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愛する人の尊い声


今でもこのときのことを
ことばにするのは、
とても怖いこと。


“勇気”だけじゃなく
“覚悟”もないと
またあの「真っ暗な闇」に
飲み込まれそうになるわ



あれは3年前の9月だった

いつもと変わらない

「日常の朝」

になるはずだった


突然、本当に突然


いったんここで消えたのよ


電波が届かなくなった
テレビの砂嵐のように
いきなり“ぷっつり”
記憶が消えたのよ


ただ砂嵐の中で
ぼんやりと映像として残っているのが

 

「赤いうみ」

(あとでわかったんだけど
ばったり倒れて、頭が割れていたらしいわ)


それからパッと
記憶が戻ったときには
わたしはベッドの上だった


先生と看護師さんたちが
わたしの周りでバタバタしていたの。

何がどうなっているか
わからないまま
ボーッとしていると

だんだん息が苦しくなって
わたしにつながっていた
機械が
“ピコンピコンピコン”と
激しく鳴り響いたの


そのとたん
まるで水の中に沈んでいるように、とにかく苦しくて
息が吸えなかった

ピコン ピコン ピコンと
鳴り響くたびに
猛烈に苦しくなったわ

そしてもがいていると
 “暗闇の中に” 
わたしがいることに
気付いたの


 “三途の川”


だと、
わたしは認識していたわ


だけど真っ暗で
どう川を渡ったらいいのか
わからなくて
ウロウロしていたの


怖くて怖くて…
心細くて…


そんなとき
わたしの名前を必死で呼ぶ声が聞こえた瞬間
“かすかな光”が見えた


手探りしながら暗闇を
光のほうに歩き始めると
「お姉ちゃん」と目が合った気がしたわ。


その“画像”を境に
わたしは楽に呼吸が出来るようになったのよ。


『うそのような
    ホントの話』


あとで姉に聞いたら、
今まで白目を向いて苦しがっていたのに
しっかりと目が合った瞬間があったんですって。


わたしが暗闇の中で聞いた
あの声は
間違いなく「お姉ちゃん」
だったのよ。

必死にわたしを呼んで
暗闇から引き戻してくれた


あと数分遅ければ
わたしは“川”を
渡っていたと思う。


あくまでもわたしの経験で


もちろんあなたに当てはまる話ではないのよ


だけど愛する人がもし
暗闇に 紛れこんでしまったときは
必死で愛する人の名前を
呼んであげてほしいの


必ず聞こえているから


『生きるちから』


は、とても
強いものだと思うから


わたしが今こうやって
 “日常の毎日”
を過ごせているのは


『愛する人の

     尊いの声』


があったから。


愛する人の思いは
奇跡を本物にしてしまう
揺るぎない「ちから」なのね



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