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今月出会えてよかった本 【2022年6月版】

先月からキャンペーンで無料体験をしているAmazon kindleunlimited にて、たくさんの電子書籍を読んでいます。

来月にの7月初めまでが無料期間なので、それまでできるだけ多く、そして何より面白い本を読んできた1か月になりました。

森見登美彦さんの『新釈 走れメロス 他四篇』をはじめに、青崎有吾さんの『体育館の殺人』浅倉秋成さんの『教室が、ひとりになるまで』西澤保彦さんの『七回死んだ男』などそうそうたるメンツを読みました。

それらのどれもが出会えてよかったと思える作品たちだったのですが、それでも一番を決めるとするのなら、さらに出会えてよかったと思える本がありました。

それらを抑えて今月出会えてよかったと思えた本は、大澤めぐみさんの『おにぎりスタッバー』です。

この作品は先の4作品とは違い、初めから読むつもりはありませんでした。

2か月という限られた無料期間の為、kindleunlimitedの対象作品から元々興味のあった本をリストアップしてそれらを時間の許す限り読みまくるという方針をとったのでこの本まで手が届くことは無いはずでした。

しかしあるとき、何となく対象作品を眺めていると、この『おにぎりスタッバー』が続巻の『ひとくいマンイーター』を含めてた2巻で完結になっている。そのどちらもが対象作品としてラインナップされていることに気づきます。

ミステリー中心に読んでいた私はラノベ成分も摂取したいと思い、この本を読んでみることにしたのでした。

それがどれだけの劇薬であるかも知らずに

衝撃的破壊の文章

この作品を一言で表すなら、”破壊”でしょう。

本編1ページ目から途切れることなく続く膨大な独白が押し寄せ、初見ではまず圧倒されます。

独白が終わるかと思いきや一人称の地の文で独白はずーっと続き、いつの間にか場面は展開し、主人公の視点のまま物語も舞台も登場人物も説明しようとするので思わずページをめくる手を止めてしまいます

さらには初めて出てくる設定が当たり前のように飛び出すので(視点が主人公の為既知のものとして受け入れざるを得ない)、読者は終始振り回されてしまうでしょう。

この、読者を置いてけぼりにしてしまいそうな文章は、でも読みやすいのです。どれほど情報が流し込まれてもインプットできるのは作者の腕のなせるワザなのか。

人間の思考を直接文章に書き起こしたような文体はあまりに衝撃的で、それでも何故か読みやすく引き付けるものがある。その矛盾をはらんだ破壊的文章に魅入られてしまいました。

小説の表現の自由さとそれを押し通してしまう文章力の強さに感銘を受けました。

エモさ全開……なのか?

あまりに類を見ない文章構成に面くらいそうになりますが、ストーリー自体はそれなりにシンプルなのだと思います。

なんだかワケありの主人公中萱梓が友達のサワメグや皆のあこがれ穂高センパイたちと学校生活を謳歌しながら様々な人たちも巻き込む青春劇。

―――と書けば普通っぽいのですが、いかんせん登場人物ほぼ全員がクセ及びとんでも設定持ちなのがこの作品の一筋縄ではいかないところです。それが相まっていつの間にか人が死んでたり、あっさり世界の危機を迎えていたりと骨格がシンプルでもとにかく読者を振り回してきます。

普通だったらいいシーンも主人公の独白で台無しになったり、緊張感のあるシーンもまたまた主人公のせいでスイーツな雰囲気になったりとついていけてるのか心配になりそうなほどです。

そのスピード感を味わうには実際に読んでみるしかないのですが、とにかくとんでもない読書体験を味わうことができました。

おわりに

『おにぎりスタッバー』は一度目はkindleunlimitedで読んだので電子書籍での読破となりました。

これまでの出会ってよかった本は初めから読むつもりだった本だったり、書店で偶然見かけた本だったりしていたのですが、この作品はインターネットの検索のみで見つけたものになります。

よくインターネットは電子の海と形容され、そこから自身の望むものを見つけるのは至難の業だと言われています。事実、電子書籍のストアページより実店舗の書店の方が書店員さんたちの努力もあって棚や品揃えに魅力があると言われていますし、私もそのように思っています。

だからこそ、電子の海の中から自分の好みの本を見つける喜びは何倍にも勝るのではないでしょうか。今回、『おにぎりスタッバー』と出会ったことでそのように感じましたし、今回はkindleunlimited対象作品に絞って検索をかけましたがもし全kindle作品の中から出会えてよかったと思える本を見つかられたのなら本を読む者として至上の喜びとなるのではないでしょうか。

いつかそのような出会いができると信じて、これからも実店舗だけでなく電子の書店でも本を探し続けたいと思います。

結局本は紙で手元に置きたいので、読了後に紙の本を買ってしまいましたけどね。本はやっぱり紙がいい。

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