ネットワークビジネスにハマって一家離散した話② ~現実は小説より奇なり~
この物語はフィクションだったと願いたい作者の記憶をここに綴る2015年の物語である。
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第二章 捜索
実家を訪れて親を勧誘した弟は次の日から音信不通になった。
時代遅れの金融屋である親にネットワークビジネスの説明は骨が折れた…。
3日がかりで結局『株』というものと、それをネットで買う。
上がる株を買い続けられるというシステムが入っているUSBを60万で売って歩いている。
弟からその商品を買ったやつがまたその商品を売るとお金が弟に入るという事をなんとなく理解させた。
本当になんとなくしかわかっていない頭の悪さに我が親ながら時代に取り残されているなとしみじみ感じる瞬間だ。
弟の携帯電話は料金未納で止まっているアナウンス…。
仕事柄時折聞くことがあるアナウンスだが弟の携帯番号から流れるのはまた一段と悲しみが深い…。
親に情報商材を売りに来た時点でもう切羽詰まっているのは間違いない…。
こういったマルチまがいのMLMは大体切れてもいいさして仲良くない友人や知り合い、ネットでひっかけた赤の他人から始める…。
大事な友達や、まして一番知られたくない親に営業をかける時点でもう相当切羽詰まっている…。
契約の時に保証人となった弟が住んでいるハズの東京へ行く両親…。
中間地点である私の所には寄らないし、結婚の報告以来一度も来ていない…。
そんな両親と東京で待ち合わせをする。
私も大都会東京は数回しか行ったことのない場所…。
まして、観光スポットや観光地ならまだしも住宅街になど行ったことが一度もない。
両親は田舎から車で来ると言い張る…。
私は電車…。
集合場所は駅前だが、乗ってきた車はどうするのだろう…。
弟が住んでいるハズの場所にもういないのは目に見えているが、直接確かめなければ気が済まないと言い張る父。
仕方がないので付き合う事にする…。
久しぶりの大都会を抜け、なぜこんな住宅地に居るのだろう…。
何年かぶりに見た父は老け込んでいるな…。
母はなぜか来ていない…。
『なんでかわからないが、家にいると言って聴かないから置いてきた。』
両親の不仲は昔からだから驚きはしない…。
仕方ないので、弟が住んでいるハズのアパートを探す…。
私の予想はもぬけの殻で、管理会社に電話をして開けてもらえるのだろうか…。
とりあえず親から送られた契約書のデータ画像を見て、不動産会社の番号を調べる…。
調べながら数分歩くと目的地のアパートが見つかる…。
かなりの好立地だな…。
家賃7万円でこれなら割安なのではないか?
素直に思った…。
弟が借りているハズである部屋の前に立つ…。
やはりというか、ポストには督促状と思われるDMが大量に刺さっている。
こんなところにはもういないだろう…。
だが、中に人がいる気配がする…。
声を聴く限り弟ではない…。
だが間違いなく人がいるのは間違いない…。
大声でドアをたたきながら弟の両親と姉であることを中の住人に伝える。
しばらくすると怪訝な顔なのか不審な顔なのかはわからないがドアチェーンをしたままドアが開く…。
~第三者~
金髪長髪で、端正な顔立ち…。
失礼だがとても社会保険に加入するような仕事をしているような風貌ではない…。
無職か夜職だと決めつけたくなってしまう見た目である…。
何者かをできるだけ丁寧に話を聞くようにする…。
『弟君の友達で一緒に住んでいます。』
と深くは語らないが、仕事を聞くと口ごもる…。
仕事をしているとは言うものの、ハッキリと答えられない…。
夜職でも飲食店だと言うだろう…。
金髪が伸び始めプリンになっているのを見るに半年くらいは染めていないだろう…。
恐らくマルチ関係の仲間化なんかなんだろうなあ…。
冷静に考えるが、隣で今にも殴りかかりそうな親の方が心配だ…。
とりあえず余計な詮索はせず、アパートの中に入る事を最優先に穏便に話を勧めることに注力する…。
弟が失踪中であり、携帯未納であろうこと…。
管理会社を呼んでアパートの鍵を開けようと思っていたこと。
手がかりが見つからなかった場合、捜索願や警察の介入を考えていたことを伝える。
警察という言葉にたじろがないわけがない…。
誰かと電話しているのだろうか…?
一旦部屋に戻ったどこのだれかわからない自称弟の友達は誰かに電話をしているのかコソコソ話し声が聞こえる…。
しばらくして、ドアチェーンを外し中に招き入れる。
ココは弟が契約しているアパートのはずだが…。
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