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鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記

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オリジナル小説「鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記」をまとめました。 1940年。第二次世界大戦下のヨーロッパ・ノルマンディーを舞台にした歴史アクションファンタジーです。
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#ファンタジー

鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(1)

序章 鮮血の天使 その日を、少年は海の上で迎えた。   「ねぇ、気付いてた? 今日はあなた…

コダーマ
1年前
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鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(3)

 ワルシャワにいた頃から隣り合わせにいつもあった感覚──死への恐怖がジワリ。十一歳の少年…

コダーマ
1年前
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鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(6)

鋼鉄の乙女  長い金色の睫毛が震え、瞼がゆっくりと開かれる。  濃い紫の眼は焦点が定まら…

コダーマ
1年前

鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(7)

「助けたのはおれたちじゃねぇよ。アミさんが偽装船から血まみれのおまえを連れて帰ってきたん…

コダーマ
1年前
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鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(8)

「ああ、ごめん」  抱きしめたラドムの身体がビクリと硬直したことに気付いたのだろう。  手…

コダーマ
1年前
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鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(9)

 眼前に聳える荘厳な要塞に圧倒され、ラドムは暫し言葉を失った。   「こ、ここは……?」 …

コダーマ
1年前

鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(10)

 ここはモン・サン=ミシェル島の裏手に当たる位置であった。  島の表側には賑やかな参道(リュ・グランテ)が伸び、修道院へと登る細い通路が造られている。  修道院を中心とした狭い島は、周囲をぐるりと囲むように石造りの道路が設えられてあり、今アミがきらきらした瞳を向けているのは幅の狭い通路の向こう側であった。  彼女があまりに嬉しそうにそちらを見つめるので、ラドムも戸惑ったように眼を凝らす。    彼女の視線の先、石で造られた民家の間を一人の人物がこちらに向かって駆けて来ていた。

鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(11)

 唸るような声とともに、細かく頷いてみせるロム。  照れているのだろうか。    これを巻…

コダーマ
1年前

鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(13)

犠牲者たち  惨劇の記憶。    潮と混ざった血の匂い。  それは噎せ返るような生々しさで…

コダーマ
1年前
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鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(15)

「頼んでいたものは出来たのか」    低く、どこか凄みのあるその声に少年は一瞬、身を強張ら…

コダーマ
1年前
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鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(16)

「つまり、わたしには色々用事がある。そういうことだ」    アミの長い話が終わったのは、今…

コダーマ
1年前
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鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(17)

「ここで待っているように言っていたのですがね。あの男はいつも時間に対していいかげんで困り…

コダーマ
1年前
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鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(18)

 武器商人の表情が僅かに沈んだ。  沈黙が数秒続く。   「あ、あの……」    出て行き辛…

コダーマ
1年前
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鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記(20)

 銃声。たった三発。  それは威嚇の行動だ。  空に向けての発砲は鳥達を慌てさせたに過ぎない。    我に返ったラドムは傍らの少女を仰ぎ見た。  アミとシュタイヤーは男の銃を睨んだままぴくりとも動かない。   「何やってんのさ」    耳に障る嫌な声。  《帝国の狼》の背後から背の高い若い男が一歩、足を踏み出した。  青白い額、脱色した髪。  武器商人を睨む双眸は真っ赤に充血している。   「お前は……!」    銃声と同じくらいの……いや、それ以上の衝撃をラドムの悲鳴は物語