話しかけないといけない販売員VS話しかけられたくない購入者
仁義なき戦いが、いまここに。
皆さんは買い物をしているとき、話しかけられても別に平気派ですか?話しかけられたくない派ですか?
私は大学時代2年間接客業に従事し、そのまま小売業界に就職しました。店長業を経て現在、指導や研修を行う立場になりました。
最近は業務の中で、販売員向けの接客ガイドを作成しています。
今回作成中のテーマは「お客様へのお声掛け」
来てしまった、、このテーマが、、
正直なところ私が、接客業に携わるなかで一番頭を悩ませているところです。
情報収集のためネット上で接客について検索すると、案の定多くの方が「話しかけられたくない」という思いを抱えていました。私の友人の口からもちらほらと上がる話ではありました。
普段話しかけられることが苦ではない方は話題にすら上げないだろうと考えると、おそらくこれは半々くらいの割合なのではないでしょうか。
話しかけられたくないという心理の過程を省いて結論から申し上げれば、「購入へのプレッシャーをかけられたくない」のだと考えます。
しかも、このプレッシャーを感じてしまう人はたぶん大概、人が好い。
人が好いからこそ、「なにかお探しですか?」という言葉の中に、販売員の心理や境遇(ノルマや生活)を想像してプレッシャーを感じてしまっているように思います。
接客業に従事し教育する立場から、そんな悩める皆さんにお伝えしたい。
「なにかお探しですか?」は「ポイントカードお作りになりますか?」であると。
ドラッグストアやスーパーのレジでこう声をかけられませんか?
買い物中の皆さんに近づいてくる販売員は、そのくらいの軽い気持ちでお声掛けをしています。何も「この客になにがなんでも買わせなければ」なんて思ってません。
断言してしまうのは言い過ぎかもしれませんが、よほど接客業に力をみなぎらせてこれを生涯の仕事にしようと思っている販売員以外は、「お声がけが与えられた仕事」と思って、真面目に仕事をこなしているだけです。
「ポイントカードお作りになりますか?」とほとんど同じ流れ作業の中で、
「何かお探しですか?」と声をかけているんです。
ポイントカードを作るかどうかを聞かれて、「作らないといけないのかな…????作るべき?いやでも作りたくないこれ以上財布をかさばらせたくない…でもこの人にもノルマがあるかもしれないし…」と延々悩むような方がいらっしゃるでしょうか。
あるいは、外で知らない人間に声をかけられたくないんだ!!という方は、
それはもう…ネット通販かユニクロに…お買い物へ…私では…お力になれず…
ユニクロは基本的に質問されない限り販売員側から声掛けはしません。
そういったルールになっています。なので安心してお買い物をお楽しみください。
あとはZOZOTOWN。めちゃくちゃ良いです(※私調べ)
ここまで流れ作業とお話してしまいましたが、中にはかなり考え込んで声をかけている販売員さんもいらっしゃるでしょう。
やっぱり買い物しづらいって?
いえ、考え込んでしまうのは、話しかけられたくない派の皆さんに購入させたいがためにではありません。
私は派閥をあえて二つにしてしまいましたが、ここに、もう一つの派閥が存在することを皆さんはお忘れでしょうか。
話しかけられたい派の存在を
「話しかけられたい購入者」
話しかけられたくない派の皆さんからすれば、まさに異形な存在かもしれませんが、いるんです。間違いなく。販売員に話しかけられたい派の方が。
この「話しかけられたい」にも、さまざまな心理が存在します。
〇純粋に商品についての情報が知りたい
〇お話好きで販売員さんともお話がしたい
そして
〇話しかけられることによって自分が「お客様」であることを実感したい
〇「お客様」に声をかけてこないなんて接客業のマナー違反だと思う
この「お客様になりたい」方と、マナー違反クリエイターという、話しかけられたくない派の方たちと一生相まみえることのない存在が、話をややこしくしているのです。
通常、お褒めの言葉よりもクレームの方が企業には多く届きます。
良い対応を受けた場合はそれを当たり前として受容してしまうか、良い気持ちだったなまた来よう、と自身のなかで気持ちを綺麗に消化してしまうことがほとんどで、表面上に現れてこないためです。
しかし、「悪い扱いを受けた」という気持ちを、このストレス社会においては、上手いこと自身の中で消化することができない方が大半です。
悪は正さなければならない。
人間心理の常と言えるでしょう。
例えば、皆さんが買い物中、販売員の方が声をかけてこなかったとします。
それはネット上の叫びを見た販売員の方の気遣いだったかもしれません。
「あそこのお店、声掛けがなくてスムーズに買い物できて快適だな~」
この気持ち、お店や企業に伝えますか?
きっと寝る頃には気持ちが消化されて忘れてしまうか、
「快適だったから、伝えようかな!…いやでも、販売員さんが仕事してないみたいに取られたらどうしよう‥止めておこう」
なんて考えてはいませんか?
こうしてその快適さはお店や企業には伝わらず仕舞い。
そうです、お店や企業に伝わる大半の声は
「販売員が私に声をかけてこなかった!!!客を無視するのか!!!」
~こうして過剰なお声がけの時代は続くのであった~fin
展開される心理戦
世の中のどの仕事も同じかと思いますが、褒められることはほとんどありません。もちろん、日常の「ありがとう」は受け取るかもしれませんが、たった一度の「お怒り」の方がそれの何倍もの力を持っているのも事実。
さらに一件のクレームが、部署をまたいだ報告連絡、事実関係の洗い出し、書類提出添削へとつながっていく…本来不必要な仕事が増えていくのです。こんなの避けたいに決まっています!!!…経験者としてつい力が入ってしまいました。
「声をかけてこないことはお客様を無視している」
これが全く掃いて捨てて焼却してしまっても構わない主張であるならば、こちらもそこまで気にはしません。
けれど、このクレームには「声をかけて接客さえすれば売上に繋がる」という可能性が微微微微微かにでもあるのです。
接客トークが購買に繋がるのもまた事実。
ですので、どうしたってその声を無視することはできず、販売員は声がけを辞めることは叶わないのです。
日常のお買い物風景には、こんな心情が隠されているかもしれません。
話しかけられたくない購入者
「(あの服欲しいなって思ってた形に近いな…でも今月はもう予算ないし…見るだけ、見たいだけ、あああああ店員さんと目が合った)」
話しかけないといけない販売員
「いらっしゃいませー(あ、目をそらされた。話しかけられたくないのかな…でも、声かけないとまたクレームかもだし、店長にも言われてるし、一言だけでも…そう、一言だけ!)
‥ なにかお探しですか?」
こうして互いの快適さは失われていくのであった。完
もちろん、これがすべてとは限りません。
ですが普段、「なにかお探しですか?」に対し、「見てるだけで~」と返せば、あっさり身を引く販売員、いませんか?
その販売員さんたちには、話しかけられたくない心理、きっと伝わってます。
だから販売員の声がけに、「買わなくて申し訳ないな」なんて罪悪感を抱く必要はありません。
もし皆さんがマンションの見知らぬ住人に、「こんにちは」と声をかけられたら、同様に返すか会釈したりしませんか?
それと同じです。
「なにかお探しですか?(こんにちは)」「見てるだけです。(こんにちは)」
この通りなのです。
私たち販売員の教育側の人間は、あれやこれや理屈をつけて販売員にお声がけを推奨しますが、あくまで決定権は購入者にある、これは絶対です。
話しかけられたくない派の皆さんが、少しでも気持ちを楽にして、快適なお買い物ライフを過ごせますように。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?