見出し画像

お客様から共感的に学び、未来のお客様に還元する

お客様が求めていることをどのように知るか、そんなことを考えています。きっかけは、ある会員制サービスで、お客様が離れていくという事象があったからです。十分にお客様のニーズに応えているだろうか、そもそもニーズを把握できているだろうかという問題提起がなされました。

そこで、アンケートをとる、お客様にヒアリングする、などのアイディアが出てきました。だけど、その手段には、どこか違和感を感じました。今までも、それはしてきているのではないか、と。むしろ、商品・サービスに改善点はないのかと感じたのです。それにお客様に聞くことは、お客様の時間をいただくということではないか…と、思うわけです。

安易にお客様に聞けば良いわけではない

よく言われることとして、「お客さんに自社製品について聞いても、安くしてほしいと言われるだけ」といった話があります。本当の困りごとはお客さんだって気づいていないので、聞いたからといってニーズを話してくれるわけではないのです。

何事も見えているのは、氷山の一角。その水面下を見ようとすることが大切なのだと思います。このときお客様の水面下を知ろうとするのがマーケティング活動。そして、自社の水面下を知ろうとする、あるいは大きくしようとするのがイノベーションの探求なのではないかと思います。

氷山の水面下にある顧客インサイト

わたしの中で、この「氷山の水面下」というのが最近のキーワードです。事業や組織、個人の能力、お客様のニーズや商品開発、さまざまな切り口において水面下を探る、あるいは育てていくことがわたしの仕事かもしれない、と感じ始めています。

そんな中、マーケティング寄りの話で、氷山の図を見たな…とKindleの積読を探っていたらこの本が出てきました。


この本は、顧客インサイト、まさに水面下に隠れたお客様の無意識の領域に目を向けようというものです。様々に示唆が得られる本ですが、ひとつだけポイントをあげるとすれば、商品・サービスに対するユーザーのニーズではなく、「人間を見に行く」という点です。この言葉は、わたしにとって良いヒントになりました。商品起点ではなく、お客様起点で考えようということです。商品はすでに目に見えている。それについていくら何を聞いても、インサイトは得られない。人間を見に行こう、という提案です。

そうしたお客様起点の例として本田宗一郎さんの話がでてきます。

本田技研工業創業者である本田宗一郎氏は、次のような趣旨のことを話しています。
研究所は人間の気持ちを研究するところであって、技術を研究するところではない。研究所の技術者が第一にすべきことは、お客様の心を研究し、お客様に喜んでもらう将来価値を見つけること。それが分かったら、手段である技術を使って、その将来価値を実現すればよい。
出典:「欲しい」の本質~人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方

まさしく、顧客起点の発想、本当のお客様第一であると思います。

共感的に寄り添い、お客様から学び、またそれを還元する

もちろん、アンケートやヒアリングを否定するつもりはありません。ただ、商品・サービスの良し悪しは、提供者側も分かるのではないでしょうか。知ろうとすべきは、お客様はどんなことを価値だと感じていて、どんなことを嫌だと感じるのかという情報です。もちろん集めるだけではいけません。

わたしは、「お客様から学ぶ」ということを大切にしています。これは、単にインプットを得るということではありません。お客様のお困りごとの本質は何か、葛藤を生んでいるのは何か、それを寄り添って知ろうとします。相手の立場で、積極的、能動的に想像してみるのです。いわゆる「共感」とはそのような行為のことだとわたしは考えています。その上で解決策を検討します。ただし、それは仮説にすぎません。お客様との実践を通じて検証していきます。この共感に基づいた仮説検証のサイクルを「お客様から学ぶ」と表現しています。

ここでやろうとしている仮説検証は、「人間」について学ぼうとする行為です。そのことによって、わたしの氷山が大きくなっていきます。目の前のお客様から共感的に学ぶことで、広く未来のお客様へ還元できる知恵を得ることができているのだと気づくことができました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?