ダイエットと変化を起こせる閾値の話
ダイエットをはじめた。3月の終わり頃のことだ。
2月末頃、リモートワークがはじまって会社に行く回数が減り、冬のはじめから週3通っていたトランポリンジムにも行けなくなった。
消費カロリーが減ったのだから摂取カロリーも減らす必要があったが、むしろ増えた。
「食べることくらいしか楽しみがない…」と呟きながら、ひっきりなしに何かをつまんでいた。自宅だと人の目がないので際限がない。
結果、体の線が見事にだるーんとなり、体重もかつてない数字を記録した。
流石にまずい、と思った。
体重も、体型もだが、なにより危機感を感じたのは、自尊心がダダ下がりしているのを感じたことだった。
食べることをコントロールできていない自分。
その結果、望まない体型になっていく自分。
それなのに、それに何も抗していない自分。
そんな自分に、完全に嫌気がさしてきていた。
自分が自分のことを嫌っている状態は、まずい。
ダイエットをしよう。
***
ダイエット方法はシンプルなカロリー計算を選んだ。
カロリーと栄養素を計算してくれるアプリに、朝、夕、晩、間食に食べたものを記録して、摂取カロリーを目安程度に抑える。
しかし単純にカロリーを減らすことにだけ注力すると、筋肉が落ちる。
ただでさえ筋肉量が下降線に入っているアラフォーにとって、筋肉の減少に拍車をかける行為はわりと致命的だ。よしんば体重が減ったとしても体の線はより崩れ、後々より太りやすくなる。
なにより体調を崩しやすくなるのだ。つらい。
そんな自分の現状を踏まえ、糖質を控えめにすることを中心にカロリーを抑えつつ、プロテインも活用しつつタンパク質や脂質は摂り、青汁やサプリで栄養を補い、軽い筋トレ的な運動を週2回以上するという生活を始めた。
おやつは基本食べず、たまに食後にデザートをつまむ程度。
食事は、タンパク質や糖質より、野菜を先に食べるようにした。
ルールは意識しつつ、100%は目指さず80%位の達成率を目指す、というくらいのゆるめの力加減で、時々はカロリーオーバーしながら、好きなお店のテイクアウトを楽しみ、普段は制限内にほぼほぼ収めて、一ヶ月が過ぎた。
開始した時期もよかったのか、さくさくっと体重と体脂肪は落ちていき、最高値からマイナス3キロ、体脂肪率は-2%くらいのところで安定した。
***
この時点でダイエットは成功しつつある、と言ってよかったと思う。
鏡に映る、だるんとした線は徐々に補正されていき、体重はリモートワーク開始時より少し少ない程度を連日記録した。
なにより、「自分の生活をコントロールできている」という感覚が、自尊心の回復をもたらしてくれた。
空腹を感じる間もないくらい、お菓子をだらだらと口に運んでいる時、本当はちょっとしんどかった。
お菓子を食べなくなって、ぐっと強い空腹を感じる時は増えたけれど、それは私にストレスというより、自分の体の健全さを感じさせてくれるもので、悪くない。
私が一番欲しかったのは、いろいろなことが制御不能で、他律的に制限されるこの状況で、自分が何かをきちんと思うようにコントロールできるという実感だったんだな。
そんなことを思った。
***
と、まあ、ここで終わるとそれなりにちゃんとできたよって話なんだけど、一ヶ月過ぎた頃に、私は唐突にダイエットに飽きた。
ぱたんっとなにかの音がしたかのように、飽きた。
毎日つけていた食事記録がぷっつり途絶え、体を動かす頻度が不規則になった。
お菓子は引続き控えていたし、逐一記録をせずとも、一ヶ月も記録していると、だいたい自分がどれくらいカロリー摂取しているかはわかるもので、基本的に一定量以下には抑えられていた。
それでも、面白いようにぴたりと、体重と体脂肪の減りと、体の線の変化は止まった。
ちゃんと記録していた頃の意識の度合いが、8割とすると、6割から5割程度に落ちた感じだろうか。
それで、停滞。むしろ、やや悪化。
なるほどなあと思って笑ってしまった。
***
仕事の仕上げでも、完璧を目指すより、8割程度で素早く仕上げろとは言われるが、6割でいいとは言わない。
接触率も8割減で、ようやく感染数の実際的な減少に転じる。
8割はどうやら達成可能で、かつ、変化を起こせる最適なラインらしい。
それならもう一度8割まで意識をあげて、自分が期待する変化を達成しよう。
BMI20弱。
体脂肪率は安定的に20台前半。
お腹のお肉がジーンズのウエストに覆いかぶさってこない。
正直、一度ギアを落としてしまうと、もう一度ギアを上げるのは、けっこう難しいので、ここに書いて自分に宣言してみる私なのです。
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