。
学生時代にはバイトでお金を貯めては、東南アジアを中心に旅した。
海が好きなので、ビーチや島など海辺を目的地にすることが多かった。
よし、今回は気分を変えて海以外に行こう。
5日間という限られた日数。
少しでも現地の滞在時間を増やせるよう、目的地は今回も東南アジアに決定した。
東南アジアにある、海以外の大自然は何があるだろう?
そうだ、ジャングルに行こう!
ジャングルにはまだ行ったことがない。
せっかくだから、東南アジアで特に大きいジャングルに行ってみよう。
調べたところ、マレーシアにある『タマンネガラ』というジャングルが目に留まる。
マレーシアにはまだ行ったことがなく、いずれ行きたいと思っていた。
こうして、今回の旅の目的地が決まった。
中華風の建物に、モスク。3民族の街クアラルンプール
東京から飛行機で6時間ほど。
まずはマレーシアの首都、クアラルンプールに入る。
ここの名物はやはり、シンボルでもあるツインタワー。
高さはなんと450m!
東京タワーより高いピカピカの建物が2つ並んでいる。
ふもとから見上げると、そのスケールに度肝を抜かれた。
クアラルンプールの面白いところは、東洋と中東の文化が融合している点。
こんな中華風の寺院もあれば、
イスラム圏でおなじみのモスクもある。
マレーシアは3民族が暮らす国だ。
マレー系(約65%)、華人系(約24%)、インド系(約8%)が同じ生活圏で一緒に過ごしている。
3言語(英語、中国語、マレー語)を話せる人もけっこう多いのだとか。
日本語で精いっぱいな自分には耳が痛い。
洞窟はロマン
ジャングルに向かう前に、どうしても行きたいところがあった。
「バトゥ洞窟」だ。
鍾乳洞の中に寺院が作られているらしい。
クアラルンプールから車で1時間。
入り口に到着した。
マレーシアにはあちこちにサルがいる。
犬や猫よりもサルを見る機会の方が多いくらいだ。
鍾乳洞が見えてきた。
おぉ、広い!
いたるところに壁画があって、見ごたえがある。
やっぱり洞窟はロマンにあふれている。
いずれ、もっと大きい洞窟にも潜ってみたい。
タマンネガラに到着!ジャングルへダイブ
いよいよ、タマンネガラに向かう。
ジャングルのほとりまではバスで移動できるが、そこからはボートでの移動になる。
濁った川をさかのぼっていく。
2時間ほどで、タマンネガラに到着!
ジャングルのすぐ横にある宿。
木造のヴィラが立ち並んでいて、いい雰囲気だ。
まるでターザンのような、期待通りのジャングルにテンションが上がる!
さっそく飛び込んでみよう。
【ジャングルに飛び込む時におすすめのBGM】
Guns N' Roses - Welcome To The Jungle
南国っぽい鳥。
橋を見つけると、渡らずにはいられない。
引き返すタイミングを見つけられず、ぐいぐい奥に進むこと約2時間。
完全に迷った...
河で石を投げて遊んでいる子どもに道を聞こうとしたが、言葉が通じない。
正規ルートっぽい道に戻ろうとウロウロしていたところ、観光客の一家に遭遇。
地図を持っていて、道をメモした紙をくれた。
ありがとう!
「まっすぐ地図通りに進めば正規ルートに戻れるよ。あと、虎に気を付けなよ!」
虎が出るのかこのジャングル...
1時間ほど歩いて、宿に帰還。
見覚えのある建物を見つけた時の安心感は、今でも鮮明に覚えている。
夜のジャングルは別世界。そして、刺される。
宿で夕食を取った後、ナイトウォークというツアーがあったので、参加してみた。
ジャングルは昼と夜では、表情が全然違う。
(苦手な人すみません)
いろんな生き物が見れて楽しかった。
ツアーを終えて、宿の敷地内に戻る。
時間は21時ころ。
寝るにはまだ早いし、電波も飛んでいなくて暇つぶしもできないので、
宿の敷地内をぶらぶら歩いていると、
なんとバクを発見!
