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ネットワークビジネスにハマって一家離散した話① ~現実は小説より奇なり~
この物語はフィクションだったと願いたい作者の記憶をここに綴る2015年の物語である。
第一章 ~失踪~
車を止め、一息つく。
もう8時間の仕事を終え、車に飛び乗って2時間半が経過しようとしているのにまだ実家への道のりは半分も来ていない。
なぜこんなことになったのだろう…。
そう…。
今思えば前兆はあった…。
あの時に気付いていればきっとこんな事にはならなかっただろうに…。
だが私が気付いた時点ではおそらく手遅れだったのだろう…。
~3か月前~
『ねえちゃん。俺仕事辞めようと思う。もう機械作るのはこれから機械の仕事だと思うんだ。毎日ネジを電動ドライバーで締めるのはこりごりだ。毎日手が震えて仕事が終わっても…。職業病と言われればそれまでだけど…。』
弟は私の返答を待ちきれず続けて話す…。
『高校を出て、2年間も毎日同じことの繰り返し…。姉ちゃんみたいになにか資格を取るわけでもなくただ電動ドライバーでネジを締めるだけ。何年続けようが何にもならないよ?』
『いくら給料が高くてもやりがいなんてものはない。姉ちゃんみたいに仕事に誇りを持ちたいんだ。』
私が用意していた『石の上にも三年…』という言葉はどうも見透かされていたようだ…。
更にはこちらを持ち上げ反対意見を出しにくくする…。
わが弟ながら頭の回転が速い…。
まるで台本を読んでいるかのようだ…。
極度の人見知りのくせに家を飛び出て東京で仕事をしている人間とは思えないのだが…。
仕事を辞めることに反対されているのだろう…。
成人した子にイチイチ口を出す親もどうかと思う反面、こんな時でなければ弟と話す機会はないだろう…。
私は嫁いで東京と実家のちょうど中間地点に住んでいる…。
既に実家を離れた私にとやかく言う権利はないが、実家へ戻る事を反対され、3年ぶりに連絡を取ってきたのだろう…。
LINEのIDすら交換していなかった弟が連絡を取ってきた理由が段々とわかってきた…。
『実はもう新しい仕事の目星もついているんだ。友達と新しい仕事に行こうと思ってる。そこで上を目指そうと思っているんだ。』
東京で引っ込み思案の弟に友達が出来ているとは到底思えなかったが、もうかれこれ4年も会っていない…。
人は変わるのだろう…。友達が出来ている事に少しの感動を覚えた…。
だが一抹の不安は残る…。
弟は晴れて先月20歳を迎えたばかり…。
私にも経験がある…。
20歳の洗礼というやつだ…。
友達というのもすごく引っかかる…。
20歳の洗礼は大体それほど仲の良くなかった友達がファミレスでご飯を誘うのが決まり文句…。
一応確認は必要だろう…。
『友達は地元から仲の良かったヤツだよ?高校三年間ずっと一緒に居たヤツ。そいつとだったらどんな所ででもやっていけると思う。当面はそいつとルームシェアするんだ。仕事は光回線の営業をしようと思ってる。』
電話をしながらも、実家へLINEで確認…。どうやらその友達は本当に実在する人物らしい。
だが、わが弟は極度の人見知り…。
私や父が営業職で口が立つ…。その反対に弟は無口でとても営業職をやっていけるようなスキルは持ち合わせていない。
明らかに性格と職業がマッチしない…。おそらくこれが反対される一番の理由だろう。
私は20歳も超えてイチイチ言われるのもどうかと思うのでどちらかと言えば弟の味方かもしれない…。
仕事を辞めて、自分に向かない営業の仕事をして仕事にも向き不向きがある事を知ればいい…。
それも若い頃にするべき経験だと思う…。
だが、20歳の洗礼は教えておいて損はないだろう…。
弟の話を一通り聞いて、ネットワークビジネスについての注意点を話しておこうではないか…。
だが話の途中で遮る弟…
『もう既に誘われたけど、断ったよ?サプリとか水とか売るなら光契約とって上に上がって見せるから!!』
そこまで言うならもう何もいう事は無いだろうな…。
4年ぶりの会話は1時間で何事もなく終わったのである。
~2か月前~
実家から連絡が入る…。
実にそれも半年以上ぶりなのではないか?
意気揚々と電話に出る…。
偉く沈んだ声だが焦燥感は電話越しにも伝わってくる…。
『久しぶりだな…。』
『弟が昨日帰ってきたんだが、俺に絶対儲かる株の買い方を60万で買えとごっそり資料を置いて帰っていった。何のことか説明してくれ…。』
家族に営業をかけている弟…。
相当追い詰められているのは明白だ…。
この日から弟の携帯は料金未納により音信不通となる…。
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