インタビューは、大変だ。
インタビューは、大変だ。
私のやり方の場合、まずはうつわに出会うことからはじまる。
実際に使ってみていいなと思ったらアポをとる。日程が決まったら事前準備をして本番に臨む。たいてい話が盛り上がって、1-2時間ではおさまらないボリュームになる。そこから汗汗しながら文章にする。無事に校正が終わるまでは、ずっと気が気じゃない。アップしてからも読んでもらえるのか、感想が届くかいつもドキドキだし、陶芸家さんに報告するまでがインタビューだと思っている。
たぶん、インタビューをしなくてもお店はできる。たぶん。
経歴や想いを聞いて、数行でまとめることのほうが簡単だ。早いし、効率的だし、なぜこんなやり方でやっているのだろうとパソコンに向かいながらたまに思う。だって毎回けっこうな時間と神経を使うのだから(汗)
でもね、最近すごくうれしい手紙が届いたんです。
送り主は、先日インタビューしたガラス作家の安土忠久さん。
ここには便箋4枚にわたってびっしりと安土さんの言葉が書かれていた。
安土さんの記事の反響はとても大きくて、色んな人から感想が届いた。しかし安土さんはネットを見ないしメールもしない人だから、いただいた感想はすべて印刷して送った。お店でのエピソードも手書きの文字でつけ加えた。
そうしたら手紙には、こんなことが書いてあった。
これにはね、びっくりした。一人ひとりの言葉が、ちゃんと安土さんに届いた。しかも、「安堵」となった。
続けてこんなことが書いてあった。
先日奥さまと電話で話したとき、「あれからね、安土とても元気になったんですよ。前向きになったというか。」と言っていた。それを聞いて心からうれしくなった。そしてこの手紙を読んで、安土さんの繊細な心に触れたようで泣いた。
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先日、お世話になった陶芸家さんが亡くなった。
私が東京に住んでいたころに通っていた陶芸教室の先生だ。
彼女の名前は川松弘美さんといって、真っ白な磁器のうつわに繊細な絵付けをほどこす陶芸家さんで、はじめて会ったのは私がよく通っていたうつわ屋さんだった。個展で彼女のうつわをはじめて見たとき、こんなにびっしりと絵を描く人もいるのかとただただ驚いた。
そうしてお茶をしながら川松さんとおしゃべりしていたら、「あなた、私の陶芸教室通えば?」と言われた。一瞬えっとなったけれど、なにか習い事をはじめてみたかったし、陶芸のことも知りたかった。勢いでその場で「やります!」と言ってしまった。
それから陶芸教室には1年ほど通った。
私がやったのは、土をこねて、成形するところまで。
あとは先生が、釉薬がけや焼きをやってくれる。
しかしそれが、なかなかうまくいかない。頭では完璧なイメージができあがっているのに触ってかたちにしようとするとどんどんかけ離れていく。そのたびに先生は魔法使いのようにかたちを整えてくれた。プロってすごいなと思う瞬間がたくさんあった。
インタビューもさせてもらった。そこで初めて先生ががんを患っていることを知った。そのときは話を聞きながらどういうリアクションをしたらいいのかわからなくて、少しおどおどしながら文章にした。アップしたときも怯えていたような記憶がある。
先生が亡くなってから数ヶ月後、旦那さんから冊子が届いた。彼女の人生を旦那さんが文章や写真でまとめたものだった。そこには私の記事も紹介してあって、こんなことが書かれていた。
インタビューの最後でも言われているけれど、先生はずっと私に「早くいい人見つけて結婚しなさい」と言い続けた。そして私は奈良へいって、先生の願いが現実となった。結婚後、すぐにラインで報告したら「泣いた!落ち着いたら返事する」とだけ連絡がきて、それっきりになった。
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インタビューは、大変だ。
はじめから終わりまでドキドキしっぱなしで心臓に悪い。たまに髪の毛抜けるんじゃないかと思うくらいのプレッシャーを感じることもある。
でもやっぱり、言葉の力は大きいなと感じている。
大きなきっかけをつくってくれているなぁと感じる瞬間がたくさんある。さらにそこから広がってつながりゆくものは果てしない。思いがけないところに導いてくれることもある。言葉は、肉体が無くなっても、生き続けるものであると思う。
だから私は、インタビューを書き続ける。お店をやっていてもそうでなくても、やっぱり、書き続けたいと思うのだ。
うつわと暮らしのお店「草々」
住所:〒630-0101 奈良県生駒市高山町7782-3
営業日:木・金・土 11:00-16:00
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