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第134話 「彼は悪魔なんかじゃないの」

「あの詐欺師、アパートの階段で足を滑らせて骨折したらしいわね。きっと天罰ね」

横断歩道を行き交う人の群れを眺めながら、私は用意していた台詞を吐き出した。
時計は昼どきを指していて、シャツを腕まくりした会社員たちが、強い日差しに顔をしかめて歩いている。
少しの間、同意の言葉を待ったが、車内に響くのはクーラーの送風音だけだった。

「いい気味よね?」

今度は言葉と一緒に、助手席の早希に顔を向ける。
しかし、彼女はうつむいたまま何も答えなかった。視線を前方に戻すと、信号が青に変わったのでアクセルに体重を乗せる。

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2020〜2022年に投稿した意味怖を載せるマガジンです。

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