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高人さんが猫になる話。

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呪いで猫にされた西條さん。行方不明になってしまうも事務所は公表全部ず内密に捜査を開始。東谷自らも探し回るが見つからず…そんな時、東谷は1匹の猫と出会う。
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2023年2月の記事一覧

高人さんが猫になる話。5

春先の夜の肌寒さを感じながら、東谷は人通りの少ない裏の路地を歩いていた。華やかな表の道に比べて狭く閑散とした道のさらに隙間や物陰をちらりちらりと覗きこみながら進んでいく。 「居ないな…。くろねこさ〜ん…」 小さな声で呼びかけながら探してまわる。 昼間の場所も見てみたが、そこに黒猫は居なかった。外を歩く事に慣れていない様子だったので、遠くには行かないかと思ったのだが。どうやらこの場所はハズレだったらしい。私有地内に入られていたら探しようがないのだけど…。もう少しだけ探そう。

高人さんが猫になる話。4

結局、警察で1日が終わってしまった。 警察署を出て愛車に乗り込むと、東谷は深いため息を漏らした。 飲み会に出席した人達にも話を聞いたが、高人さんには別段変わった様子は無かったようだ。いつもより飲む量は少なく足取りもしっかりして帰路についていたとの事だった。 だったら…なぜあんな場所に、まるで身体だけが消えたように服や私物が落ちていたのか…。不自然だ。 拉致するなら服を脱がせる前に車に放り込むだろう。 殺すならそのまま刃物で刺せばいい。 その場で脱がせて、あのように服や持ち

高人さんが猫になる話。3

私物だけ?…ザワザワとする気持ちを必死に抑える。 東谷は目的地につくと、路地裏の暗がりを見まわした。少し奥に入った所でうつ伏せに倒れたような形で服が落ちている。 「これは…」 高人さんの物だ。 佐々木に連絡をすると、警察と共に行くから現場を保持して欲しいとの事だった。 フードを被り、簡単に変装をして壁にもたれかかると、ミントタブレットをザラリと口に流し込む。 ガリガリと噛み砕き飲み込むと途端に口寂しくなり、またザラザラと口に流し込む。 「高人さん…どこですか…」 顔

高人さんが猫になる話。2 [BL小説#だかいち#二次創作]

西條高人はゆっくりと目を覚ます。肌寒いような、風が肌を刺す。春も間近だがまだ肌寒いな。ムクリと身体を起こす。硬い地面、家じゃない? あれ…ここはどこだ…。 視界がやけに広い…見えにくいな…。なんだ…。 目の前には舞台のセットかのような、何もかもが大きな世界。膝丈までありそうなジュースの缶?巨大な石の壁…大きな音…鼻をつく様々な不愉快な臭い。 なんだこれ…。うるさい。変な臭い。 何があったんだっけ…?共演者とスタッフと飲みに行って、それから…あれ…? たしか、頭痛?すご

高人さんが猫になる話。1[BL小説#だかいち#二次創作]

頭が割れるように痛い。 西條高人はアスファルトに沈むように倒れ込んだ。 やけに、地面が近い…物が大きく見える。頭でも打ったのか…誰かに…殴られた?早く助けを呼ばないと…。 こぼれ落ちていく意識の中で、目にした自分の手は…まるで獣のようだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「高人さんが行方不明って、どういう事ですか?」 佐々木からの電話に出た東谷はスッと目を細める。身体中の血が沸騰するような強烈な焦りを感じる。 昨日はドラマの撮影の後、スタッフと飲み会だ