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人事評価によって、自分のありたい姿を常にアップデートする

人事評価は、何のためにあるのかと言えば、働きがいを最大化するためのものだとわたしは考えています。こう言うと「昭和の人だね」と言われるのですが、わたしは「仕事の報酬は次の良い仕事」だと考えています。目の前のことに真剣に取り組んで、その成果が認められる。だから、より付加価値の高い仕事を期待されていくわけです。結果、どんどん良い仕事をしていこう、もっと役に立とうとなっていくわけです。

MBOには「S」が隠れている

そこで仕組みとして、目標管理というものが出てきます。目標を持って日々仕事をすることで働きがいが生まれ、成長していくという考えです。MBOと言われる制度ですね。何の略かというとManagment by Objectives and Self-controlとなります。そうSelf-control、自己管理がつくのです。これが忘れられていると目標管理は逆効果になります。自分で決めた目標じゃないとやらされ感が生まれるからです。そんな目標でマネジメントされるのですから、働きがいはどんどん失われていきます。

目標管理と人事評価のジレンマ

目標管理を導入すると、ほぼ必ず

・目標のさじ加減が難しい
・簡単な目標で済ませようとする
・目標を立てるけど、もはや状況が変わってしまっている
・そもそも目標を立てる意味のない仕事もある

…などなどの声が評価者から出てきます。これは、いざ評価しようとなった時に出てくる言葉です。

ここで欠如している考えは何だか分かりますか?
目標の良し悪しを決めるのは自分ということです。上に出てきたように本来は、Self-control、自己管理がつくのです。人それぞれ、強みも考え方も感じ方も価値観も異なります。また、仕事をしている場や相手、やっている内容が全く一緒であることはあり得ません。それでも互いの考えや働きぶりを認め合うから主体性を発揮できるのです。

求められるのは、あなたが何を持って貢献するか自分で決める、ということなのです。その前提に立たずに目標設定や評価をしたり、されたりするとやらされ感だけがどんどん助長されていくのです。

フィギュアスケートの芸術点で選手のやる気はそがれるか?

「でも、結局、誰かに評価されるわけで、納得できない人が多いのではないか」そんな声が出てきます。

そこでよく引き合いに出されるのがフィギュアスケートの芸術点です。ある一定の基準やレギュレーションがあるものの、最後は審査員の主観、つまり解釈次第ということです。これは人事評価もある意味同様です。

では、それで一流選手がやる気をなくすでしょうか。もちろん、微妙な判定はあるでしょう。でもそれも含めてフィギュアスケートだと納得しているのです。それに、微妙だとすれば、その時は議論されます。つまり、評価のすり合わせが行われます。

そして、選手側も自分の特徴を活かして、評価を得るためにはどのような演技をしたら良いか考えて練習を重ねます。つまり、どうやったら、相手が認めてくれる演技になるか、目標を定め努力するわけです。それが評価され、その結果を受けてまた創意工夫を重ねていくわけです。

良い仕事は何かについて組織と個人の価値観を重ね合わせる

良い評価を得られるということは、相手が認めているということです。ビジネスの場面に置き換えれば、お客さんが喜ぶ仕事ができているわけです。それを一人ひとり持ち味の違う個人が実現しようとしているのがあるべき姿です。したがって、主体的に目標を定めるためにあたり、組織と個人が、「わたしたちがお客様に喜んでいただくためには、何をすべきか」というすり合わせを行うことが必要となります。

目標管理では、「目標の連鎖」といって、下の図の左側の逆ピラミッドが描かれます。しかし、本来は、Managment by Objectives and Self-controlですから、右のように自己がないと機能しないのですね。こうした観点が失われてしまっているところに目標管理や人事評価が機能しない根本的な原因があります。

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自分が何によって貢献するかをアップデートする仕組みが人事評価である

ここへ来て、評価のあり方についての議論が増えています。コロナ禍におけるテレワークの問題もあるでしょう。実際のところは、コロナ以前から議論になっていました。

長期トレンドで見るとやはり、VUCAという言葉に象徴されるように、変化の時代にあるということだと思います。このときますます重要になってくるのは、個々の主体性です。上からの指示命令にだけ従っても、変化に対応できない時代です。結果、指示命令に従い続けても、必ずしも成果につながらず、従っているだけだから働きがいが阻害されていくのです。

実のところ、この手の議論は1960年代のX理論・Y理論に代表されるように古くからあるテーマです。内発的に動機づけられない限り、良いパフォーマンスは生まれません。一方で、ある種の我慢をして、外発的に動機づけられながら世の景気拡大と共に進んでこれた名残が残っているのだと思います。

コロナ禍で停滞感のある今こそ、主体的に働き、働きがいを高める人事評価の本来のあり方が問われているのではないでしょうか。

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