【短編実体験】カツアゲの恐怖
あれは中学2年生のことだ。
友達5人で最寄りの駅に遊びに行った。
ボーリングしてゲームセンターで遊んで、いつの間にか夕方に。
そろそろ帰ろうかとなり、駐輪所まで歩いていく。前に友人2人、ちょっと距離がありながら私を含めた3人という構図。
すると前の友人2人が不良高校生に絡まれた。相手は3人。
こちらに武闘派はいない。
私は学校の成績は良かった。大事なことなのでもう一度言うが、成績は良かったのだがスポーツはからきし。マジの喧嘩経験なんてないシティボーイだ。
不安な気持ちで成り行きを見守っていると、その絡まれた友人たちがどこかに連れてかれた。不良の一人が向かってくる。
(これ、あかんやつやん…)
私に戦慄が走る。
不良が言う。「お前らも来てもらうから」
(行ったらボコられる!)
「ちょっとそれは、嫌です…」
なんとか数分粘る。誰か助けてくれないかと周りを見るも、大人たちは素通り。ヒーローは現れない。
業を煮やした不良は「ついてこないなら、先に行ってるお前らの友達をボコるから」と脅してきた。くそ、人質にされてる。
渋々ながら要求を飲む。
連れてかれたのは駅ビルの屋上だった。
なんとそこには不良が30人くらい待ち構えてた!
気が遠くなる私。
足は小鹿のようにガクブル。相手はオオカミの群れなのだ。まさに数の暴力。ヤムチャとフリーザが戦うような絶望感。
変態のドMならば興奮でハアハア言いそうだが、こちらは恐怖でハアハア言ってる。逃げられる状況じゃない。
「カネ出せ」
なんて直球な要求なんだろう。ここから帰れるなら、喜んで出しますよ!
一人ずつ財布を渡し、カネを抜き取られていく。
私の番だ。黙って財布を渡す。
財布を見た不良が凍り付いた。
遊びでカネを使い果たした私の財布には50円しか入っていなかった。
「……。お前はいいや」
慈悲の心あったんかい、ワレ。
不良に情けをかけられるなんて、という気持ちと50円しか持ってない恥ずかしさが私を襲う。「く、殺せ」と言いたくなる。
ちなみに友人の一人はお金持ちなのか、5,000円カツアゲされてた。
子どもながらに格差を思い知った。
ボコられることなく私たちは解放され、みんな無言で家路に向かう。
なんだか夕日がいつもより目に染みた。
終わり
宇宙旅行が夢の一つなので、サポート代は将来の宇宙旅行用に積み立てます。それを記事にするのも面白そうですねー。