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遊郭で高人さんを見つけました。

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#BL

遊郭で高人さんを見つけました。--その後

「高人さん、もう大丈夫ですよ?」 昨晩の逃走劇の後、医者からはもう大丈夫だと言われて、俺と高人さんはやっと自宅に戻ることができた。 けれど高人さんは心配でたまらないらしい。 ずっと俺の隣から離れない。 「大丈夫なわけあるか!心臓が止まってたんだぞ!」 ウルウルと涙を溜める顔が可愛すぎる。 しかしこれだと何も出来ない。 「とにかく、もう布団いけ!身体拭いてやるから。着替えるぞ。」 身体拭……ん?? 少しの間思考が止まる。 高人さんがお兄さんになっている。 てことは、俺は

遊郭で高人さんを見つけました。28最終回[BL二次創作]

見世の外は夕暮れに染まり、ひぐらしが鳴いている。見世の外から自分の部屋を見上げた。 あの部屋から見る外の景色が好きだった。 春の夜に、見世の準備をサボって夜桜を眺めていたら、見ない顔の男がやってきた。目が合って手を振ったら真剣に見つめ返してきて、ドキリとしたのだ。あれがチュン太だったと気付いたのは後からだった。 景色を眺めていた窓辺は、いつしかチュン太の姿を探すための窓辺になっていた。 楽しかったな。本当に。幸せだった。 ふと人の気配がする。前方を見やると、1人の軍

遊郭で高人さんを見つけました。27[BL二次創作]

高人さんが、他の男に身請けされるという話が入ってきた。昨日までは無かった話。ならば、昨晩何かが起こったという事だろう。 朝1番でこんな話が出てくるなんて。 いつ?身請けが決まったのなら花房をいつ出てもおかしくない。情報が少な過ぎる。 「…くそっ」 「若様、お客様が。」 トントン、とドアをノックされ声をかけられる。 「どなたです?」 「綾木屋の旦那様です。」 「…通してください。」 しばらくして、ガチャリととびらの開く音がした。 ちらりと見ると綾木千広がヨタヨタと部屋にはい

遊郭で高人さんを見つけました。26 [BL二次創作]

へ?…理解が追いつかない。 「あの…もう一回、お願いしても?」 朝方に眠りにつき、日が登ってすぐに絹江さんに叩き起こされてしまった。猫っ毛がさらに寝癖でくしゃくしゃだ。 「だから、貴方の身請けが決まったわ…。」 頭を抱えてため息をつく。 「えっと…東谷さ…ま?」 …昨日の今日で?いやでも契約違反はしてないよな。 まさか、我慢できなくなって暴挙に出てる? いや、そんな事は…――。 「東谷様ではないわ。」 「え?では、だれが…。」 「昨晩のお客様よ。」 えっと…なんで…

遊郭で高人さんを見つけました。25[BL二次創作]

東谷邸で二晩身体を休めた俺は、花房屋に戻るだけの体力を回復させて無事に帰ってくる事ができた。 チュン太は花房屋に俺の状況を報告していたらしく、お咎めは一切なかった。 今日から仕事復帰だ。 今日はお国のお偉いさんが外国の要人を連れてくるとかで、遊郭地区はこの御一行に貸切にされている。 朝、いつものように外を眺めていると、東屋の荷馬車が入り口に着けられているのが見えた。 花房屋は、座敷での宴を担当するため沢山の食材が運び込まれいてるようだった。 「こりゃ厨房も大変だな。」

遊郭で高人さんを見つけました。24[BL二次創作だかいち]

真っ暗で何もないただの寝る為の穴ぐらだった。 引きっぱなしの布団も、澱んだ空気も、別に気にもならなかった。 そんな家に高人さんを連れてきた。朝起きて、高人さんが隣に眠っている姿を見て、俺に出来ることは何かないかなと考えた。初めて人の為に何かしたいと思った。 だから朝食を作った。 いつも1人分を作るのは億劫だったのに、2人分作るのはすごく楽しかった。 今もこうして、普段は憂鬱だった後片付けを楽しくこなせている。 何やらガタガタ、ガラガラと賑やかな音が聞こえてくるが、高人さ

遊郭で高人さんを見つけました。23 [BL二次創作だかいち]

朝起きたら、知らない天井だった。 「へ…?」 ブカブカの紺の浴衣、下着は付けてないけど、身体は綺麗で…起き上がり近くの姿見を見ると、赤い跡があちこちに咲いている。抱かれ…たのか? 「……えっと…」 よくよく思い出してみる。 たしか、オッサンの酒の相手して…、んでオッサンの息子が来て…なんか飲まされて…から…? 「…オッサンの屋敷…?いやでも…足枷無いし…」 ひょいと足首を見ても、痣があるだけだ。 その後の記憶は…。 「そう…だ、チュン太…」 …後の色々を思い出す。助

遊郭で高人さんを見つけました。22[BL二次創作だかいち]

あの屋敷から遊郭まではさして遠くは無いはずなのに、揺らさないように進むとなるとやはり時間が掛かる。 元競走馬だった春花は人を乗せるのも上手い。 乗馬ができない乗り手と分かれば、掴まってさえいれば知っている場所には連れて行ってくれる。 人の言葉も良く聞きわけてくれる。最悪、高人さんだけ乗せて、遊郭まで走れと言うつもりで連れて来た。 一緒に脱出できた事は喜ぶ所だろうが…。 あの状況で首謀者を殺せなかった。 高人さんを、攫い恥辱し薬まで盛った。俺が黙っていたとしても、花房屋は黙

遊郭で高人さんを見つけました。21[BLだかいち二次創作小説]

「やれやれ、やっとか。」 テーブルに肘をつき、大きくため息を吐く。 一升瓶を2本、空にした頃に旦那サマはようやく眠りに着いた。 俺は、酒と熱で汗ばんだ身体が気持ち悪くて長着と襦袢の襟を緩める。 「あっつ…。」 さて、どうしたもんか…。 「とりあえず、鍵もらうか。旦那さま〜ちょっと失礼しますねぇ」 ガサゴソと鍵の束を見つける。牢と表の鍵がついている。足枷の鍵だけが見当たらない。 「クソ…。千早、もういいぞ。」 「高人?…だ、大丈夫?」 「ああ、朝まで起きねーだろ。たらふ

遊郭で高人さんを見つけました。20

雨が止み太陽が顔を出せば当然気温も上がっていく。夏の地下牢はジメジメとして不快感で吐き気がする。 地下牢を歩いて行き一つの牢の前で止まると、そこには先程連れて来られた男が手足を縛られて倒れていた。 足音にも気配にも無視を決め込んでいる男に何を言うでもなく牢を開けて入るや否や、寝転がる男の腹を思い切り蹴り上げ、踏みつけてやった。 「がっ…はっ…」 「…目は覚めたか?」 無表情のまま相手の顔を覗き込む。  死んだ目は、なにをやっても死んだままだ。生きている目を地に落とす瞬間