体長は1mほど。かなりでかい!
テンションがあがり、もっと近くで見ようと芝の中に足を踏み入れたところ...
「痛った!!」
足の指先にかつてないほどの激痛が走る。
とっさに目をやると、
(イメージ)
3~4cmくらいの小さいサソリが、ダーツみたいに指先に突き刺さっていた!
とっさに足を振ったが、ぜんぜん抜けない。
しっかりと突き刺さっている。
恐る恐る手を近づけて、デコピンで弾いたところ。
何とか抜けた。
サソリが抜けて冷静になると、さっと血の気が引く感覚になった。
小さいとは言え、サソリに刺された。
もうバクどころじゃない。
「あれ、これ死ぬのでは?」
宿のロビーに行き、店員に焦りながらも事情を伝える。
サソリって英語で何ていうんだっけ?
確かスコーピオンだ。
「小さいサソリに刺されたんだ。ほら、この指先。
毒とかないかな?」
伝わっているか不安なので、絵にも書いて伝える。
店員が笑いながら何かを答えるが、マレー語なまりの英語であまり聞き取れない。
あまり深刻な感じではないが、大丈夫ということか?
「フィーバー」って言った気がした。熱が出るのかもしれない。
自分の解釈に自信が持てず、万が一があってはと念入りに確認をしていると、
「どうしたんだい?」
と後ろから声を掛けられた。
振り返ってみると、長いコートに大量の鈴をぶら下げた謎の男が立っていた。
(嘘みたいな話だけど、本当にそんな恰好をしていた)
話を聞くと、イタリアからきた旅行客らしい。
小さいサソリに刺されたということを伝えると、
「大変だったね。これを塗っておきなよ」
と、何やらカバンから取り出した。
無地の小さいチューブに入った、虫刺されの薬みたいなものだった。
(イメージ)
これってただの虫刺されの薬じゃ?
本当に効くんだろうか...
しかし、藁にもすがる想いで謎の薬を指先に塗らせて貰った。
起きてても不安になるだけでなので、もう寝ることにした。
このまま目が覚めないかも。という嫌な想像をもみ消すために、音楽を聴きながら眠りについた。
朝を迎えた。
熱が出ている様子はない。
刺された指先を見ると小さい刺し跡が残っているが、特に腫れなどもなかった。
大した毒のないサソリだったのか、謎の薬が効いたのか。
ともかく、何事もなさそうで良かった。
今回の教訓は、
海外ではサンダルで草むらに入ってはいけない。
である。
旅のライフハック(いのち的な意味で)として、ぜひ覚えておいて下さい。
自由とスリルに満ちた旅を終えて
タマンネガラには1日半ほど滞在して、クアラルンプールへ。
そのまま日本に帰国した。
かなりスリリングな旅だったが、旅をした!という充実感が満ちていた。
社会人になってからは3泊以上の旅ができていなかったので、
がっつり時間を取って行きたい場所に行く楽しさを久しぶりに思い出した。
それと同時に、明日からまた変化の少ない日々に戻る寂しさもあった。
次、こんな旅ができるのはいつになるだろう。
先輩社員はだんだん有給が取りづらくなると言っていた。
年が経つごとに、生きる世界が狭まっていくんだろうか。
自分の将来が尻すぼみしていくような窮屈さを感じた。
何か、アクションを起こさないといけないんじゃないか?
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その半年後、大した貯金もなく、稼ぐアテもないまま会社員を辞めた。
そしていきなり詐欺にあって人生の暗黒期を迎え、
「旅を仕事にしよう」と一念発起して、
バイヤーの仕事を始める。
その話も機会を見て書いてみようと思うので、
よかったらまたお読み頂けると幸いです。
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