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【さわた幼稚園講演】子どもを伸ばす環境づくりⅡ~強さ・したたかさ・しなやかさ~

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今年度2回目の講演です。
今日は,子どもたちの将来のために,
今,私たちができることを考えていきましょう。

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1回目の講演を受けて,
このようなご質問をいただきました。
目の前に小学校入学が迫っていると,
勉強以外でも心配なことがありますよね。

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もし,お子さんが「学校に行きたくない」と言い出したら…。
まずは不登校についてお話をしていきます。

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不登校とは,このような意味になります。
昔は登校拒否と呼んでいましたね。

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お子さんが不登校になるきっかけは様々です。
大きく2つにわけられますが,
学校が嫌になってしまう何らかの原因。
そして家にいたい,家から離れたくないと思うような原因。
その他に起立性調節障害と言う,
朝になると具合が悪くなる体の不調によって
学校に行けない場合もあります。

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不登校は,
学校に行きたい理由がないこと。
例えば,嫌なことがある,楽しくない,
行く意味を見出せないということですね。

一方で,我が家は楽しい,家にいれば自由だと,
家にいる心地よさがあまりにも大きすぎるという
このギャップが問題だと言われています。

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不登校を予防する,
または不登校になった子が,
再び学校に行けるようになるためには,
まずは学校に行きたい理由を増やしていくことです。
学校生活で困ったことを解決していき,
学校生活に楽しさや意義を見つけられるようにしていく。
これは学校の先生の仕事です。

それと同時に,
家が心地よすぎるとか,
何でも思い通りになっているという環境を改善していく。
これは親御さんの役割になります。

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実は,子どもたちが毎日学校に行くために一番必要なことは,
惰性の力だと私は考えています。

惰性と言うと,ネガティブなイメージをもたれるかもしれませんが,
言い換えれば習慣化ですね。
毎朝「よし,今日も学校に行くぞ!」と
意気込みながら学校に行くのではなくて,
何も考えずに当たり前のように支度をして,
学校に行く。
何のエネルギーもモチベーションもいりません。
これが一番強いのです。

私たちが仕事に行く場合もそうですよね。
惰性の力,実はとても大事なのです。

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このグラフをご覧ください。

学校の先生たちは,
子どもが不登校になる原因が家庭にあると考えています。

一方で,実際に不登校になった子どもたちに聞くと,
原因は様々なのです。

この調査では,わずかな差ではありますが,
先生との関係が不登校の原因として一番多くなっています。

一方,先生たちの自覚は2.2%。
えらい違いですよね。

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子どもたちが生まれてから,小学校入学までは,
一人一人の個性に寄り添い,
集団生活を送れるようサポートしつつ,
次第に集団生活のルールやモラルなどを教えていきます。

学校では,みんなと同じ,横並びの枠が強くなります。
個性は,学校の中で許される範囲でのみ認められるわけです。
子どもたちは,この細い道を踏み外すことなく,
上手に通って卒業しないといけないわけです。

社会に出てしまえば,
意外と様々な価値観や世界があり,
人間関係があり,
一人一人の個性を生かして
生きていくことが可能です。

問題は学校に通う時期なのです。
この細い道から,
ポロリポロリと
ドロップアウトしてしまう子どもたちがいるわけです。

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エジソンは小学校をクビになったと言われています。
強烈な個性の持ち主であったエジソンでは,
細い道を上手に通っていくことが難しかったのでしょう。

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私は社会という広い世界に出るまでに,
細い一本道ではなくて,
様々な通り道が作れないものかなぁといつも思っています。
日本ではなかなか難しい現実があります。

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これはエビデンスがある話ですが,
学校で勉強したり,集団生活を行ったりすることで,
子どもたちの能力は上がることがわかっています。
ただそれだけで,学校に行かなければおしまいだということでありません。

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大人は子どもに対してこのようなことを言います。
私もかつては言っていたかもしれません。
ですが,これは絶対的なことでしょうか?

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不登校の子は,
学校に行かない,行けないことは
悪だと思ってしまいます。
学校にいけない自分はダメなんだと。

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もし皆さんのお子さんが学校にいけなくなり,
罪悪感を抱いて苦しんでいたならば,
「生きていればそれでいいんだよ」
「生きていることが一番なんだよ」という
基本的なところに立ち返って,
お子さんと接していただきたいと思います。

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学校に行かないと社会でやっていけないよ。
これが当てはまる例もあります。
不登校が続き,そのまま就職せず,
家に引きこもってしまうケースは実際にあります。
それを最近ではニートと呼ぶことがあります。

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かつては,無職と言っていました。
ニートの定義はこのようになっています。
一旦社会に出て働いたけれど挫折し,
ニートになってしまう場合もあります。

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なぜ若者はニートになってしまうのか?
そこには自信のなさが関係しています。
特に人間関係に対しての自信のなさが大きいですね。

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過剰な自信なんて必要ありません。
人に会ったら挨拶をすればいい,
失敗したら謝ればいい,
わからないことは聞けばいい。
「どこに行っても何とかなるよ」という
ささやかな自信がもてれば,
何とか社会でやっていけるのだろうと。
そのためには,ほめることに加えて,
やっていくとよいことがあります。
それを後でお話をしていきます。

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その前に今どきの子ども・若者たちは
どんなことを考えているのでしょうか?
どんなことに悩んでいるのでしょうか?

