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筋線維タイプの移行について

前回、筋線維の発達は遺伝子レベルで生まれながらに決定しているという記事を書きましたのでそのことについて少しだけ掘り下げます。

まず、ご存じの通り、ヒトの骨格筋には速筋線維と遅筋線維という二つの筋線維のタイプが存在します。簡単に言うと、速筋線維は瞬発力や一瞬の力発揮に優れているが疲労耐性が弱く、遅筋線維は瞬発力や一瞬の力発揮は劣りますが疲労耐性が高いため、持久力に優れます。

また速筋線維はタイプⅡ、遅筋線維はタイプⅠと表されます。
これらのタイプⅠとタイプⅡの割合が生まれながらにして決まっているため、タイプⅡを多く持って生まれたヒトの方が筋肥大しやすい(筋力トレーニングの抵抗に強い、あるいは適応しやすい)ということになるのです。
筋力トレーニングでは一瞬の力発揮が必要なのでより速筋線維を動員しますからね。
更に、速筋線維は二つのサブタイプに分けることができます。タイプⅡbは明らかな速筋線維で瞬発力や一瞬の力発揮に優れますが、タイプⅡa/タイプⅡxは一瞬の力発揮に優れながらも、疲労耐性が高いタイプですので、速筋線維でありながら遅筋線維のように疲れにくい(持久力をもつ)といういわゆるハイブリッド型であるといえます。

先述のとおり、タイプは遺伝によって決定されていますがトレーニングによってタイプⅡにおいてはそのタイプの移行が可能となり、持久的トレーニングを積むとタイプⅡbからタイプⅡx/Ⅱaへの移行がみられます。
つまり持久的な機能に優れた速筋線維を作り出すことが可能であるということです。
これはタイプⅡx/ⅡaにおいてミオシンATPアーゼのアイソフォームの量が変化することで引き起こされると考えられます。
また、高強度のレジスタンストレーニングと有酸素性トレーニングを組み合わせたサーキットトレーニングやインターバルトレーニングによってその移行は顕著にみられますが、残念ながらタイプⅠ⇔タイプⅡのこの両者間での移行がみられることはまずありません。
したがって、根本的な筋線維タイプの移行はみられないということになりますので、やはり基本的な身体能力の限界は生まれながらにして決定されているといっても過言ではありませんね。

またPGC-1α(転写共役因子)と呼ばれるエネルギー産生や熱消費に関わる遺伝子発現を制御する役割を持つ分子を用いた面白い研究もあるので興味ある方は是非。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/64/1/64_36/_pdf/-char/ja


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