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伝統芸能のすごみが詰まった中村座。

ずっと続く余韻がとても心地よかったので感想を書いてみる。

『平成中村座』をみにいった。
場所は浅草寺境内の仮設劇場。

雷門を通り抜けて、出店がずらっと並ぶ観光客でにぎわう参道を通りながらわくわく気分が高まる。

歌舞伎座とは違ってこういうこじんまりした場所で見るのは初めてだった。


構成は3部になっていて、
1部が「実盛物語」、2部が「近江のお兼」、3部が「狐狸狐狸ばなし」。歌舞伎初心者でも十分楽しめる内容だった。

歌舞伎は当たり前だけど、昔のことばを使っている。
「〜なり」「〜かな」など、イントネーションも独特だ。単語・単語では理解できるけど話の内容を全ては理解しきれない。
でも、そのことばに込められた心の繊細な動きが、些細な動作とイントネーションと重なり伝わってくるような気がしてとても興味深かった。
特に勘九郎さんが演じていた実盛のことばがとても良かった。さすがの演技力と貫禄で、初心者の私でも悲しみ・喜びの感情が分かりやすく表現されていた。

これって、回を重ねて分かるようになるととても面白いんだと思う。
ことばは、はっきり言わないで、周りを削り浮き彫りにしていくことでことばで伝える以上のパワーをもつことがある。それが、この伝統芸能に詰まっているのではないか。日本人独特の「含み」をもたせる文化の神髄のかけらをひろったような気がしてとても嬉しかった。

また、世代を超えて受け継いでいく『伝統』の重みとすごみも感じた。
中村家は勘三郎さんが亡くなって、今は勘九郎さん、七之助さんが継いでいる。
そして、勘九郎さんの息子、勘太郎くん、長三郎くんと続いていく。
長三郎くんは1部の「実盛物語」でずっと舞台に出っぱなし。
セリフもたっぷりある。実にまだ5歳。

生まれたときから使命が決まっていて、その使命は5歳の子どもにとってはきっととても大きい。あんな満員の客で埋まった大舞台で、プロとしてやっていかなければいけない重圧にたえてセリフと踊りをがんばっている5歳の健気な姿は、最近怠け気味の私の心を強く打ち砕いてくれた。
私もそうだったけど、「将来何がしたいかわからない・・」と模索している人が多い中、しっかり歌舞伎の道で腰を据えて生きていくという覚悟を感じられた佇まいはぜひ一度みてほしいと思った。

勘三郎さんも会場のいたるところに出現していて、中村家の愛に溢れた演出を感じられた。

同じ演目を何百年も繰り返し繰り返しやり続ける。
演ずる人が変わっても、起こった歴史は変わらない。それを何度もなぞるということ。

伝統芸能って奥深い。
見たあとも「中村座、よかったなぁ」という余韻が長く続いている。

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