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これは実際に佐渡の学校であった話です。
今どきの修学旅行は,旅館に大人数で寝るのではなく,
ホテルの個室で泊まる学校もあるとのことです。
コロナ対策ということもあるのでしょうか。
そんなのつまらないじゃない。
修学旅行と言えば友達と一緒に夜を過ごす。
そこが一番の楽しみのはず。
ですが,当の生徒さん達にしてみると,
個室で寝る方が気を遣わずに安心して眠れるのだそうです。
友達とはしゃいだり,話をしたりすることはもちろん楽しいのですが,

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トイレや洗面台の順番を気にすることもあり,
寝るときまで一緒というのは
気持ちがしんどいのだそうです。

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昔から,子どもは友達の輪から外れることを極端に恐れます。
それは生物が本能的に備えている危機意識から来ています。

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このようなタイトルの本もあります。
みんなの前で目立ちたくない,
できればその他大勢で埋もれていたい。
そんな意識の生徒たちが増えているそうです。

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私が教えている保育士の卵たちにも言えることなのですが,
保育の知識や技術を十分に備えていても,
社会や保育現場の中で
自分のメンタルを健やかに保つことができなければ,
体調を崩してしまったり,
仕事から離れてしまったりせざるを得ません。
社会でしたたかに,しなやかに生きていくためには
心の強さが必要なのは確かです。

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私はこれまでの講演の中で,
ほめることや愛着形成について
皆様にお話をしてきましたが,
それだけで本当にいいのだろうか?
という疑問をもたれた方もいました。

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強く生きていく力をもってほしい。
そのために大人は何ができるのだろうかと。
巨人の星のように厳しく厳しく鍛えあげるのは,
まさに昭和のやり方です。
生まれてから幼児の間は,
愛着形成こそが強さの基本になります。

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愛着がしっかりできている子は,
安定型愛着スタイルと呼ばれる
心の土台がしっかりした子に育ちます。
私がこれまでの講演でお話ししてきたことはこれです。
これは間違いなく基本です。

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こんなお考えの人もいます。
ほめると子どもはダメになってしまうのでしょうか?
この本を読むと,決してほめてはいけないとは言っていません。
何をほめて何をほめないのか,

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弱い大人にしないために,
我慢したり,困難を乗り越えたりする経験は
避けては通れないのだと作者は主張します。

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今,子どもたちに,いや私たちに必要な強さとは何か?
と問われたら,
私はこのレジリエンスを提案します。

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例えば,強く硬く太い大木であっても,
台風のような強い力の前にはポッキリと折れてしまうこともあります。

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逆に,細くても竹のようにしなり,
傾いても,また元に戻る。
この折れない柔らかさといいますか,
しなやかさをレジリエンスといいます。

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生物界には適者生存の法則というものがあります。
ライオンのように強くても,
周りの環境に適応できなければ
飢えて死に絶えてしまいます。
草食動物であっても,
その場の環境にうまく適応できる

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したたかさがあれば,
生きながらえ,自分の遺伝子を次に残すことができます。
必要なのは,頑強な強さではなくて,
柔らかく倒されずに
その環境でうまくやっていける
したたかさではないでしょうか?

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レジリエンスの高い子は,
このような考えをもちやすいです。
逆に,低い子はどうしてもマイナスの考えに陥りやすいです。

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この「やればできる!」という感じですね。
消して自分の強さを誇示せず,
相手を攻撃せず,
困難を前向きに受け止め,
自分のできる努力を続けていく。
そんなイメージです。

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また,何でも自分で解決することが強さではなく,
困ったことがあったら,上手に人に頼れることも
レジリエンスの1つです。
ここが昭和の時代の強さとは違うのかもしれません。

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レジリエンスには具体的に4つの筋肉で表される心の強さがあります。
子どもたちがこの4つの意識を
もっていることが,レジリエンスの強さにつながります。

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もちろん子どもが自然に身に付けられることはなく,
親御さんが,日々このように語りかけをして,
子どもたちに意識付けをしていくことが効果的です。

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お手伝いもよい方法です。
家族に貢献することをして感謝される,
達成感を味わうことでも,
「自分はできる」という筋肉を増やすことができます。

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皆さんはどうでしょうか?
お子さんが歩んでいく道に
様々な石が転がっていたら…,

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それを先回りして
きれいに避けてあげて,
つまずくこともなく,しんどいこともなく,
スイスイと歩けるようにしてあげるでしょうか?

