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登場人物の作り方(戯曲/劇作家)

戯けちゃばなし(Radiotalk)第5回の投稿と関連した投稿です。


小劇場でフリーの演出家、劇作家をしているけちゃです。
今回の記事は、3月4日〜7日まで行っていた2/mashi公演、
「man-hole~a man’s mental sketch~」の裏話です。

1回目:着想・構想について


2回目となる今回は、登場人物について!

1 主人公について

登場人物の決め方は、もう本当に人それぞれだと思います。
相関図を書いたり、出演者を先に決めてアテガキをしたり等、劇作家の性格が出ますね。


今回の主人公”青年”は、演出家仲間の木内希さんに「不感症」と表現されました笑。言い得て妙。
元になった作品「王様の贈り物」の主人公でもある彼は、自分の妄想の世界で一人遊びを楽しんでいるキャラクターでした。
加えて、ちょっくらのメンバーに見てもらった時に、「普通な人が一人欲しい」と言われ、なら全体を通してずっと登場している主人公にしようと思ったところ、
”傍観者的立ち位置”
が色濃くなってしまったのかな?とも思います。
孤独が辛いくせに、それに気づいていない。
そこで、彼の課題は自分の寂しさに気がついていないところにしようと決めました。
煮え切らない、弱っちい部分もひっくるめて受け入れることが彼の成長かな?と、主人公の最初の姿と、最後の姿にギャップが出るにはどんな旅をしたらいいか考えながら他の登場人物達を配置していきます。

2 モデルになったもの

このman-holeには沢山の登場人物たちが出てきますが、私が人の名前を覚えるのが苦手なので誰一人として名前がありません笑
紛らわしい台本、この上なしです。

そんな中でも、主要な登場人物達にはモデルがいたりします。

というか、人物のキャラクターをはっきりさせるために、他の作品や身近な人から特徴を借りてくる、という感じですね。


○劇作家
私の母親がモデルです。すごく過保護で、心配性。正論がすぎる(自分の正しさがはっきりしている)人という特徴を拝借しました。悪い意味はないです。大好きやで、おかん!

○ドーナツ娘
以前、現場でご一緒した出演者様に、その方のお父様が書かれた本を頂きました。「失われたドーナツの穴を求めて」という本なのですが、ドーナツの”穴”についての研究や考察を真面目るする本で、なにそれ・・・面白い!とずっと興味を持っていたので、この方々を妄想で笑モデルにしました。

○兄弟
穴から連想するワードを出している過程で”水道管”というワードが出てきて、気に入っていたんですね。また、それまでの登場人物達が個別だったのでここらで二人組を作ろうと思っていたので、その際に何とセットにしようかと考えたところ、”家に設置するもの”というところから”電線”。そして配管工、配線工という二人組になりました。当初はそのまま登場人物名にしていたんですが、台本にこの二つが並ぶと目にうるさいと言われ、兄、弟になったのでした。

○博士
井伏鱒二「山椒魚」をご存知ですか?頭が大きくなりすぎて穴から出られなくなった山椒魚が、このキャラクターのモデルです。加えて、宮沢賢治「蛙のゴム靴」という作品に登場する蛙も影響しています。人間になりたいがためにゴム靴を手に入れる蛙。可愛いカエルに見染められて結婚までこぎ着けますが、その直前に仲間に意地悪をされて靴が壊れてしまいます。ゴム靴を履いていないカエルをお嫁さんは見分けられない・・・!?この二つが混ざって、当初は”蛙”という名前だったんですが、上演にあたって、このキャラクターが蛙だってことを伝える方法がなく、土壇場で博士(人間)になりました。笑

○暗闇の散歩者
寺山修司「レミング」に江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」をモデルにした”屋根裏の散歩者”という登場人物が出てきます。この役は、人物としての散歩者に加えて、声だけの散歩者もいて、その二つが会話をしているんです。江戸川乱歩の作品は恥ずかしながら読んだことないですし、寺山修司さんの作中に登場する散歩者のキャラクターも似ていませんが、自分という存在が二つに分裂しているところがモデルになっています。


個人的には、私自身がいろんな作品からモデルを持ってきて登場人物を作る方だと思います。

どんな登場人物でも、どこかに魅力や共感できる部分があればいいなと思いながら書いてますが、全て自分の言葉になってしまうところが悩みでもあり、課題でもあります。

まだまだ勉強せねば、ですね。



次回「スタッフワークについて」で裏話は最後になります。
気楽に、気長に、お茶でもしばき倒しながら戯けた話にお付き合いいただけたら嬉しいです。

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