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【映画】人魚の歌声がもたらすのは、呪いか、それとも愛か。『マーメイド・イン・パリ』

人種問題を巡って何かと話題になっている実写版リトルマーメイド。
公開が間もなくに迫っていますね。セバスチャンがリアルなカニすぎるのには驚きました。
そして人魚といえばアリエル、というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。ディズニー版ではハッピーエンドでしたが、アンデルセンの原作では最後に泡となって消えてしまうという、あまりに悲しい結末を迎えるアリエル。

今日の映画は、聞いた人間の心臓を破裂させる呪いの歌声を持った人魚と、
恋心を忘れてしまった男のラブストーリーです。
フランス映画らしい美しい映像と静かな展開。一押しの感動作です。

マーメイド・イン・パリ

「4コマあらすじ」

「作品みどころ」

人魚であるルラの歌声には呪いの力が込められていた。
それは、ルラの歌を聴いた人間は全員恋に落ち、心臓が張り裂けて絶命してしまうという、恐ろしいものだった。
実際ガスパールが倒れていたルラを病院に運び込んだ際、処置を行おうとした医師が呪われて死んでしまった。
しかしガスパールはいくら彼女の歌声を耳にしても、死ぬ素振りを全く見せなかったのだ。それは彼が恋を忘れたからだ。
かつては何人もの女性と恋愛をしていたガスパールだったが、恋に破れる経験を繰り返すうちに心が壊れてしまい、恋愛感情そのものを失ってしまった。
だからルラの歌声を聞いても、彼女に恋することはなく、心臓が張り裂ける事も避けられていたのだ。
しかしある時からガスパールに異変が起き始める。今まで平気だったのに、突然心臓に強烈な痛みが生じ始める。
怪我をしてセーヌ川に打ち上げられていたルラを治療する過程で、彼女の素直さや愛らしさに触れ、失っていた恋心を取り戻していったようだ。
ルラもガスパールの事を愛し始めていたのに、このまま一緒にいては死んでしまう。
ルラを海に還すしか方法は無いのだが、一度感じた彼女への愛情を手放すことに、ガスパールは戸惑ってしまうのだった。

ルラはガスパールと出会ってから、初めて人間の世界を体験する。
ガスパールの父が経営するバーに2人で行くこととなり、隣人女性の助けを借りてドレスアップするルラ。人魚として生きていれば絶対に着る事の無かった服装で、髪型もばっちり決めていざバーへ。
海の底とは対照的に、明るい世界に感動が隠し切れない様子のルラ。
食事の作法なども全く知らないので、飾りとして差し出されたハイビスカスの花をむしゃむしゃと食べたり、度数の高いカクテルを一気飲みして周囲を驚かせたりする。
ガスパールと2人で作曲した音楽をレコードに収録しており、それを店内で流しながらダンスするシーンなんかは、ルラの美しさが存分に発揮されていた。

そもそもなぜ、ルラの歌声に恐ろしい魔力が込められているのか、という疑問が出てくるだろう。
それは彼女の過去に起因する。実はルラの母親は、人間によって殺害されていたのだ。それがルラの復讐心に火を付け、人間を憎む気持ちが呪いとなって表れたのだと思われる。
古くから西洋に伝わるセイレーンの伝説でも、人魚が美しい歌声で船乗りたちを誘惑し、海の底へ沈めると言い伝えられている。
そして本作では、最初に呪いの犠牲者となった男性医師の恋人が、ルラに復讐心を抱くようになる。現場に残ったルラの体液を化学分析し、正体を突き止めるなど、その執念は恐ろしく深い。
死亡した男性医師との子どもがお腹の中に出来ていた彼女は、恋人を殺したルラに激しい怒りを燃やすのだが、考えてみれば気の毒な立場である。
男性医師は何も悪くないのに、ガスパールが人魚を拾ってきたばかりに
理不尽に命を奪われてしまったのだから。
物語はガスパールとルラの間に芽生える恋心と、この女性の復讐劇の2つが並行して進められる。


「コメント」
人間と人魚の恋、という構図は昔から扱われており、珍しくありません。
しかしこの映画は、他とは一味違います。
まず人魚側が恐ろしい呪いを持っているという点。歌声を聴いただけで
死ぬなんて、とんでもなく理不尽ではないでしょうか。設定が違えばホラー映画の化け物です。
そして恋心を忘れたがゆえに、その呪いが効かない主人公。
「私に恋をしないの?」と聞かれたガスパールはこう答えます。
「君には家を燃やされたし、そもそもタイプじゃないから恋はしない」と。
※ルラの不手際でガスパールの自宅が炎上しました
しかし彼の心情は徐々に変化してゆき、ルラへの愛情が芽生え始めるのですが、それは彼にとって死を意味するのです。
好きになりたいのに、なれない。そんな心苦しさを感じるシチュエーションも魅力の一つ。
そしてなんといっても、クライマックスの映像の美しさ。
魚たちの泳ぐ深夜のプール。水中でのキスシーン。
車の中で、一つのピアニカを一緒に吹く2人。
やはり記憶に残る場面がある、というだけで映画の質がぐッと向上しますね。
その場面はぜひ実際に鑑賞してみて下さい。おすすめの一作です!











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