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大切なのは先回りすることなく,
失敗や困難,辛いことをどうやって乗り越えていけばいいのか,
どうやってクリアしていけばいいのか,
そこをお子さんと一緒に考えていくことです。

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失敗したり,困難にぶつかったりして,
子どもたちは悲しんだり落ち込んだりすることもあるでしょう。
そんな中で,「学校に行きたくない」と
言い出すお子さんもいるかもしれません。
そんなネガティブな気持ちを,
ごまかすことなく,避けることなく,
まずはしっかりと受け止めてあげることが必要です。
受け止めた上で,大人に頼ったり,解決法を考えたり,
実際にやってみたりしながら,
レジリエンスの力を伸ばしていくわけです。

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このようなご質問もいただきました。
レジリエンスに関連させて
私が思いつくアイディアをお話します。

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どんな体験・遊びをしたらよいのだろうと考えると,
ちょっとしんどいけれど達成感のある,
やり遂げたという気持ちになれる体験がお勧めです。
私の思いつくアイディアではこんなものしかなかったのですが,
お子さんの好きなことやできることに合わせて
ちょっとしんどいけどできたよ!という体験を
親子で一緒にやってみてはどうでしょうか。

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佐渡市の中学校では,キャリア教育と言いまして,
職場体験をしながら,
その職場の課題を解決するためのアイディアを
自分たちで考えるという学習を行っています。
きっといろいろとしんどいこともあるでしょうが,
達成感の味わえる学習になっています。

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遊びには2種類あると思います。
お金があれば何でもできる消費としての遊び。
そしてお金がかかるものもあれば,
かからないものもあると思いますが,
何かを作り出す,生み出す遊びです。
やはり,ちょっとしんどいけどできたという感覚を味わうには
創造的な遊びがお勧めです。

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最後に,レジリエンスにプラスして,
子どもたちの強い心を育てるための
私からの提案です。
子どもたち一人一人の強みは違います。
そこを見つけてあげて,
徹底的に伸ばしてあげる。
これが,これからの時代に必要な強さになると
私は考えています。

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この表を見てください。
職業別の時給を表しています。
最低賃金と言いますが,
大体時給800円位の仕事もありますよね。
逆に1万円なんて言う,
うらやましい仕事もあるわけです。

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そしてなんと!
コンサルタントと言う,
社長さんにアドバイスをするようなお仕事ですが,
売れっ子のコンサルタントになると,
なんと時給が8万円だそうです。
最低賃金の時給に比べて100倍です。
仕事のきつさや,人間の価値なんて
そんなに差はないはずです。
では,なぜこんなにも差がついてしまうのでしょうか?
何がそんなに違うのでしょうか?

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それは希少性です。
あなたしかできない。
だから,高いお金を払ってでもあなたにやってほしい。
この希少性が高ければ高いほど時給は上がります。
あなたの変わりはいくらでもいるという仕事は,
時給が安いのです。

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例えばポケモンカード。
普通のカードよりも
レアカードの方が希少性が高いので値段が高いです。
これと同じです。

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ですから,子どもたちにも
他人よりも希少性の高い,
その人しかできない,
オンリーワンの才能があれば,
自信をもって社会で生きていくことができると思うんですが,
イチロー選手のように,
野球でオンリーワンになるなど,
それだけで誰よりも勝っている能力をもてるのは
本当に一握りの人たちです。

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ここで藤原和博さんという方が,
こんなことを言いました。
私は,なるほど,これならできそうだと思いました。

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1つのことだけでは,オンリーワンにはなれない。
ですが,3つの得意分野を掛け合わせれば,
かなり高い確率でオンリーワンになれそうです。

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強みって何かと言いますと,
具体的にはこういうことです。
子どもたちが,好きとか得意とか,
このことならずっとやっていられるとか,
それらを掛け合わせていくわけです。

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さんまさんのように,
お笑いだけでオンリーワンになれるのは一握りです。
そのことに気づいてしまった
お笑い芸人さんがいました。

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この人,キングコングというコンビの西野さんです。
キングコングの漫才は,かなり面白いです。
かなりのレベルなのですが,オンリーワンではない。
西野さんは,お笑いだけでオンリーワンになることを諦めました。
そこで…,

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お笑い芸人と,
絵本作家,
そして実業家
という3つを掛け合わせて,
日本では誰もやっていない,
他の誰でもない存在になることができました。

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今はまだ,子どもたちは,
好きなこと,
得意なこと,
才能があるかもしれないことを
見つけている時期です。
「これが自分の強みだな」と思う時期はまだまだ先です。
今はたくさんの体験をさせてあげて,
どんな芽が出るかわからなくても,
いろいろなを子どもたちに蒔いてあげるときでしょう。

今日のお話は以上です。
ありがとうございました。

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